TOTO株式会社 iQUAVIS 導入で開発の手戻り一掃とウォシュレット開発スピードのさらなる加速へ

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写真左より TOTO株式会社 ウォシュレット開発第二部 百衣大輝氏、ウォシュレット開発第一部 山村早希氏、ウォシュレット開発第三部部長 持田真之氏、ウォシュレット開発第二部 三山一誠氏

1917年(大正6年)創業のTOTO株式会社。国内にまだ下水道が整備されていなかった時代に水洗便器の開発に挑み、苦難を乗り越えて商品化を果たした創業者の先見性と精神を受け継ぐ同社は、1980年、これまでにない革新的な便座「ウォシュレット」を発表。温水洗浄機能を備えたこの商品は以来グローバルで6000万台以上 を売上げ、洗練されたデザインと機能性により米国をはじめとする海外市場でも販売を伸ばしています。同社のウォシュレット開発部ではこうしたグローバル展開をさらに加速させるため開発プロセス革新に取り組んできましたが、設計・開発に必要なデータが社内に散在し、要件の抜け漏れによる手戻りが発生していることが、喫緊の課題となっていました。この課題に対処するため同部は電通総研(当時 ISID・ITID)のiQUAVIS(アイクアビス)を導入。設計の初期段階からタイムリーに必要な情報を抽出できる仕組みを構築しました。今回のプロジェクトを指揮したウォシュレット開発第三部 部長の持田真之氏はiQUAVISについて「熟練設計者の暗黙知を明文化してくれる得がたいツール」と評価しています。

抜け漏れをいかに解消するか

「要求事項などのつながりをiQUAVIS に集約することで誰でも抜け漏れない設計が行えます」

TOTO株式会社 ウォシュレット開発第二部 百衣大輝氏

「これは、なんとかしなければ」 持田氏がそう思ったのはいまから5年ほど前。設計者が苦労に苦労を重ねてようやく完成させた便ふたの設計に要件の抜け漏れがあり、手戻りが発生したことがきっかけだったと言います。

それは設計者を責めるわけにはいかない内容でした。「海外向けの便ふたで、事情を知っている人間でなければわからないような埋もれた要件だったのです」と持田氏は説明します。

近年、TOTOはウォシュレットの海外展開に力を入れており、北米やアジアを中心に販売を伸ばしています。設計者は異なる国や地域に向けて、それぞれの文化、環境、法規などを考慮した機種設計を行っていますが、その際、膨大な情報の中から必要な要求事項を抽出しなければなりません。
この抽出に抜け漏れがある場合、開発の最終段階で手戻りが発生。「そうなれば開発コストもかさみ、新機種の展開も遅れてしまう」と持田氏は当時の懸念を語ります。「設計に取りかかる前に必要情報を漏れなくすばやく抽出する仕組みが必要でした」

技術を「見える化」するツール

「これまで暗黙知のため共有できなかった情報が形式知として体系化されたのは大きなメリットです」

TOTO株式会社 ウォシュレット開発第三部部長 持田真之氏

そんなとき持田氏に朗報が届きます。開発部内で開発プロセス革新活動を進めていたウォシュレット開発第二部の三山一誠氏と奥野翔氏から「必要要件の抽出に有効なツールがある」と教えられたのです。

そのツールとは電通総研の提供するiQUAVISでした。製品を構成する部品や機能と、要件のつながりを体系的に表示するマトリクスを備え、設計者の要件抽出に大きな力を発揮します。
「iQUAVISを利用すれば熟練者の頭の中にしかなかったような設計情報を誰もが共有できるようになります」とウォシュレット開発第二部の 百衣大輝氏は話します。「諸元や要求事項などのつながりをiQUAVIS に集約することで誰でも抜け漏れない設計が行えます」

トライアルを経て全面展開へ

このツールの有効性を確かめるため、持田氏は自身を含めて4 人からなるプロジェクトチームを立ち上げました。メンバーは三山氏と奥野氏とウォシュレット開発第一部の山村早希氏。

同チームはまず下準備としてiQUAVISで出力すべき情報、業務の流れ、入力情報などを整理し、さらに設計情報の紐付け(技術ばらし)に抜け漏れがないかどうかをチェックしました。

