マツダ株式会社 自動車業界初、MR活用による塗装シミュレーション
ボディの造形と塗装工程を同時に設計しお客様への提供価値を高める

  • 設計/製造/保守サービス

写真左より 篠田 雅史氏( マツダ株式会社 技術本部 車両技術部 塗装技術グループ マネージャー)、松永 伸子氏( 同 アシスタントマネージャー)、岩本 友之氏( 同 主幹)

世界最高レベルの燃焼効率をもつエンジン。駆動ロスを最小化したトランスミッション。軽量ながら安全性と快適な走りを両立させたボディなど、クルマづくりで常に卓越した技術力を誇るマツダ。カーデザインにおいても、その美しく独創的なフォルムは多くのファンを魅了し続けています。2015年3月、同社はMR(MixedReality:複合現実感)技術を用いた塗装シミュレーションシステムを稼働させ、塗装の工程機能を強化しました。新システムを実現させたのは、高い柔軟性と専門性を併せもつISIDの3Dデータ活用ノウハウです。

ミクロン単位の膜厚、塗装の挑戦

世界中のお客様に、最高品質のクルマを同時にお届けするというマツダの戦略においても、新システムの果たす役割は非常に大きいと考えています。

篠田 雅史氏

流麗なボディに情感のある陰影を刻む赤。近づいて見れば、その色は地中に眠るマグマが灼熱のまま結晶化したかのような透明感をたたえています。これはマツダの新しいブランドカラー「ソウルレッドプレミアムメタリック」。従来は実用化が困難であった塗膜構成で鮮やかな発色と深い陰影を可能にしました。この赤は、マツダのニューモデルに際立った存在感を与えています。「カラーは造形の一部であり、マツダデザインを構成する非常に重要な要素です」と語るのは技術本部車両技術部塗装技術グループを率いる篠田雅史マネージャー。「私達は、デザイナーが精魂込めて創り出した造形に、カラーで魂を吹き込みたいと考えています」

しかし、ソウルレッドのような複雑な発色をするカラーは、塗装工程に大きなブレークスルーを要求します。「デザイナーの思い通りのカラーを全てのお客様にお届けするためには、匠が13回かけて塗り重ねた微妙な色合いを、量産工程で実現しなければなりません。そこではミクロン単位の膜厚のコントロールが求められます。さらに、ソウルレッドを超えるカラーを実現するためには、ボディ外板を塗るロボットにも、複雑な形状の内板を塗る人にも、塗装精度を極限まで向上させる “匠の技”が必要になります」と篠田氏は話します。
ロボット塗装も、人による塗装もミクロン単位の膜厚精度を維持するのは、容易ではありません。「ロボットの動きやスプレーガンのスピード、角度、ボディとの距離などの微妙な違いによって、膜厚の微妙な差が生じて、色合いが変わります。特に、人による塗装は、匠の技を安定的に再現するための塗り方や、カラーが綺麗に見えるボディ構造を設計する事が課題でした」と同グループの松永伸子アシスタントマネージャーはその難しさを話します。
塗装を通じてお客様への提供価値を高めるためには、ロボットと人による塗装の両方の工程設計プロセスに、塗装品質を高精度に予測する技術が必須でした。

実物大の3Dで膜厚分布を視覚化、塗装工程設計の革新

クルマのデザイン面を決める段階で使う事によって、デザイン・開発・生産がワンマツダで知恵を出し合い、お客様への提供価値を高めていきます。

岩本 友之氏

この問題を打開するため、篠田氏らはマツダの設計・開発業務を長年支援してきたISIDの技術部隊と検討を開始しました。自動車業界では前例のないシステムを、どうすれば実現できるのか試行錯誤の末、ISIDはパートナーである旭エレクトロニクスの造船用塗装トレーニングシステムに着目しました。これはモーションセンサーを取り付けたスプレーガンにプロジェクターや偏光メガネなどを組み合わせ、塗装過程をリアルタイムでビジュアル化するシステムです。「システム開発の過程では、多くの課題解決が必要でした」と篠田氏は振り返ります。「例えば、平面が多い船舶と違って、クルマの塗装面は複雑な形状が多いため、シミュレーション計算量が多くなるので、最初はグラフィック処理速度が追いつかず、リアルタイムなビジュアル表示ができませんでした」

複雑な車両塗装に応用するため、ISIDは旭エレクトロニクスと共同で塗装膜厚の計算アルゴリズムを改良し、ロボット塗装プログラムのデータと車両部品の3D設計データを連携させるインターフェースを開発。さらに、ビジュアル化のデバイスとして、キヤノンが開発したMRシステム「MREAL」を採用し、塗装結果をヘッドマウントディスプレイ上のリアルな3D映像で評価する仕組みを実現したのです。こうして出来上がったシステムは、ロボット塗装と人による塗装両方の工程において、塗装面の膜厚分布を3Dでリアルタイムに視覚化するとともに、膜厚や塗装時間などを数値的に評価することを可能としました。
「これまで予測が困難だった、人による塗装品質も高精度で予測でき、実物大の3D形状で関係部門と共有できるようになりました。その結果、お互いの意図を確認し、短期間で設計/検証のサイクルを回して、デザイナーの求める造形と、そのかたちを際立たせる塗装工程を同時に設計できるようになりました」と松永氏は話します。

品質の早期作り込みが、お客様への提供価値を高める 

お互いの意図を確認し、短期間で設計/検証のサイクルを回して、デザイナーの求める造形と、そのかたちを際立たせる塗装工程を同時に設計できるようになりました。

松永 伸子氏

「すでに新型車の塗装工程設計に、新システムを活用しています」と語るのは、同グループの岩本友之主幹です。「このシステムを、クルマのデザイン面を決める段階で使う事によって、デザイン・開発・生産がワンマツダで知恵を出し合い、お客様への提供価値を高めていきます。成果をお見せできるのはまだ先ですが、皆様に喜んで頂けるクルマになると確信しています」
松永氏は、塗装技能の向上にも期待を寄せます。「匠による塗装では、塗装している表面状態を見ながら瞬時に膜厚を判断してスプレーガンの動かし方を変えています。自分の動きと連動させて膜厚をバーチャルで確認でき、匠のお手本動作や不良が出る動きも確認ができるシミュレータは、塗料を使わず何度でも使えて環境に優しい事もあわせて、素晴らしい訓練ツールになると現場も期待しています」

さらに、同社の世界戦略においても新システムへの期待は大きい、と篠田氏が続けます。「マツダは世界中のお客様に、最高品質のクルマを同時にお届けすることを目指しています。そのためには、各生産工場でのロバスト性まで含めた工程設計を一括で早く行う事が必須なので、新システムの果たす役割は非常に大きいと考えています」
『すべては、お客様の人生の輝きを提供するために。』新システムは、マツダの一貫したブランド思想が生み出した革新といえるのかもしれません。

2015年10月更新

マツダ株式会社 会社概要

  • 社名マツダ株式会社
  • 本社広島県安芸郡府中町新地3番1号
  • 設立1920年1月30日
  • 資本金2,589億57百万円(2016年3月31日現在)
  • 売上高3兆4,066億円(2016年3月期/連結)
  • 従業員数46,398名(2016年3月31日現在/連結)
  • 事業内容乗用車・トラックの製造、販売など

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