株式会社セブン銀行 Myセブン銀行アプリのデザインリニューアルとプロダクトマネジメントを支援! デザイン、プロダクトマネジメント編

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「Myセブン銀行アプリ」のリニューアルに携わった、セブン銀行、DIS、グルコース、ISIDのメンバー

セブン銀行とISIDの出会いは2013年。ATMの受入手数料を収益源とする独自のビジネスモデルで事業を展開するセブン銀行が新たなチャネルを強化するために再構築した、インターネットバンキングシステムを担当したのがISIDでした。以降、新サービスのスピーディーな市場投入を実現するためのシステム開発基盤の構築、両社の合弁会社による不正検知サービスの開発など、多くのプロジェクトで協働実績を重ねてきました。2021年には、アプリの開発手法に、アメリカのデザイン思考法を採り入れるための実験的なコーチングプロジェクトを実施。その結果、アプリ開発に対する考え方やアプローチ法を進化させました。
10年に渡る実績と、良好なパートナーシップが、今回、セブン銀行のメインアプリ「Myセブン銀行アプリ」のリニューアルプロジェクトに繋がりました。デザインの一新、UXの改善、新機能の追加、プロダクトマネジメントについての評価やアプリの評価手法の改善などを行い、リニューアルの前月と比較して、インターネットバンキングの初回設定数が1.88倍、カードローンの増額申し込み件数が1.5倍、口座に振り替える形でのカードローンの借入額が1.2倍と、大幅に増加しました。
今後も、セブン銀行とISIDは、システム構築だけに留まらない包括的なパートナーシップの下、ともに「セブン銀行らしいユニークな金融サービス」を追求していく構えです。

10年に渡るパートナーシップを背景に、「Myセブン銀行アプリ」のリニューアルへ!

全国のセブン-イレブンなどに2023年9月時点で、27,000台以上のATMを設置しており、年間の総利用件数は約8億5,000万件にのぼります。近年はコンビニだけでなく、駅や百貨店などスペースにコンパクトなATMを設置して、思い立ったときにいつでも気軽に利用できる環境を実現。おもにATMの手数料で収益を得るという独自のビジネスモデルを作り上げました。

しかし、時代が変わり、セブンイレブンの新規出店数(=ATMの主要設置場所)の伸びが鈍化。さらに世の中のキャッシュレス化が急速に進んだことで、「ATMの手数料収益だけに頼らない、新しいビジネスモデルが必要である」と考えるようになりました。

金融ソリューション部長の紙中加代子氏は「これまではあくまで口座にまつわるサービスを提供する補助的な存在だったアプリを、お客さまとの主要なコミュニケーションチャネルへ、“もっと身近で、もっと便利な、総合的金融サービスアプリに変えていこう”と考えました」と話します。

セブン銀行 金融ソリューション部長紙中加代子氏(写真右)と、セブン銀行の皆さん

今回のリニューアルについて、バンキング統括部の山下利花氏は「アプリのローンチから2年が経過し、お客様からの機能追加に関するご要望が溜まっている状態でした。そろそろ本腰を入れて機能を強化することと同時に、どうすれば顧客体験の良質なサイクルを作れるかということをしっかり考えた上で、UXに反映していきたいと思い、今回のリニューアルに臨みました」と振り返ります。

セブン銀行 バンキング統括部 山下利花氏

またデザインのリニューアルと並行して、デザインの刷新と同時にプロダクトマネジメントの強化にも取り組むことにしました。バンキング統括部の尾崎貴乃氏は、「これまでは、アプリを評価するためのより品質の高い改善につなげるための指標を持っていませんでした。アプリストアのレビューを見てお客様の要望を拾い上げていた状況で、これだけでは情報が不十分で、戦略的な機能強化には繋がりにくいなと感じていました。そこの部分を改善して、明確な評価指標を定め、今後はその指標に基づいて機能を改善していきたいと考えました」と語ります。

セブン銀行 バンキング統括部 尾崎貴乃氏(写真中央)

UXを含むデザイン全般とプロダクトマネジメントを両輪で改善することで、Myセブン銀行アプリを、よりお客さまに寄り添った、息の長いアプリに育てていきたい……。そんな思いで、本プロジェクトがスタートしました。

本場アメリカのベストプラクティスを参考に、徹底的にデザインについて議論

プロジェクト初期の取り組みで特に効果的だったのが、“デザインの企画書”をしっかりと作り込んだことです。電通グループとISIDの合弁会社であり、ソフトウェアエンジニアリングを核に先端技術を活用した協創型の事業開発支援を行う、電通イノベーションスタジオ(以下、DIS)の曽我亘は、当時を振り返って「これが大きな転機になる取り組みだった」と話します。