この作業を経てトライアルが始まりました。ここで、当時便ふたの設計者だった百衣氏がテスターとして参画します。モデルチェンジされる便ふたの設計にiQUAVISを適用し、熟練者の思考の「見える化」、要件変更への対応力、多彩な形式による情報出力などを検証しました。

トライアルの結果に好感触を得た持田氏は、その成果を開発部の各部長に伝えると共にこの新しい仕組みが開発プロセスにもたらすメリットを説き、開発プロセスに組み込むことで、iQUAVIS展開への流れを作ります。

その後、奥野氏と入れ替わりで百衣氏がプロジェクトチームへ参画。
設計現場では山村氏、百衣氏が各部の主要な設計者と連携してこれまで暗黙知とされていた設計情報をツールに取り込み、新しい仕組みへの周知をはかりました。「設計者なら誰でも要件の抜け漏れで苦労した経験はあるので、それが解消すると伝えるとみんな積極的に協力してくれました」と山村氏は振り返ります。

こうした経緯を経て、プロジェクトチームは 開発部全体にiQUAVISを全面展開。折しもこの年、ウォシュレットの最上位機種「ネオレスト」がフルモデルチェンジの時を迎え、開発各部の熱気は高まっていました。

失敗の許されないこのタイミングでの新ツール導入。出力の不具合や使い勝手に関する改善要求は発生したもののiQUAVISの導入は比較的円滑に進行したと百衣氏は話します。「早い段階からツールに馴染んでもらい、要望に即座に応えていったことでiQUAVISは抵抗なく現場に受け入れられていきました」

ユーザーに寄り添うサポート

「電通総研のサポートチームはこちらの悩みを機敏に察知し的確にリードしてくれました」

TOTO株式会社 ウォシュレット開発第一部 山村早希氏

また、このプロジェクトでは電通総研のコンサルティング部隊が業務整理と活用支援を行っており、そのサポートについて山村氏は「プロジェクトをしっかりとリードしてくれた」と話しています。「一言で“技術ばらし”(構成要素の紐付け)と言っても初心者にはなかなか難しいところがあります。しかし、こちらの悩みを機敏に察知して丁寧にサポートしてくれました」

また三山氏も電通総研の支援について「難しい課題を相談してもそれに応え、さらにその先を見通した提案をしてくれた」と評価しています。

手戻りを一掃、海外展開に拍車

「iQUAVISは設計者の知識や経験に関わりなく手戻りを防止する仕組みとして役立ちます」

TOTO株式会社 ウォシュレット開発第二部 三山一誠氏

今回のプロジェクトの結果、TOTOウォシュレット開発部では、開発に必要な 複雑な情報抽出作業がiQUAVISによって体系化され、設計情報探しのプロセスが解消されました。体系化された結果、要求仕様や設計情報の抜け漏れも顕在化し、開発部全体が明文化に取り組む活動にもつながりました。

「これまで暗黙知のため共有できなかった設計情報が、システム上に形式知として展開されたことは大きなメリットです」と持田氏は話します。「それにより開発のスピードと質が高まります」

また、iQUAVISは開発人材の強化にも効果があると三山氏は指摘します。「海外市場での販売が加速してくると現地リソースによる設計も増えていきます。そうなったときにiQUAVISは設計者個人の技量に関わりなく手戻りを防止する仕組みとして役立ってくれます」

今後、開発の精度とスピードをさらに向上させていきたいと語る持田氏。「今回は過去にやりたくてできなかったことをしっかり実現することができました。しかし、まだ、手戻りが一掃できたわけではありません。今後はAIなど最新技術を視野に入れながらさらにiQUAVISの活用を拡げていこうと思います。その時はまた電通総研のサポートに期待したいですね」

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社名:
TOTO株式会社
本社:
〒802-8601 福岡県北九州市小倉北区中島2-1-1
創業:
1917年(大正6年)5月15日
資本金:
355億7,900万円
売上高:
7,011億円(2022年度/連結)
従業員数:
36,188名(2023年3月現在/契約社員・派遣社員を含む)
主要製品:
衛生陶器、システムトイレ、腰掛便器用シート、水まわりアクセサリー、浴槽、ユニットバスルーム、水栓金具、システムキッチン、洗面化粧台、マーブライトカウンター、浴室換気暖房乾燥機、環境建材、福祉機器、ファインセラミックス
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