改正労働基準法のポイント:第7回

押さえておきたい改正労働基準法のポイント! 実務運用編

07 いま人気No1の企業は、年次有給休暇日を消化しやすい企業!

著者:奥村 禮司氏

2009年12月25日掲載

皆さんのところでは年次有給休暇を取得できていますか?取得率はどれくらいですか?

1.年次有給休暇の調査結果

厚生労働省の「平成20年就労条件総合調査」結果によると、平成19年(又は平成18会計年度)1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数は除く)は、労働者1人平均17.6日で、そのうち労働者が取得した日数は8.2日、取得率は46.7%となっています。
産業別にみると、最も取得日数が多く、取得率も高いのは、電気・ガス・熱供給・水道業で14.9日、76.3%、一方、最も取得日数が少なく、取得率も低いのは、飲食店,宿泊業で4.7日、29.8%となっています。

労働者1人平均年次有給休暇の取得状況

企業規模 付与日数(日) 取得日数(日) 取得率(%)
17.6 8.2 46.7
1,000人以上 18.8 10.0 53.1
300〜999人 17.7 8.0 45.0
100〜299人 17.0 7.3 42.8
30〜99人 16.4 7.0 42.4
産業 付与日数(日) 取得日数(日) 取得率(%)
鉱業 18.5 11.5 62.0
建設業 17.5 6.2 35.3
製造業 18.3 9.9 54.0
電気・ガス・熱供給・水道業 19.6 14.9 76.3
情報通信業 18.3 10.0 54.8
運輸業 16.9 8.4 49.6
卸売・小売業 17.2 6.0 34.6
金融・保険業 19.0 8.0 42.0
不動産業 16.4 7.0 42.7
飲食店,宿泊業 15.9 4.7 29.8
医療,福祉 14.9 6.4 42.7
教育,学習支援業 17.1 7.5 44.0
サービス業
(他に分類されないもの)
16.4 7.9 48.3
付与日数(日) 取得日数(日) 取得率(%)
平成16年 18.0 8.5 47.4
平成17年 18.0 8.4 46.6
平成18年 17.9 8.4 47.1
平成19年 17.7 8.3 46.6
平成20年 17.8 8.5 47.7
出典:厚生労働省「平成20年就労条件総合調査結果の概況」第5表より引用

また、旅行会社のエクスペディア ジャパンの「国際有給休暇比較 2009」結果によると、調査を行なったフランス・イタリア・スペイン・ドイツ・オーストリア・イギリス・ニュージーランド・カナダ・オーストラリア・日本・アメリカの11ヵ国中において、日本は、有給休暇の平均付与日数では、ワースト2位。更に、平均付与日数のうちの平均取得日数では、ワースト1位です。

日本ではなぜ、これほど年次有給休暇を取得できないのでしょうか?

厚生労働省の「労働時間等の設定の改善の促進を通じた仕事と生活の調和に関する意識調査(平成20年度)」によると、年次有給休暇を取得することにためらいを感じる理由として、「みんなに迷惑がかかる」が最も多く、次いで「後で多忙になるから」。そして、「職場の雰囲気で取得しづらい」「上司がいい顔をしない」「昇給や査定に悪影響がある」といった答えになっています。

この調査から私が感じるのは、「年次有給休暇を取得する奴は、悪い奴だ!」というような意識ですが、これは私だけでしょうか?年次有給休暇を取得することは悪であり、会社が損害を被ることなのでしょうか?

2.取得率100%の六花亭とワーク・ライフ・バランス

北海道でお菓子を製造・販売する六花亭製菓株式会社は、20年連続で全従業員が100%年次有給休暇を取得しています。確かに、当初は、みんなに迷惑がかかったり、後で多忙になったりしたようです。

しかし、現在は、時間に対する意識が変わり、効率的に仕事をする意識も高まっており、職場ごとに仕事が効率的に行なわれています。また、個々の技術も向上していると聞いています。
「年次有給休暇を取得することは悪であり、会社が損害を被ること」という意識とだいぶ乖離していないでしょうか?

