小野薬品工業株式会社

Azure OpenAI Serviceの活用で全社員の生産性・創造性とITリテラシーの向上を目指す

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写真左より 小野薬品工業株式会社 IT戦略企画部 ユーザエクスペリエンス課 宗綱葵氏、IT戦略企画部 ユーザエクスペリエンス課 佐藤清司氏、IT戦略企画部 ユーザエクスペリエンス課 課長 田中誠次朗氏、IT戦略企画部 部長 中田大介氏

研究開発型の製薬企業である小野薬品工業は、革新的な新薬を世界中に提供し続ける「グローバルスペシャリティファーマ」を目指し、2021年に成長戦略を支えるデジタル・IT活用方針「DX推進戦略」を策定しました。2022年にはデジタル・IT戦略推進本部を設立し、これまでの研究開発で蓄えた知見のデータ活用などを推進していましたが、この度、グループ全体での導入に踏み切ったのがChatGPTの社内活用です。製薬会社という機密性の高い情報を取り扱う業界でも使用できるセキュアな企業型ChatGPTを、Azure OpenAI Serviceを活用して2023年5月に導入。研究・開発・製造・営業に携わる全社員が対話型AIを活用することで、生産性・創造性の向上はもとより、AI人財の育成やIT活用への意識醸成も目指しています。その独自の対話型AIを構築するパートナーとして選ばれたのがISIDでした。IT戦略企画部 部長の中田大介氏は「社内で導入を検討していた時期に、私たちと同じスピード感と熱量で対応してくれたのがISID様でした。ソリューションを導入して終わりでなく、製品の継続的な開発を計画している点も高く評価しました」と話します。

製薬業界No.1の情報システムの実現へ

「ChatGPTは、スマートフォンの登場と同じくらい社会を変えるインパクトがあると踏みました」

小野薬品工業株式会社 IT戦略企画部 部長 中田大介氏

小野薬品工業は、医療ニーズの高い「がん・免疫・神経・スペシャリティ」の4つの重点領域で疾患ノウハウを蓄積・活用した創薬を目指しています。2014年には世界に先駆けて抗PD-1抗体「オプジーボ」を発売。がん治療に免疫療法という新たな道を切り拓きました。
同社では革新的な新薬を世界中に提供し続けるグローバルスペシャリティファーマを目指し、AIを含むデジタル・IT活用で成長戦略を支える経営基盤に据えています。
社内外でのデジタル活用の機運が高まる中、2022年にデジタル・IT戦略推進本部を設立。同本部内のIT戦略企画部 部長である中田大介氏は「我々が目指すのは『ベストインクラスのITサービスプロバイダー』。これは業界の中でベストなITをサービスとして社内外に提供していこうという標語です。グローバル戦略を掲げて海外進出をしていくには、海外の企業と対等以上に渡り合えるようにしなければならない。その中でITの活用は重要です。そう考えていた折に、世の中に台頭したのがChatGPTでした。社内での活用を検討すべく、導入を検討していた時期に、スピーディーかつ一番熱心に私たちの立場を理解してくれたのがISID様でした」と振り返ります。そして2023年5月、Azure OpenAI ServiceのPoC環境の提供がスタート。研究・開発・製造・営業に携わる全社員が対話型AIを活用し、AI人財の育成および業務効率化を推進していくこととなりました。

機密データの保護が最重要課題

「昨年末から世間を賑わせていたOpenAIのChatGPTは、スマートフォンの登場と同じくらい社会を変えるインパクトがあると踏んだ」という中田氏。しかし企業導入にあたって、通常のChatGPTは学習データとしての2次利用の可能性がありセキュリティ面に不安がありました。
同部ユーザエクスペリエンス課 課長の田中誠次朗氏は「発表前の研究開発データを扱う当社にとって、導入の最重要課題は“セキュアな環境でどの部署のどの社員でも安全に使用できる”ということ。その矢先、日本マイクロソフトが機密データを保護できる企業向けChatGPTをリリースすると聞き、製薬企業でどのように活用できるかを綿密に具体化していきました」と話します。
同課で導入に携わった宗綱葵氏は「企業向けChatGPTをご提案いただいた各社が持つ情報の確度や鮮度、知識量などをヒアリングし、当社が入手していた情報と照らし合わせた結果、一番精度が高いと感じたのがISID様でした。製薬業界に対話型AIを展開する独自性において洞察力が高く、何より熱量がありました」と振り返ります。

