株式会社セブン銀行 技術集団グルコースとともにアプリの高度なリファクタリングを実現!技術支援編

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「Myセブン銀行アプリ」の改修に携わった、セブン銀行、DIS、グルコース、ISIDのメンバー

全国のセブン-イレブン店舗や百貨店などに、27,000台以上のATMを設置しているセブン銀行。近年はATMサービスを介さない、カードローンやポイント投資など、多種多様な金融サービスを提供しています。
これらの金融サービスを提供する上で欠かせないのが、お客様との窓口の役割を果たす「Myセブン銀行アプリ」です。このアプリを通じて、口座残高の確認やカードローンの返済・借り入れやポイント投資の申し込み、住所変更をはじめとする各種手続きなど様々なサービスが、このアプリで簡単に利用できます。
いまや“ATMと並ぶセブン銀行の顔”と言える、Myセブン銀行アプリ。その裏側を、提供機能はそのままに、より安定的に運用可能な仕組みに作り変えることを目指して始まったのが今回のリファクタリングプロジェクトでした。ISIDは、高い技術力を誇ることで知られるテクノロジーカンパニー、グルコースとともに、わずかに発生していた認証エラーの原因調査を行い、システムのリファクタリングを支援。約1年のサポートを経て、システムの品質向上や運用負荷の軽減に成功しています。詳しい経緯や効果について、携わったメンバーの皆さまにお話をお聞きしました。

グルコース社の協力により、認証エラーを改善

今回のプロジェクトは、セブン銀行からISIDに対して、「わずかな発生数ではあるものの、アプリにログインできないという致命的なエラーが発生しているので、一緒に調査してもらえないか」とご相談があったことでスタートしました。金融ソリューション部の木村智史氏は、「複雑なシステムを理解した上で速やかに原因を特定し、その対処を行うには、長年、ともにシステムの構築やアプリ開発を行ってきたISIDの力が必要だと思い相談させていただきました」と振り返ります。

「Myセブン銀行アプリでは、非常に多くのサービスを提供しているため、多くのコンポーネントを使用していることに加え、認証エラーの発生頻度が低いので、なかなか原因が特定できない状況でした。そこで、ISIDに相談して、徹底的に調査を行うことになりました。同時に、ISIDの調査手法や技術を学びたい、私たちもより成長したい、という思いもありました」(木村氏)

セブン銀行  金融ソリューション部 木村智史氏

木村氏からの相談を受けたISIDの宝達恵介、ISIDとともにセブン銀行の支援を行ってきた電通イノベーションスタジオ(以下、DIS)の曽我亘は、「長年タッグを組んできたセブン銀行の皆様の技術力の高さは私たちが一番わかっています。その技術力をもってしても解決できない問題は、アプリケーションに深い知見がある技術力の高いエンジニアをアサインしなければ解消できないと考えました」と言います。
そこで曽我が声を掛けたのが、情報処理推進機構(IPA)が行う、ソフトウェア開発支援・人材発掘プロジェクト「未踏ソフトウェア創造事業」においてスーパークリエーターに認定されたメンバーによって創業されたグルコース社でした。

「DISのエンジニアが前職で、グルコースと一緒に仕事をした経験があり、その縁で紹介されました。そのエンジニアは、グルコースの社長である安達氏の高い技術力と最新技術トレンドを活用したサービス開発能力について高く評価をしており、今回のような複雑な調査を任せるには、技術力の高さだけでなく、問題に対して真摯に向き合う姿勢を持っているグルコースが最適であると確信し、仕事を依頼しました。」(曽我)

電通イノベーションスタジオ(DIS) 曽我亘氏

コード全体のリファクタリングを実施

2022年の夏に、グルコースを中心とした調査業務が始まりました。グルコースは、Webサービスとスマートフォンアプリの開発を専門とする企業です。特にB2C向けのプロジェクトが得意で、アイデアの段階からリリースまで、デザインからインフラ設計に至るまで一貫してサポートしています。本プロジェクトでは、特にiOSアプリのチームに重点的に関わり、難しいバグの対応やリファクタリングの方針の議論から、実際のコーディングまで、幅広く対応しました。

調査を進める中で、現状のアプリのコードは複雑に入り組んでおり、処理が把握しづらいという点が問題になりました。「ログだけで処理の流れを掴むことが難しいため、継ぎ接ぎの多い箇所をリライトして処理の流れを整理したほうが良いのでは」「その結果、拡張性が高まりエラーの原因調査も行いやすくなり、アプリの安全性や持続性が高まるのでは」という話にまとまり、リファクタリングを行うことになりました。

