女性活躍推進コラム:第2回
企業が成長するための女性活躍推進の成功のカギ02 女性の部下をもつ管理者のための『「粘土層オジサン」から「イクボス的マネジャー」への道』
2015年5月28日掲載
『イクボス的マネジャー』とは
第1回目は「粘土層オジサン」についてご紹介させていただきましたが、第2回目は、女性部下が働きやすい環境や活躍できる場を与えていける「イクボス的マネジャー」についてご紹介しましょう。
まずは、ご自身の管理スタイルを以下のチェックリストを使って確認してみてください。自分自身が、よりどちらの傾向を強く持っているかをチェックし(左右のどちらかを選択する)、その合計個数で自分の全体傾向を把握してください。
合計 | 合計 | ||
---|---|---|---|
粘土層オジサン傾向 | 0 | イクボス的マネジャー傾向 | 0 |
さて、あなたは、粘土層オジサンでしたか、それともイクボス的マネジャーでしたか?粘土層オジサンについては第1回目を参照いただくこととして、ここではイクボス的マネジャーについて触れましょう。
まず、「イクボス」という言葉ですが、これは、育児に参加する男性(イクメン)部下や女性部下に理解の厚い管理者(女性管理者も含む)のことを指す言葉です。しかし、ここで使っている「イクボス的マネジャー」とは、男性部下の育児だけに限定せず、家族や親族などの介護を行っている部下、つまり何かしらの事情や制約を抱えた部下への支援的な働きかけのできる管理者のことを指しています。
まだまだイクボス的マネジャーは少数派ですが、これから求められる人財であることは世の中の流れからすると間違いありません。なぜならばワーキングケアラー(働きながら家族や親族などの介護を行っている人)は、既に290万人に上り、今後も増加していくことが間違いないからです。
そこで、ここでは、イクボス的マネジャーとなるためのマインドとスキルを紹介しましょう。現在女性の部下をもつ管理者には、特に役立つだろうと思います。
「イクボス的マネジャー」の3つのマインドとスキル
イクボス的マネジャーの特徴は、将来を見据え、性別や国籍などに拘らない柔軟な価値観を持ち、部下が持つ働く上での制約条件(介護や育児など)を丸ごと引き受けたうえで、職場のメンバー同士の連携を可能にする職場づくりをしていることです。加えて、それらのリスクや不確実性を含んだ環境を受け入れることを恐れていないということです。…このように書くと、何か特別な凄い人たちのように感じてしまいますが、この人たちに共通のマインドとスキルを理解することで、ぐっとイクボス的マネジャーに近づくことができるようになります。
3つのマインド
1)柔軟な心
職場のメンバーを一人ひとりの「個人」として尊重し、男性だから、女性だからという視点ではなく、「十人十色」の視点でとらえ、部下それぞれにどんな制約(育児や介護等)があるかを把握し、それを受け入れています。つまり、現実を柔軟に受け入れ、それを十二分に活かす柔軟な対応をしているのです。
2)協働で組織貢献をする意思
日頃からメンバーが自己開示しやすい雰囲気づくりをし、「どのようにしたらチームがより良くなるか」という共通のゴール設定をして話す場づくりをしています。急な欠員が出た場合でも、誰か一人に押し付けるのではなく、チームでフォローする組織づくりを進めています。
3)レジリエンス(再起する意識や力)
仕事には、上手くいく場合と失敗してしまう場合があります。イクボス的マネジャーは、部下が失敗した時こそ「この失敗を活かして次は頑張るぞ」という再起する意識(レジリエンス)を育てています。そのために、常に支援的な態度で部下と接しています。
3つのスキル
1)ポジティブシンキングとポジティブコミュニケーション
イクボス的マネジャーは、職場のメンバーの「強み」に目を向けることを心掛けています。部下が出来たことに注目し、感謝し、褒めることでメンバーを動機づけています。加えて、メンバーの「働くうえで大切にしているものは何か」を把握し、何気ない会話を交わすなかでもプラスの言葉を投げかけています。
2)ギャザリングとサポーティブ
イクボス的マネジャーは、職場でどんなことが起こっているのかを常に察知し、その情報を集めるギャザリングスキルに長けています。例えば、病気がちな子どもを持つ社員の行動に対して、他のメンバーからの不満が生じている状況を察知したならば、それぞれの言い分を想像し、理解しながらフォローしサポートしています。このような時のポイントは、「それぞれの言い分を尊重するためにはどんな方法があるか」という中立的で建設的な態度で臨み、メンバー同士が打ち解ける場づくりをすることです。
3)工夫とリスクテーキング
「イクボス的マネジャー」は、完璧に準備された組織などないことを理解し、一定のリスクを受け入れることができています。そのうえで、リスクに対する準備を行っています。想定できるリスク、例えば、子育てや介護を抱えている部下が急な休みを必要とすることなどは容易に想像できますので、日頃からメンバーと対応策を相談し、工夫をしています。加えて、想定外の事態に強い職場とするための工夫を行っています。
「イクボス的マネジャー」がもつ3つのマインドとスキルを身につけると、女性部下への対応だけではなく、これからの時代にマッチした管理者になることができます。次回は、「イクボス的マネジャー」から女性社員へのメッセージをお伝えしたいと思います。
執筆者略歴
高田 靖子氏
学校法人産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 研究員。男女雇用機会均等法改訂(1999年)以来、企業内における女性社員活躍推進の支援に多く携わる。最近では、ダイバーシティ&インクルージョンおよびワークライフバランスをテーマとした快適職場づくりや、管理型マネジメントから支援型マネジメントへの転換等の組織開発に携わる。能力開発の分野では、働き方に磨きをかけ、仕事の質を高めることを念頭に、ポジティブ心理学をベースとして女性社員の「強み」の発揮やモチベーションアップ等の領域での活動に従事している。また、現在、「制約のある働き方と幸福感」を研究テーマとしている。
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