株式会社荏原製作所

生産準備効率化の工程設計ツールR-3D導入で半導体製造装置事業の成長を加速

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株式会社荏原製作所 熊本事業所長/生産部長 稲葉充彦氏

大正元年(1912年)創業の荏原製作所。公共水道施設用の巨大渦巻きポンプ製造で始まった同社の事業はいま1世紀を経て大きく成長し、冷熱、送風、給水など産業用機械の製造から環境プラントの建設管理まで幅広い領域に拡がっています。なかでも近年とくに勢いを増しているのが半導体製造装置事業。シリコンウエハーを研磨して平滑化するCMP(Chemical Mechanical Polisher)は世界市場で米国大手とトップ争いを繰り広げています。
CMP装置を生産する同社熊本事業所は、部品毎の組み立てプロセスのフローを示すBOP(Bill of Process)のプラットフォームとしてISIDの提供する工程設計ツールR-3Dを導入。さらにR-3DとPLM(Teamcenter)を連携させた製造工程管理システム(MPM:Manufacturing Process Manager)へと発展させ、3D設計情報を製造へ活用する環境を整えました。CMP装置の生産を統括する稲葉充彦生産部長は、この仕組みにより、生産準備の作業効率が向上したほか、生産現場のスキルアップや早期の製造性検証などにR-3Dが役立っていると語ります。こうした成功を支えたのはISIDの製造ソリューションチーム。そのサポートについて稲葉氏は「単なるツールの導入だけでなく、その先を見据えた活用法を提案し、成果につなげてくれた」と話しています。

負荷のかかる準備作業

ISIDの提案は単なるツールの活用に終わらず、その先まで考えられていました

株式会社荏原製作所 熊本事業所長/生産部長 稲葉充彦氏

「上流は3次元で進めているのに下流に流れてくると2次元になってしまう」。そう話すのは荏原製作所精密電子カンパニー装置事業部生産部長の稲葉充彦氏。同氏が語るのは半導体製造装置CMP(Chemical Mechanical Polisher)の製造環境についてである。

CMPはシリコンウエハーの表面を化学反応と機械研磨で平坦に磨き上げていく装置で、半導体製造の品質向上や高度化に欠かせません。研磨、搬送、制御、測定などの機能ユニットを備え、その部品点数は数万点。荏原製作所では設計者が3次元CAD を用いて数メートル四方の大きな装置を組立部品毎に設計し、組図を製造部門に流していきます。

組図を受け取った生産技術は2Dの組立図から視認性の良い、わかりやすい指示書を作る事が非常に困難でした。

冒頭の稲葉氏の言葉にはそういう状況へのもどかしさがにじんでいます。
「せっかく上流が3次元でやっているのだから、その3Dデータを活用する事で、組立作業に不慣れな新人にもわかりやすい組立手順書が作れるはずです」。

デジタル工程設計ツール

そこで、その課題を解決するべくひとつのツールを導入しました。それは、3次元設計モデルと紐付いた工程設計ツールR-3Dです。ISIDが開発・提供するこのツールは、軽量かつ高精度な3Dデータフォーマット“JT”を採用。機敏で直感的な操作性が特長です。3Dデータを活用して組立性の検証を行いながら、トルク値や組立手順といった情報をプロセスフロー(BOP:Bill Of Process)上に定義し、更に手順書の中で指示図として利用するキャプチャも同時に作成します。ツール上での簡単な操作のみで作業者に分かりやすい手順書を作成することが出来るようになりました。

稲葉氏によれば、R-3D導入によって3Dモデルを活用した手順書の導入がどんどん広がっていったと言います。
「フロントローディングの段階で、3Dモデルを活用した組立手順を作成し生産性を検討します。従って、組立手順を見せながら“作りにくいから、ここをこう変えてほしい”と設計に言えるわけです。それが早い段階で出来るわけですから作業効率は上がります。最初はスモールスタートで数点のユニットから始めました。生産現場の感触も非常によく、“早く3Dの手順書にしてほしい”という声が直ぐに私たちに届くようになりました」(稲葉氏)

製造工程管理システムとの連携

取り組みはそれだけに止まりません。製造指示書などのBOPデータが数千を数えるようになると、R-3DとPLM(Teamcenter)を連携させた製造工程管理システム(MPM)へと発展させ、製造情報を再活用する環境を整えました。

「もともとR-3Dを選んだのは、ISIDの提案のなかに製造系データベースの構想が含まれていたからです」と稲葉氏は話します。「単なるツールの活用に終わらず、その先まで考えられており、成果を出すための柔軟な対応力も備えていました」。

R-3DとPLMの連携は実際、生産準備に大きなメリットをもたらしています。受注生産となるCMP装置は基本機体に顧客毎のカスタマイズを加えて出荷されますが、類似した組立部品も多く、そのBOPデータを製造に利用すれば効率をさらに高めることができます。

「過去の資産(BOPデータ)を最大限活用したい。そうすることで作業を効率化し、生産のキャパシティを広げることができます」と稲葉氏は話します。この要望に対しISIDはMPMに蓄積されたデータの中から類似アセンブリを検索し、BOPデータを再利用できる仕組みを構築しました。

激変する市場、機敏な生産の仕組み

ISIDのチームは製造の全工程を熟知しており、プロジェクトを円滑に運ぶことができました

株式会社荏原製作所 熊本事業所長/生産部長 稲葉充彦氏

R-3DはCMPの生産現場に根付き、生産準備の効率化に役立っています。また、それ以外にも組立に不慣れな新人のスキルアップや開発早期の製造性検証などにも効果が出ていると稲葉氏は話します。

「R-3Dで作成した手順書を用いると習熟の立ち上がりが早い。新人でも3台目にはベテランと同程度の工数で製造することもありました。生産ラインではこれは重要なメリットです。またR-3Dを使えば設計の初期段階から大まかな組順を作成し組立手順を検証できる。そうすることで最終的に生産ラインでの手戻りを減らすことができます」。

世界的な半導体ニーズの高まり受け荏原製作所のCMP装置の受注は増えていると稲葉氏は話します。

「受注は確実に増えています。いずれは海外でも生産する時代がやってくるかもしれません。そうなれば指示書も多言語化や標準化が必要になる。そのときR-3Dがまた役立ってくれるでしょう。半導体の世界は変化が速い。そこで勝ち抜くには機敏な生産の仕組みがなければいけません。R-3Dのようなツールは不可欠です」。

最後に稲葉氏はISIDのサポートについてこう述べました。「BOPなど製造の話ができるベンダーが少ないなか、ISIDのチームは製造の全工程を熟知していました。そのため専門性の高い領域でも前向きな意見を交わすことができ、プロジェクトを円滑に運ぶことができました。今後もR-3Dを製品として成長させ、ISIDには引き続き支援してもらいたいです」。

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社名:
株式会社荏原製作所
本社:
〒144-8510 東京都大田区羽田旭町11-1
創業:
1912年(大正元年)11月
資本金:
798億円
売上収益:
6,808億円(連結)
従業員数:
4,287名(単体)/ 19,095名(連結)
主要製品:
ポンプ、冷熱機械、送風機、コンプレッサ・タービン、都市ごみ焼却プラント、産業廃棄物焼却プラント、真空ポンプ、CMP装置、排ガス処理装置、めっき装置
  • 記載情報は取材時(2023年6月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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