リファクタリングを手掛けたグルコースの安達氏が意識したのが、「性能やセキュリティの向上のために最先端の技術や知見をフル活用してリファクタリングを行うこと」と「コードの書き方を統一し、とにかく綺麗にフォーマットを作ること」。また、セブン銀行のエンジニアが内製でしっかりと対応できるように、「やり方を見てもらうこと」「マインドセットを変えること」も心掛けました。当時を振り返り、安達氏は「プログラミングの世界で格言として知られている『来た時よりも美しく』(ボーイスカウトルール)ということと、『+1%を毎日少しずつ積み上げる』ということを大切にしていました」と話します。

「セブン銀行の皆さんは、通常業務を抱えながら、リファクタリングにも取り組まれました。我々外部の人間が入ってきて、あれこれといろいろ言うのはストレスにもなりかねないですから、あくまで日々の業務の中で、アプリをよくしていくということを意識していました。まずは僕らがコードを書いて、それを見てもらい、少しずつ進めていただいて……。コードを書いているところを録画してもらい、いつでも確認できるようにしたり、書き方や注意点などを資料化して共有するという取り組みも行いました。そうしているうちにどんどんよくなっていった。素晴らしい早さでやり方を吸収してくださり、毎日、+1%の積み上げができるようになって、目に見えてコードが改善されていきました」(安達氏)

グルコース 代表取締役社長 安達真氏

セブン銀行内部の負荷が高まったときは、安達氏をはじめとするグルコースメンバーが一部の作業を引き受けて作業を進めることもあったと言います。多くのユーザーが日常的に使う銀行アプリという性質上、コードの書き換えといった内部事情でサービスを止めるわけにはいきません。時には少しずつ、時には一気に。緩急を付けつつ柔軟に対応し、重要なリファクタリングを成功させました。

開発業務の効率改善にも着手し、約3,000時間のミーティング時間を削減!

セブン銀行の木村氏が、「印象に残った出来事」として挙げるのが、「開発の効率化」についての支援でした。リファクタリングに関する週次ミーティングで、開発以外の環境について話が及び、「開発時間の確保ができていない」「開発周辺の業務について時間がかかっている」という現状について議論したと言います。

「安達さんが掘り下げて質問をしてくださったおかげで、議論の結果、“ミーティングに時間がかかっている”ということがわかりました。そのあとは、“なぜミーティングに時間がかかっているのか”を整理して、削減する方法を考えてくださった。これがきっかけとなり、チーム全体でミーティングの改善に動くようになりまして、結果的に年間約3,000時間のミーティング時間を削減することができました。調査やリファクタリングだけでなく、業務改善につながるご提案をしてくださった。ここが、本当にありがたかったですね」(木村氏)

結果的に、開発の効率が大幅に上がり、「文句の付け所がないほど新しく高品質なコードでリファクタリングができた」「認証エラーが大幅に減少した」と木村氏。コードを書く、情報を提供する、技術に関するコーチングを行うといったことだけでなく、開発環境の見直しやマインドセットを行ったことで、セブン銀行の開発チームの自立や自走に寄与する支援を行うことができました。

安達氏とともにセブン銀行の支援を行ったISIDの宝達恵介は、「ここまで大規模なリファクタリングというのは、多大な負荷がかかるもの。それを厭わず、受け入れてくだったセブン銀行の懐の深さやチャレンジ精神がプロジェクトの成功につながった」と話します。

「Myセブン銀行アプリは、セブン銀行の皆さんの思いが詰まったアプリです。思いが強いと、立ち止まって周囲の意見を聞きつつ改善するという部分がついおろそかになりやすいと思うのですが、セブン銀行の皆さんからは『ユーザーや第三者の意見を聞いて、客観的な根拠に基づいて改善するのだ』『よりよくするのだ』という強い意志を感じました。このような意欲的な開発チームに関わることが出来て嬉しく思います」(宝達)

ISID 金融ソリューション事業部デジタルバンキングビジネス部 宝達恵介

プロジェクトを統括する紙中加代子氏によると、「今後も、アプリやモバイルデバイスを使ったサービスの強化は続けていく予定」とのこと。「ISIDは、なんでも本音で話せる、まさにパートナーのような存在です。他の銀行にはない独自のサービスを展開する私たちのフィールドというのは、ISIDやグルコースにとっても、きっと面白いものだと思っています。これからも一緒に、ユニークなサービスを作り続けていけると嬉しいですね」と続けます。

セブン銀行皆さんと、金融ソリューション部長紙中加代子氏(写真右)

インターネットバンキングの構築で取引を開始してから約20年。長きに渡って作り上げてきた信頼関係が、現在も継続し、そして新しい価値の創出につながっています。今後もISIDは、セブン銀行のアプリ開発とビジネス成長を支援してまいります。

株式会社セブン銀行 会社概要新しいウィンドウで開きます

社名
株式会社セブン銀行
本社
東京都千代田区丸の内1-6-1
設立
2001年
資本金
307億2千4百万円(2023年9月30日現在)
従業員数
589人(2023年9月30日現在)
事業内容
ATMプラットフォーム事業、金融サービス事業
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  • 記載情報は取材時(2022年10月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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