どうする労働契約法の改正!そのポイントと対策:第1回

どうする労働契約法の改正!そのポイントと対策

01 労働契約法改正への対応1「雇止めの禁止」 “当然更新されると思っていたのに、なぜ更新されないのか!”と思わせるような更新拒否は、解雇
〜判例から考える「雇止め」とされない方法とは〜

著者:奥村 禮司氏

2013年1月31日掲載

契約期間の満了に伴う解約のつもりでも、自動的に、もしくは簡単な手続きだけでその契約を反復更新していた場合の解約は“雇止め”となり、解雇に相当します。このため“雇止め”は認められず、有期労働契約が締結又は更新されたものとみなされます。
この場合、いままで締結していた有期労働契約と同一の労働条件で有期労働契約の更新または締結の申込みを承諾したものとみなされ、有期労働契約が同一の労働条件で成立します。

労働契約法

(有期労働契約の更新等)

第19条

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

  1. 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
  2. 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

“雇止め”は、裁判事例から考えると、「雇用の常用性が高いこと」、「更新回数が多いこと」、「雇用の通算期間が長いこと」、「更新手続きがほぼ自動更新であること」、「雇用継続の期待を持たせるような言動があったこと」などの事情が認められれば、“雇止め”とされています。つまり、解雇となり、 “雇止め”が無効となるということです。

では、“雇止め”とされないためにはどうしたらよいでしょうか?
それは、“雇止め”とされることの逆の対策をとっていくということです。
「雇用の常用性が高いこと」とは、正社員と同様な業務を行っていることや、恒常的な業務を行っていることが挙げられます。このため、正社員と同じことはさせないこと、臨時的な業務を行わせることが必要です。あくまでも臨時的な業務であることなどを、労働契約書に明記しておくことも必要でしょう。更に言えば、有期契約社員は臨時的なものである限り、試用期間等は必要ないはずです。試用期間を設けないなどの措置も必要です。

「更新回数が多いこと」「雇用の通算期間が長いこと」に対しては、更新回数等の上限を設けたり、期間を限定したりしていくことが必要です。但し、更新回数の上限や期間の限定は、契約途中で突然設けると “雇止め”とされる可能性が高いため、最初の契約時に上限や期間の限定を設ける必要があります。

「更新手続きがほぼ自動更新であること」については、ただ単に契約書に記名押印させるだけで更新していたことを改め、前契約期間の総括をし、評価・期待表明をし、その期待に応えられる者のみ契約を更新していくといった更新手続きを厳格化させる対策が必要です。
そして、「雇用継続の期待を持たせるような言動があったこと」に対しては、『頑張れば長く働けるよ!』などの雇用継続の期待を持たせるような言動はとらないことなどが必要です。
これらは、どれか1つを採用すれば、“雇止め”とならないということではありません。上限を設けた上で更新時の手続きを毎回厳格化していくなど、いくつもの対策を相互に絡めていくことが必要です。このような対策を講じれば、“雇止め”とはならないでしょう。

また、別の対策として、求める能力を明確にし、それぞれ労働契約書に明記しておくということも考えられます。平成23年有期労働契約の関する実態調査(厚生労働省)の“雇止め”の理由を見ると、事業所規模1000人以上の欄では「労働者の勤務態度の不良」37.7%「労働者の能力不足」34.0%となっています。

例えば、「労働者の勤務態度の不良」については、どのような勤務態度を求めているのか、逆にどのような勤務態度をとったときに更新をしないのかを労働契約書に明記しておきます。「労働者の能力不足」については、どのような能力を求めているのかを明確にし、労働契約書に明記しておきます。ただ単に「勤務態度の不良」「能力不足」だけでは、“雇止め”できません。しかし、労働契約書に明記してある勤務態度や能力に達していなかったとなれば、基準が明確であり、労働契約違反となりますので、“雇止め”とはならないでしょう。

いずれにしても、このような対策を日頃からとっておかないと、需給調整のために有期労働契約の社員やパートタイマーを“雇止め”するなどということは、絶対に認められないでしょう。有期労働契約は、需給調整のために存在する訳ではないのです。

執筆者略歴

奥村 禮司氏

新事業創造育成実務集団代表、社会保険労務士、CSR労務管理コンサルタント、労働法コンプライアンスコンサルタント。上場企業や外資系企業など多数の企業の顧問として、雇用管理・労務管理などの指導、相談に携わる。また、労働法の講演会や執筆などのほか、産業能率大学総合研究所兼任講師、株式会社きんざいの講師としても活躍中。

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