導入後の伴走にも信頼感

「ISID様は、製薬業界に対話型AIを展開する独自性においてとても研究されていて何より熱量がありました」

小野薬品工業株式会社 IT戦略企画部 ユーザエクスペリエンス課 宗綱葵氏

製薬会社は一つの企業で研究・開発・製造・営業とさまざまな組織を抱えています。導入後はその全社員約3,500人中、日常的に仕事でPCを使用する2,700人以上がChatGPTを使用しています。
「当初は100人程度のスモールスタートで進める案もありましたが、社内での検討を重ね、上層部から現場の社員まで一斉に利用開始することにこだわることにしました。ChatGPTが、業務システムとして当たり前に活用される流れがすぐそこに迫っており、これに乗れないと取り残されてしまうという危機感を抱いていたためです。その思いを受けて、ISID様が5月半ばにMicrosoftのクラウド上にAzure OpenAI Serviceを構築。5月下旬には対象社員全員が使用できる環境が整備されたことには、ただそのスピード感に驚きました」(宗綱氏)。
リサーチャーとして米国でChatGPTがリリースされた当初から情報収集していたIT戦略企画部 ユーザエクスペリエンス課の佐藤清司氏は「ISID様が構築から導入後の改善まで共に開発していくパートナーとして伴走してくれたことがよかった」と言います。「リスクを含めた正しい情報を率直に話してもらえる点に誠実さを感じました。例えばAIの課題で挙がるハルシネーション(=事実と異なる内容や、文脈と無関係な内容の出力が生成される現象)や、トークン数が極端に多いと止まってしまうことなども共有しながら進めることができたため、信頼関係が築けました。これは今後長くお付き合いしていくパートナーとしてのISID様のストロングポイントなのではと我々は感じています」(佐藤氏)。

それぞれの現場で成果

「8割を超える社員から業務効率化につながったという回答が得られ、幸先のよいスタートを切れました」

小野薬品工業株式会社 IT戦略企画部 ユーザエクスペリエンス課 課長 田中誠次朗氏

3カ月間ChatGPTを使用した後、社員アンケートを実施。期待通りの成果が表れ、手ごたえを感じていると田中氏は話します。「8割を超える社員から業務効率化につながったという回答が得られ、幸先のよいスタートを切れました。導入後もISID様の支援のもと、利用説明会を実施。超初級編、初級編を開催して、約1,300人以上が聴講しており、今後はより具体的なビジネスシーンでより具体的なプロンプトのデモンストレーションを交えた、ビジネス活用編も企画しています。また導入展開時に、役員には1on1でトレーニングを実施し、全階層にAI活用の必要性を認識してもらえたことも社内浸透の大きなきっかけになっています」。
ChatGPTが単なる作業の効率化だけでなく、ビジネス戦略に有効だと感じたのが、MR(医薬情報担当者)が医療従事者に製品情報を紹介するシーンを想定した“壁打ちシミュレーション”。想定外の質問も含めた対話を事前にやり取りできる点が優れており、現在プロンプト集としてまとめている最中です。
そのほか研究開発の文書作成でも成果が出ていると佐藤氏は続けます。
「私たちは医薬品の有効性を適切な文書にする必要性があることに加え、新薬の研究開発では機密性の高い情報を取り扱います。つまり、文章の精度を上げることとセキュアな環境の両立が必要不可欠。そのような環境が構築され、製薬企業の特徴である新薬の研究開発に生かせるということは業務効率の向上だけでなく、創造性の向上にもつながっているということです。本サービスを導入した素晴らしい恩恵だと思います」

プロンプトは一生もののスキル

「プロンプト作成は一生もののスキルになる。今取り組まないと取り残されるという危機感を持ってプロジェクトに取り組んでいます」

小野薬品工業株式会社 IT戦略企画部 ユーザエクスペリエンス課 佐藤清司氏

「これまで行っていた単純作業をChatGPTに任せて仕事にメリハリをつける効率性、そして自分のアイデアをブラッシュアップしていく創造性を社員一人ひとりが身につければ、業務ががらりと変わると思っています。そこから生産性を上げ、業務改革を加速させていきたいです」と中田氏。
今後はクラウドに溜まったプロンプトログを利用したり、企業資料をサービスと連携させ必要な情報を集約・分析して活用したりするなど、より独自性のある活用方法を検討していくフェーズです。「プロンプトの書き方から社員への普及方法、新しい仕組みの検討やUIの改善など私たちの大小さまざまな要望に対して、ISID様が非常に細かく、クイックにサポートしてくれました。そのお陰もあり3カ月で社内にAI活用の文化が醸成されつつあります。生成AIは自然言語処理です。プログラムを書けなくても情報処理できる時代に突入しています。この流れの中で、プロンプト作成は一生もののスキルになると考えています。今取り組まないと取り残されるという危機感を持って、私たちはこのプロジェクトに取り組んでいます。そのパートナーとして、分析や技術力に長け、何より研究熱心なISIDに力添えをいただき、セキュアなChatGPTを構築し、企業成長につなげていければと思っています」(佐藤氏)

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社名
小野薬品工業株式会社
本社所在地
〒541-8564 大阪市中央区久太郎町1丁目8番2号
創業
享保2年(1717年)
資本金
17,358百万円
売上収益
4,472億円(2023年3月期/連結)
従業員数
3,761名(2023年3月末時点/連結)
事業内容
医療用医薬品主体とする各種医薬品の研究、開発、製造、仕入および販売
  • Microsoft、Azureは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
  • 記載された会社名・商品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
  • 記載情報は取材時(2023年8月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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