最近、ワーク・ライフ・バランスという言葉がよく使われます。ワーク・ライフ・バランスは、「仕事と生活の調和」などと訳されています。「仕事と生活の調和」というと、なにやら労働者に優しい施策のように聞こえますが、内閣府の男女共同参画会議「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」の『「ワーク・ライフ・バランス」推進の基本的方向報告〜多様性を尊重し仕事と生活が好循環を生む社会に向けて〜(平成19年7月)』では、ワーク・ライフ・バランス理解のためのポイントとして3つ上げており、その1つに、ワーク・ライフ・バランスとは、「働き方を見直して仕事の効率が高まることで、時間的な余裕が生まれるとともに、仕事の成果も高まる」とあります。

ここから読み取れることは、ワーク・ライフ・バランスは、決して労働者に優しい施策ではなく、「働き方を見直して仕事の効率を高め、仕事の成果も上げろ」ということです。

働き方を見直し、仕事の効率を高め、仕事の成果を上げるためにも、年次有給休暇を消化しやすくすべきではないでしょうか?

3.年次有給休暇を取得するための提案

では、どうすれば年次有給休暇を取得しやすくなるのでしょうか?方法は、いろいろあるはずです。参考になるかどうか分かりませんが、私の事務所の取得方法をお話ししましょう。参考になれば幸いです。ちなみに私の事務所の年次有給休暇取得率は、99%です。

私の事務所では、病気などの突発的なこと以外は、単発での年次有給休暇を認めていません。つまり、長期年次有給休暇を奨励しているのです。かくいう私も実は夏季に3週間ほど休暇を取っています。いや、他に休みがない分、なにがあってもなんとしても取りたいのです!

年初に、全職員から長期年次有給休暇の予定を提出してもらいます。おおむね、みな10日から15日くらいの予定を提出してもらっています。10日未満の休暇は認めてないので・・・。業務や新規事業などの年間計画表を見ながら、問題がないか確認しつつ、予定が重なっている場合は、職員同士で調整してもらい、重ならないようにしています。

長期年次有給休暇の考え方は、こうです。
『年の初めから、自分の長期休暇を提出すれば、予定している時季に必ず休みが取れるよう自分で自分の仕事をマネージメントするようになるだろう。また、周りもその職員がいない時季をあらかじめ把握できるため、その職員がいなくてもきちんとフォロー出来る体制を整えることができるだろう。また、いないと分かっているので、いないことを前提に仕事を進めるようになるだろう。』と・・・。

長期年次有給休暇は、交通手段や旅行も早めに手配ができ、結構安くなります。早期申込みは割安です!でも、その分、キャンセルできないこともあります。そうなると、なにがなんでも絶対に、予定した時季に休暇を取らないと損をしてしまいます。職員も必死です。仕事のやり方を見直して仕事の効率を高め、仕事が確実に終わるように頑張ります。結果、成果も上がっています。

長期年次有給休暇を取得後、事務所に戻ってくると「とてもリフレッシュできました!」「さあ、仕事に頑張ろう!という気持ちになりました」「仕事が恋しくなりました(笑)」と、みな笑顔で仕事をバリバリこなしています。精神的にも体力的にもいいことづくしです。メンタルヘルス不全となるものも、1人もいません。

どうですか?参考になりましたか?
このコラムも、今回が最後です。いままで読んで頂き有難うございました。

来年の2月には、東京・大阪・名古屋で「非正規雇用者の労務管理実践〜パートタイマー・アルバイト・契約社員・派遣労働者への対応について〜」と題したセミナーが開かれます。そのときも私がおしゃべりしますので、よかったら聞きに来て下さいね。

では、またそのときに!

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執筆者略歴

奥村 禮司氏

新事業創造育成実務集団代表、社会保険労務士、CSR労務管理コンサルタント、労働法コンプライアンスコンサルタント。上場企業や外資系企業など多数の企業の顧問として、雇用管理・労務管理などの指導、相談に携わる。また、労働法の講演会や執筆などのほか、産業能率大学総合研究所兼任講師、株式会社きんざいの講師としても活躍中。

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