どうする労働契約法の改正!そのポイントと対策:第2回

どうする労働契約法の改正!そのポイントと対策

02 労働契約法改正への対応2「有期労働契約社員の無期労働契約社員化」5年で無期労働契約、どう対応する!?〜第2正社員・第3正社員として採用する〜

著者:奥村 禮司氏

2013年2月13日掲載

有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、有期契約社員からの申込みにより、期間の定めのある労働契約を期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みが設けられました。もちろん、この有期契約社員には、パートタイマーや60歳以上の有期契約社員も含みます。
このため、5年を超えて反復更新されている有期契約社員から申込みがあったにもかかわらず、無期契約社員に転換させないことは違法になります。但し、有期労働契約と有期労働契約の間の期間が6ヵ月以上ある場合は、有期労働契約が反復更新されていないものとして、違法とはなりません。これをクーリング期間といいます。

労働契約法

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

第18条

同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

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当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が6月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が1年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

期間の定めのない労働契約に転換させるという規定は、無期労働契約へと期間の定めのみを変更するものです。しかし、「別段の定め」をすることにより、期間の定め以外の労働条件を変更することも可能です。この「別段の定め」とは、労働協約、就業規則や個別合意(期間の定めのある有期契約社員と会社との間の個別の合意)のことをいっています。
また、期間の定めのある有期契約社員は、一般的に勤務地や職務が限定されているなど労働条件や雇用管理が、いわゆる正社員と大きく異なっています。このため解雇については、こうした限定等の事情がない正社員と同列には扱われることにならない、とされています。

では、この期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みについて、どのように対応していけば良いでしょうか?

それは、契約当初に「更新は最長でも5年とする」として、5年を超えての契約更新を絶対にしないということです(注1)。例え、素晴らしい人材でも更新はしません。例外を作れば「何故、あの人は更新されて、私は更新されないのか!」といわれてしまいます。しかし、ここで素晴らしい人材を逃がすわけにはいきません。会社の損失です。また、「更新は最長でも5年とする」とされた有期契約社員は、5年後の不安がでてきます。モラルにも影響してきます。

そこで、5年後に「当社は、通年で第2正社員・第3正社員等を募集しています。採用試験を受けてみませんか?」と契約社員全員に伝え、採用試験を実施し、素晴らしい人材のみを第2正社員・第3正社員として採用します。最長でも5年とした契約のラインと、第2正社員・第3正社員のラインは、あくまでも別のものとすることが大事です。最長でも5年とした契約のラインの延長とみなされたらアウトです。

採用は会社の自由です。自由が基本原則です。どんな理由で採用しようと、どんな理由で不採用としようと構いません。つまり、「なんとなく気に食わない」という理由でも構わないのです。

有期労働契約が5年を超えて反復更新され、申込みされれば、どう転んでも期間の定めのない労働契約に転換させられてしまいます。期間の定めがないわけですから、正社員とは違う、第2正社員・第3正社員のようなものが登場してきます。そうであれば、当初から会社主導で第2正社員・第3正社員の処遇を決め、それに募集してもらい、素晴らしい人材のみを採用するという方法、これが「有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、有期契約社員からの申込みにより、期間の定めのある労働契約を期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み」への対応としてベストではないでしょうか。

5年なんて、あっという間です。いまから対応策を考え始めるべきでしょう。是非、第2正社員・第3正社員について考えてみて下さい。

  • 注1・・・5年内の契約更新は、前回で記載した雇止めにならない工夫が必要です。

執筆者略歴

奥村 禮司氏

新事業創造育成実務集団代表、社会保険労務士、CSR労務管理コンサルタント、労働法コンプライアンスコンサルタント。上場企業や外資系企業など多数の企業の顧問として、雇用管理・労務管理などの指導、相談に携わる。また、労働法の講演会や執筆などのほか、産業能率大学総合研究所兼任講師、株式会社きんざいの講師としても活躍中。

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