株式会社滋賀銀行様 製造業のノウハウを活用して金融機関の「営業・融資の業務改革(融資BPR)」と「"対話力"の強化による収益向上」を実現

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2016年度からの中期経営計画で「未来創造銀行 『The・ちぎん』」を目指すべき姿と掲げている滋賀銀行様では、2010年度~2012年度の長期経営計画「お客さまとの対話力強化による更なる共存共栄を目指して」の実現に向けて、ISIDグループと共に融資BPRを推進し、また、2013年度~2015年度の長期経営計画「お客さま・地域とともに未来へ歩む銀行」の実現に向けて、対話力強化プログラムに取り組んできました。

滋賀銀行様では、2010年の融資BPR開始当時までに、様々なBPRを行い成果をあげてきました。しかし、経済のグローバル化の進展、地域人口の伸び率減少、インターネットの日常化等の外部環境の変化から、さらなるBPRの必要性を感じていました。今回のBPRでは長期的に効果を持続させるために、金融業界以外の知見を導入することを決断され、融資業務のIT化に強いISIDと、製造業の業務改革で成果をあげているITID(以下 ITID)を変革のパートナーとして選定していただきました。

製造業と金融業では業務環境、業務の進め方や考え方等が異なるものの、「お客さまから受け取った情報を価値のある商品・サービスに変換する」という観点でとらえると、参考にできる部分が数多くあります。そこで、ITIDが持つ製造業向けの様々な業務改革手法を金融機関向けに応用し、BPRを推進しました。金融機関への製造業のノウハウ活用は初の試みであったものの、結果として人材育成や風土改革にまで踏み込むBPR活動に発展し、価値のある取り組みとなりました。

「より付加価値の高いサービス提供」に向けて以下の3点に取り組む

(1) お客さまとの対話を起点にした業務プロセスの再構築
(2) 融資・営業支援システムの刷新による新業務プロセスの定着と業務量の削減
(3) 研修とOJTを通じた対話力の高い人材の育成による、サービスの質向上

今回のプロジェクトの特徴は、お客さま中心のコンセプトを共有した上で、業務量の削減とサービスの質向上を一体として考え、業務スタイルの変革へと取り組んだところです。金融機関におけるこれまでの一般的な取り組みでは、業務量の削減とサービスの質向上には別々に取り組むことが多く、活動ごとのコンセプトが異なるために、業務に不整合が生じていました。今回はISIDグループの業務改革手法を活用しながら、方針策定からシステム導入、業務の運用定着と人材育成にまで一貫して取り組み、異なる目的の施策間で協調する方策を検討しながら活動を推進しました。

①-1 業務プロセスおよび組織の問題分析

ITIDが製造業で用いているDSM、RACIをはじめとした業務分析手法を金融機関向けに応用して、現行業務の問題を可視化しました。その結果、「情報の重複および連携不備」や「役割・責任の分散」といった問題が浮き彫りになりました。特に、問題構造図からは、問題の原因が滋賀銀行様の当初想定していた「業務設計」や「システム」だけでなく、「人材育成」や「業務統制」等も含めて複雑で多岐にわたっていることが明確になりました。そして、業務量が行員のキャパシティをオーバーしているために、付加価値の高いサービスを提供できていない様子が浮かびあがりました。並行して、問題の裏づけのために行った本部や営業店へのヒアリングでは、その場で議論を可視化しポイントを明確にするファシリテーションを通して、銀行内ではあぶりだせなかった本音を引き出し、従来の活動では見過ごされていた問題にまで踏み込むことが出来ました。