「私は、現在、アメリカに住んでおり、FinTechの本場であるアメリカでベストプラクティスや最先端の技術に日々触れています。その経験を活かして、Myセブン銀行アプリにおいても、総合的な金融サービスアプリとしての情報設計の考え方の反映やユーザービリティの向上などのリニューアルに取り組んでいけば、もっとよいものにできるのではないかと思っていました。それで、まずは、課題に対応するようなベストプラクティスを共有し、議論するところから始めたんですよね」(曽我)

電通イノベーションスタジオ(DIS) 曽我亘

ユーザーのホーム画面から登録へのナビゲーションやカードローンをはじめとする各金融サービスへのつなぎ方などについて、お客様からの改善要望や社内の改善希望を確認しながら徹底的に議論しました。さらに、「なぜこのリニューアルを行うのか」「そもそもMyセブン銀行アプリらしさとはなにか」まで掘り下げて話し合い、言語化していったと言います。

「振り返ってみると、ものすごくいい時間だったなと感じます。最初は明確な方向性が定まっておらず白紙に近い状況だったのですが、曽我さんに複数のベストプラクティスをご紹介いただくことで勝ちパターンのようなものが見えてきましたし、掘り下げてディスカッションをすることで、方向性が定まってきました。また、『私たちはこういうアプリをつくりたいんだ』『そのためにこれをやるのだ』『だからこういうテイストが必要なのだ』ということを言語化・資料化することで、よりチームメンバーへの指示や共有が明確になり、メンバーの腹落ち感も増したように思います」(山下氏)

こうして作り込んだ企画書をベースにしてデザインのイメージを一新し、さらに、「口座の明細に対しお客さまが自由にメモを付けられる機能」などを追加しました。他にも「カードローントップ画面のユーザビリティを高める」「アプリでカードローン口座から普通預金口座に振り替えて借入する機能」「インターネットバンキングの初回登録設定の動線を見直す」など見た目だけでなく機能面の向上もさせ、アプリを大幅にアップグレードしました。

また、これまでのデザインプロセスを、以前使用していたデザインツールからクラウドベースのデザインツールであるFigmaに移行したことで、プロジェクトの拡大や成長に柔軟に対応できるようになりました。

ただ表面的なデザインを作るのではなく、デザインにおける理念や原則を整理して、必要あれば制作の環境までをも柔軟に変化させる。そのような姿勢や取り組み方が、効果と満足度を高めるデザインリニューアルにつながりました。

インターネットバンキングの初回登録数が1.88倍増加! プロダクトマネジメントの質も向上

「プロダクトマネジメントの面では、ダッシュボードの構築や顧客ロイヤルティーを数値化するための指標であるNPS(Net Promoter Score)を導入しました」。こう話すのはバンキング統括部の福森匡紀氏。「これまでは、主にアプリのストアレビューを参照していたのですが、NPSを導入してマーケティングツールと連携させることによって、ユーザーの属性や行動、評価が、より明確に見えるようになりました。またダッシュボードを設けたことで、マーケティング関係者だけでなく開発やデザインのメンバーがMAU・DAU・NPS・アクティブサービス数といった基本指標を追えるようになり、より身近に、自分事として評価をとらえられるようになったところもよかったなと思っています」(福森氏)

セブン銀行 バンキング統括部 福森匡紀氏

また、導入の提案を行ったDISの安本亮介は「セブン銀行で、アメリカ式のプロダクトマネジメントを展開するために、クライテリア(評価基準)を導入しました。これにより、現在の実績や課題、そして今後の取り組むべき課題が明確になりました」と話します。

電通イノベーションスタジオ(DIS) 安本亮介

明確な根拠や戦略に基づいたリニューアルが奏功し、インターネットバンキングの初回登録数がリニューアルの前月と比較して1.88倍増加しました。ほかに、カードローンの増額申し込みが1.5倍、口座に振り替える形でのカードローンの借入額が1.2倍と大幅に増加しました。

今後はNPSの活用や、クライテリアによるプロダクトマネジメントの品質改善によって、Myセブン銀行アプリのさらなる成長が期待されます。ISIDはセブン銀行との、システム構築だけに留まらない包括的なパートナーシップを継続し、DISとともに総力を挙げて、「セブン銀行らしいユニークな金融サービス」を支援していきます。

株式会社セブン銀行 会社概要新しいウィンドウで開きます

社名
株式会社セブン銀行
本社
東京都千代田区丸の内1-6-1
設立
2001年
資本金
307億2千4百万円(2023年9月30日現在)
従業員数
589人(2023年9月30日現在)
事業内容
ATMプラットフォーム事業、金融サービス事業
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  • 記載情報は取材時(2022年10月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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