中外製薬株式会社 治験文書管理システム「Wingspan eTMF」で海外規制と査察への即応力を強化

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中外製薬株式会社 臨床開発業務部 プロジェクトメンバーの皆さん

抗がん剤などがん領域の医薬品で国内トップシェアを誇る中外製薬。抗体医薬品の分野でも高い開発力を備え、製薬業界の世界的大手ロシュ社との戦略的提携を通じ自社医薬品の海外販売を拡大させています。こうした流れを受け同社は、主要国の規制や査察にリアルタイムで対応する電子治験文書管理システム“Wingspan eTMF”を導入しました。国内の関係部門と海外拠点を結びつけ、治験文書を一元的に管理できるこのシステム。その導入で大きな力を発揮したのはISIDです。

医薬品の海外販売、規制と査察の悩み

新しい医薬品を市場投入する場合、製薬会社は医師や患者の協力を得て臨床試験を行い、国際的な規則及び各国の保健当局の規則に沿ってその効果や安全性を証明するデータを集めます。このプロセスは治験と呼ばれ、医薬品の承認に欠かせません。こうした治験に関わる重要文書を“TMF(Trial Master File)”と呼んでいます。

この数年、同社はTMFの電子化(eTMF)に取り組んできました。2002年に製薬業界の世界的大手ロシュ社との戦略的アライアンスを開始した同社は、現在、世界116カ国に自社開発の医薬品を供給しています。今後、治験のグローバル化が予想される中、海外拠点との治験文書の共有と国境を超えた査察への対応が急務となっていました。

「国内だけであれば査察のタイミングもわかっており、必要な文書もすぐに準備ができるので、eTMFは必ずしも必須ではなかったかもしれません」と話すのはeTMF導入プロジェクトで業務プロセス改革を進めた浅川智子氏。「しかし、海外ではそうはいきません。査察がいつ行われてもよいように、常に備えておく必要があります。しかし、医師との契約書や患者の同意書といった治験文書は、紙ベースでそれぞれの国で管理されているため査察の求めにその場で応じるのが難しい状況でした。この状況をいかに早く適切に改善するかというのが大きな課題でした」

国内での遅れ、治験文書管理の世界標準

国内ではまだ紙ベースのTMF管理が主流を占めるなか、世界の製薬大手はTMFの電子化にいち早く取り組み、ほとんどの企業で治験状況を全社的に可視化する仕組みが構築されています。2015年、同社はロンドンで開催されたTMFの国際サミットにスタッフを派遣。自社のニーズに応えるeTMFツールの調査を行いました。比較検討の末、有力候補として挙げられたのは、この分野の草分け的存在であるウイングスパン・テクノロジー社が提供する“Wingspan eTMF”。クラウドベースの電子TMF管理ソリューションです。Wingspan eTMFは製薬業界最大手の米国ファイザー社も活用する実績あるソリューション。FDA(米国)、EMA(EU)、MHRA(イギリス)などの規制に対応するほか、直感的な使いやすさに定評があります。また、クラウドベースのシステムであるため、電子原本を複数拠点で一元的に閲覧することができ、国をまたいだ共同治験に大きな効果を発揮します。

当初は、eTMFを電子保管ツールと捉えていた同社導入チームでしたが、調査を進めていくうちに、海外ではもっと積極的に活用されていること、単に文書を保管するだけでなく、治験の進捗や品質、遅延状況を追跡して査察への対応力(Inspection Readiness)を高める、というのが世界の製薬業界のトレンドであることが明らかになりました。そして、Wingspan eTMFはそうしたトレンドをうまく機能に取り込んでいました。

優れたユーザビリティ、万全のサポート体制

技術面でのアドバイスはもちろん、製薬業界にも通じたISIDの導入支援は大きな安心材料でした


中外製薬株式会社 臨床開発業務部
加藤 敦隆氏

2016年、同社はWingspan eTMFの採用を決定し、2016年9月に導入を開始しました。2017年4月からのパイロット運用を経て、2018年1月から国内をはじめアメリカ、イギリス、台湾などで本格的な運用を始めています。
社内の関係部門との調整に奔走した浅川氏は、このツールの親しみやすさに助けられたと話します。「新しいシステムを導入することに対して、ほとんどのユーザーは難色を示します。慣れ親しんだ手順とのギャップに戸惑う部分があるからです。しかし、そこをうまく変えていかないことには先に進めません。そんなとき、重要な情報が指標化されWebページのように見やすく表示されるWingspan eTMFの画面を見せると、ユーザーの抵抗感が薄らぎました。さらに、規制に合わせて年2-3回自動的にアップデートされるので、自分たちで一から考えて設定を行うといったユーザー側の負荷を減らす効果もあります」

現場の導入支援にあたった加藤敦隆氏は、Wingspan eTMFのもうひとつのメリットとして国内でのサポート体制を挙げています。「eTMFの選定では他のベンダーのソリューションも検討しましたが、国内窓口の支援体制に少々不安を感じました。Wingspan eTMFの場合、テクノロジー系のサポートに実績があるISIDが支援にあたってくれます。技術面でのノウハウやアドバイスはもちろん、製薬業界やTMFの知識を有している点が安心材料でした。Wingspan eTMFの国内ユーザーを幅広く紹介するなどユーザーコミュニティー作りにも積極的で、そうした場が実務運用上非常に参考になりました」

 査察への即応力、成長への布石

査察にその場で対応できるということは、医薬品承認の可否に直結し、臨床開発のコスト削減にもつながっていきます


中外製薬株式会社 臨床開発業務部
浅川 智子氏

2年越しのeTMF導入を終えた同社。TMFが電子化されることで、電子化に対する社内の意識も大きく変わっていくのではないかと導入チームは期待します。もちろん現場の意識改革は一朝一夕に実現するものではありませんが、電子原本・電子プロセスを軸にしたグローバルスタンダードへの移行は世界市場での成長をめざす製薬会社にとっては必須要件です。

「特に海外のマネージャーたちはこうしたツールを待ち望んでいたようです」と浅川氏は海外拠点の歓迎ぶりを伝えます。「業務効率化という面もありますが、eTMFを通じて常に査察に対応できる状態であるということは、医薬品承認の可否に直結し、それはさらに臨床開発のコスト削減にもつながっていきます」

Wingspan eTMFを軸にした治験体制を固める中外製薬。その現場を担う加藤氏が最後にこう言い添えました。「世界の製薬業界の治験動向は目まぐるしく変わります。そういう変化に機敏に対応できるよう最新情報を共有しながら、今後もISIDのサポートチームとツールの展開を推し進めていきたいと思います」

2018年8月更新

中外製薬株式会社

  • 社名中外製薬株式会社
  • 東京本店東京都中央区日本橋室町2-1-1 日本橋三井タワー
  • 創業1925(大正14)年3月10日
  • 設立1943(昭和18)年3月8日
  • 資本金73,202百万円(2017年12月31日現在)
  • 売上収益534,199百万円(2017年12月31日現在)
  • 従業員数7,372人(2017年12月31日現在)
  • * 記載情報は取材時(2018年4月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

お問い合わせ
株式会社電通国際情報サービス 戦略ビジネス推進本部 新規事業開発部
TEL:03-6713-8068
E-mail : g-Lifescience-sales@group.isid.co.jp

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