①-2 新業務プロセスの構築と「業務改革」支援

問題分析の結果を踏まえて、お客さま視点から「あるべき姿」とそこに至るためのステップを設定し、BPRの推進計画を立てました。また、お客さまとの対話を起点にして無駄を省いた業務の姿を「業務概要図」として1枚の紙で表現しています。
業務概要図では次の3つの業務、
① お客さまに付加価値の高いサービスを提供し、その結果を蓄積するコミュニケーション業務
② コミュニケーション業務で蓄積した情報を行内で活用するオペレーション業務
③ 全体を統合して管理するマネジメント業務
を定義しています。
滋賀銀行様では、個別業務の細かい業務フローや取り組み方を解説したマニュアル等が充実していましたが、業務の全体像を把握でき、活
指針になるような資料はこれまでありませんでした。そこで、製造業の品質保証体系図を金融機関向けに応用して「業務概要図」を整備し
です。目指す姿を関係者で共有できたことで、各活動はそれを目指して新プロセスを構築できるようになりました。
BPRを狙い通りに成功させるためには、再設計した業務プロセスとそれを支える業務システムを営業店に提供するだけでは十分ではありません。営業店で付加価値の高いサービスを提供できるように、全行員が新しい業務スタイルに対する理解を高めるための取り組みも必要になります。ITIDは、BPRが浸透し、効果が継続的に表れるように、本部に対しては部署横断のBPR推進チームの立ち上げや営業店サポート体制の構築、営業店に対しては業務分担の見直しや運用ルール改訂といった、業務スタイル変革の実現に必要な取り組みを企画し、実行を支援しました。

②お客さま起点の業務を定着させるシステムの構築

お客さま起点の業務へと変革するためには、これまでばらばらだった顧客情報を統合し、それを業務の必要な場面で利用しやすいように表示する必要がありました。それを支援するシステムには「業務概要図」で定義した3つの業務の利用シーンに応じて、機能を構造化してわかりやすく提供することが求められました。このため、新業務への理解が深く、システムユーザビリティに造詣の深いISIDの提案が採用されました。構築したシステムは、お客さま起点で再設計した業務の流れに沿って機能が構造化されているだけでなく、各業務に共通するお客さま情報も構造化して一元管理しています。融資業務を熟知したISIDが新たに開発した「BANK・R 4s コミュニケーション基盤」を活用することにより、これまで、営業支援やCRM支援、融資支援など、業務ごとに異なるシステムで重複管理していた情報を、「お客さま」という切り口で無駄なく一元的に入力し、いつでも閲覧できるようになったのです。このシステムを利用することで、営業担当者のお客さま対応や本部の意思決定を、的確かつ迅速に行うことが可能になりました。システム導入を機に、業務が大幅に効率化されたことで、営業担当者はお客さまとのコミュニケーション機会を増加させることができました。

図1:お客さま起点の業務を実現したシステム

③対話の質を高めるための人材育成

業務を効率化するだけでは、付加価値の高いサービスの提供にはつながりません。問題分析の結果、お客さまとの対話の質の向上が重要課題として認識されていました。そこで、ITIDが提供している研修コンテンツを活用して、人材力を底上げするための対話力強化プログラムを展開しました。
対話力強化プログラムは講師が営業店まで出向く「出前研修」で、支店長から若手行員まで全員で同じ内容の研修を受けるものです。これにより、お客さまとの対話の量・質を向上する方法を学ぶだけでなく、行員同士が相互理解を深めると共に、銀行内のコミュニケーション活性化に向けた共通言語を作ることができました。その結果、お客さまとのコミュニケーションと行内でのコミュニケーションが相乗的に活性化し、付加価値の高いサービスを提供する態勢を整えることができました。

本プロジェクトでは、従来のBPRで取り組んでいた ITシステム導入だけでなく、「IT以外の業務プロセス」・「組織」や「人」にまで取り組みを広げることで、BPRを成功に導きました。

図2:ITIDが提唱する企業競争力評価の枠組みと今回のBPRで取り組んだ範囲

業務スタイルの変革による業務量の削減と訪問の量・質の向上

・顧客起点の業務スタイルへの変革による訪問や対話の量・質の向上
 ⇒ ソリューション提供にかかる役務収益の増加
・システム統合による営業担当者の業務キャパオーバーの解消
 ⇒ 時間外労働の大幅減少

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