国立大学法人 信州大学

5カ所のキャンパスを構える信州大学
学生と教職員の安全を守るため、災害時情報配信を“potaVee”で実現

  • 顧客接点改革
写真左より 小幡 美紀氏( 国立大学法人信州大学 総合情報センター 技術補佐員)、今井 美香氏( 同 総合情報センター 技術職員)、不破 泰氏( 同 教授/総合情報センター長)

国立大学法人信州大学は、「学生の視点に立ち、その自己実現を支援し、優れた社会的課題解決能力などの人間力と豊かな人間性を備え、社会で指導的役割を果たしうる人材を育成すること」を教育の中軸としています。長野県内5カ所のキャンパスに集う学生および教職員はおよそ1万4千人。学生の約8割が一人暮らしという信州大学では、学生と教職員の安全と心身の健康を守ることを安全衛生の基本方針に掲げ、安全・安心なキャンパス創りに積極的に取り組んでいます。その一環として、災害時の緊急伝達情報をキャンパス内で配信する仕組みを、ISIDのエリア限定型Wi-Fiマルチキャスト配信プラットフォーム“potaVee(ポタビ)”の導入により実現しました。

情報配信の仕組みをきちんと作らなければならない

エリアワンセグ放送と“potaVee”の併用で、屋外にいる人にも屋内に避難している人にも確実に情報を届けることが可能になりました

小幡 美紀氏

安全・安心なキャンパスづくりにICTの面から取り組んでいるのは、信州大学全体の情報化を統括する総合情報センターです。同学教授で、センター長を務める不破泰氏は、災害時情報配信の仕組みを構築したきっかけについて語ります。「災害情報の配信については、2004年の中越地震、2007年の中越沖地震のころから考えていたものです。東日本大震災の際には東北の大学に視察に伺いましたが、学生や教職員へ向けた情報伝達に苦労されていた姿を目の当たりにし、情報配信の仕組みをきちんと作らなければならないという思いをさらに強くしました」

総合情報センターが最初に手がけたのは、エリアワンセグ放送を活用した情報配信です。「エリアワンセグ放送は、災害時でも放送局さえ守れば放送ができますし、受信者が10人でも1万人でもシステムの負荷が変わらないという利点があります。また、当時はほとんどの学生がワンセグ対応の携帯電話を持っていました」信州大学は2011年、大学としては国内で初めてエリアワンセグを利用した緊急情報通報手段の実験を開始。2014年2月にはエリア放送を行う地上一般放送局免許を取得し、大学本部のある松本キャンパスにおいて、エリアワンセグ放送の運用を開始しました。

エリアワンセグ放送とマルチキャストWi-Fiの併用

東日本大震災を経験した私たち日本人は、これから安全・安心という文化を作っていかなければならない。
そこには、ICTのチカラがとても重要です

不破 泰氏

しかし、運用開始後すぐに二つの課題が出てきたと技術職員の今井美香氏は話します。
「まずは放送免許の問題です。信州大学には5つのキャンパスがあり、全てのキャンパスで放送免許を取得して運用することは現実的ではありませんでした。もう一つは、ワンセグに対応していないスマートフォンを持つ学生が急激に増えてきたことです。エリアワンセグ放送だけでは情報が届く学生が限られてしまうという危機感を持ちました」

早々に課題に直面した不破氏は、放送型のメリットを享受しつつ受信者の環境変化に対応するには、Wi-Fiを活用した放送型のソリューションが必要だと考えるようになります。そこで目をつけたのがISIDの“potaVee”です。“potaVee”は、Wi-Fiを利用して、スマートフォンやタブレット端末に映像・音声・テキストなどを同時配信する、エリア限定型の配信プラットフォーム。ISID独自のマルチキャスト伝送技術により、特定エリア内の多数の端末に対して、高品質で遅延のないコンテンツ配信を実現します。不破氏はすぐにISIDに問い合わせました。
「驚いたのは、ISIDがすぐに“potaVee”のデモ環境を持って松本まで来てくれたことです。実際に動く環境を目にすることができましたし、すでに複数の大規模な実績があると聞いてその場で『これだ』と思いました。また、ISIDならば、『多くの人に情報を届けたい』という我々の思いに共感してくれると確信できたことも、“potaVee”導入を決めた大きな理由です」

安全・安心という文化を作る

通常時(左):大学案内やバス時刻表などのコンテンツが視聴できる。
災害時(右):対策本部設置や避難場所の周知のほか、その場の状況に応じた情報提供が行われる。

“potaVee”の導入により、5カ所のキャンパス全てにおいて、災害時の情報配信の仕組みが実現しました。現在は、松本キャンパスにおけるエリアワンセグ放送のコンテンツと連動して運用しています。
“potaVee”の運用を担当する技術補佐員の小幡美紀氏は、エリアワンセグ放送との併用の利点をこう話します。「校舎や体育館などの屋内には、エリアワンセグ放送を受信しづらい場所が多いのですが、Wi-Fiならどこでも問題なく接続できます。エリアワンセグ放送と“potaVee”の併用で、屋外にいる人にも屋内に避難している人にも確実に情報を届けることが可能になりました」

不破氏は、この仕組みをさらに進化させたいと話します。
「万一災害が発生した場合には、エリアワンセグ放送と“potaVee”だけでなく、メールも使いますし、ホームページでも情報発信を行います。あらゆる手段を使って必要な情報を確実に届けるつもりです。私は、安全と安心というのは文化だと思っています。東日本大震災をはじめ多くの災害を経験した私たち日本人は、これから安全・安心という文化を作っていかなければならない。そこにはICTのチカラがとても重要です。信州大学は今後も、ISIDと共同でWi-Fiマルチキャスト通信の有効利用方法や利用技術の開発に取り組み、取り入れていきたいと思っています。また、そういった新しい技術や仕組みを、全国の大学の災害対策モデルとして展開できればと考えています」

2014年12月更新

国立大学法人信州大学 概要新しいウィンドウで開きます

名称
国立大学法人信州大学
住所
松本キャンパス 長野県松本市旭3-1-1
設立
1949年
職員数
2,530人(教員1,171人、事務職員等1,359人)
学生数
学部学生9,199人、大学院1,827人、外国人留学生307人(2014年5月現在)

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