女性活躍推進コラム:第3回

企業が成長するための女性活躍推進の成功のカギ

03 「イクボス的マネジャー」から女性社員へのメッセージ『プロジェクト活動で修羅場を乗り越えろ!』

著者:高田 晴子氏

2015年6月3日掲載

第2回目は、「イクボス的マネジャー」に必要な3つのマインドとスキルについてご紹介しました。今回は、女性管理者候補者へのイクボス的マネジャーからのメッセージです。

プロジェクト活動のリーダーに

イクボス的マネジャーは、女性管理者候補の方々に対し、仕事を進める力をさらに磨くと共に、レジリエンス(失敗しても折れない心、再起する意識や力)を身につけていただきたいと考えています。そのために、管理者になる前に、リーダーとして逆境や修羅場を乗り越える体験をしてもらいたいと考えています。そこでお奨めするのが、プロジェクト活動におけるリーダー体験です。
なぜプロジェクトリーダーかというと、プロジェクト活動には、仕事の基本が全て詰まっているからです。そして、もう一つ期待したいのは、プロジェクトリーダーを務めることで、座学で身につけることが難しいリーダーシップなどの身体知を身につけることです。
プロジェクトは、目的に基づき明確な目標を設定し、決められ期間に成果を出すための進め方のデザインとマネジメントワークが求められます。管理者になるためには、この仕事全体を見通して取り組むことが大切です。また、少し高めの目標を設定して取り組むことで、さまざまな工夫が求められ、時には、予期せぬ事態が発生するものです。このような逆境や修羅場を体験することが、レジリエンスを高める機会になるのです。
また、このような逆境や修羅場では、家族の協力や職場内外の人脈の活用が不可欠です。あるいは新たに人脈を広げ、事態の収拾を図ることや、時には社内の政治力学を使うことも求められます。どのような状況であっても、“結果を出す”経験をしてもらいたいのです。

プロジェクトリーダー体験から学ぶ三つの事柄

では、ここで、イクボス的マネジャーが、女性管理者候補にプロジェクトリーダー体験から学んで欲しい三つの事柄についてもう少し詳しく紹介をしましょう。

1)仕事を上手に進めるための“プロジェクトマネジメントの方法論”を身につけよ!

プロジェクトマネジメントでは、仕事の管理サイクル(PDCA)を着実に回していく必要があります。多くの女性管理者候補は、これまでに主に“D”の部分で貢献することが仕事の中心になっていたのではないでしょうか。しかし、プロジェクトリーダーを務めることで、PDCA全体への働きかけを体験することが大切です。
このとき、プロジェクトマネジメントの方法論をしっかりと学ぶことがポイントです。プロジェクトマネジメントとは、確実に結果を出す仕事の方法論として生み出されたものです。少し言い方を変えるならば、目的的で、効果的・効率的に仕事を進める方法とそのスキルのセットなのです。
イクボス的マネジャーとしては、単に仕事ができるだけではなく、メンバーも自分もワークライフバランスをしっかりとできるようなリーダーとしてのスキルを身につけて欲しいのです。

2)仲間を巻き込むためのリーダーシップを身につけよ!

人は「なぜそれに取り組むのか」という根拠や背景情報がわかることで納得し、自分にとって意味のある行動をとれるのです(状況の法則: フォレット)。プロジェクトマネジメントでは、プロジェクトの立ち上げで、目的と目標の設定を行いますが、“何のために(目的)”この仕事に取り組むのか、そして“その出来栄えの水準(目標)”をどの程度に置くのかについて、メンバーからの支持を得られるような働きかけが大切です−つまり、目的と目標の設定によってメンバーを動機づけるのです。また、実行に必要な資源(ヒト、モノ、カネ、時間、情報 等)の確保など、リーダーとして各方面にこれらの調達のための根回しなどを行い、計画段階で周囲を巻き込む動き方についての力をつけてください。
実行のプロセスでは、“自分がやる”のではなく、“メンバーにやってもらう”のです。しかし、進捗に問題が発生したときには、解決のための方策を検討し、実行していくことが求められます。計画からのズレの把握とスケジュールの変更なども自分の判断で行わなければなりません。
イクボス的マネジャーとしては、プロジェクトリーダーの体験から得られた教訓を明確にし、自分の中に上手に仕事を進めていく方法を蓄積して欲しいと考えています。

3)管理者候補としての自信をつけろ!

「自信」とは心理学においては、「自己効力感」と「自尊心」の二つから生ずると言われています。自己効力感とは、「私にはできる」「この目標を達成できると信じている」という信念を示します。自尊心は、自己肯定感とも言われ「自分のことを価値ある存在として肯定的に捉える」心理状態のことです。これまでの仕事の中で培ってきた自信を、プロジェクト活動を通じて、より強固なものとするのです。
プロジェクトリーダーを務めると、「自分の感情が揺さぶられるような対人関係の出来事」「他人が原因のストレスフルな出来事」に直面します。このようなときにどのように対応するかが重要です。たいていの場合、衝動的に反応してしまうか、過去の行動パターンに導かれるかのどちらかです。しかし、自信を身につけている人は、あわてずに考えた対応をすることができます。つまり、プロジェクト活動で、擬似的な修羅場を経験し乗り越えることで、この自信を自分のものとして欲しいのです。
イクボス的マネジャーとしては、この体験によって「自信」に磨きをかけて欲しいのです。

以上、三回に渡って連載してきた女性活躍推進コラムは、企業がこれからも成長し続けるための女性活躍推進のカギをご紹介してきました。みなさまの取り組みの一助となりますことを願い、祈っております。

執筆者略歴

高田 靖子氏

学校法人産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 研究員。男女雇用機会均等法改訂(1999年)以来、企業内における女性社員活躍推進の支援に多く携わる。最近では、ダイバーシティ&インクルージョンおよびワークライフバランスをテーマとした快適職場づくりや、管理型マネジメントから支援型マネジメントへの転換等の組織開発に携わる。能力開発の分野では、働き方に磨きをかけ、仕事の質を高めることを念頭に、ポジティブ心理学をベースとして女性社員の「強み」の発揮やモチベーションアップ等の領域での活動に従事している。また、現在、「制約のある働き方と幸福感」を研究テーマとしている。

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