【セブン銀行×電通総研】顧客・ITベンダーの枠を超えた、若手社員の交換留職プロジェクトを実施

左から、電通総研 金融ソリューション事業部 DXビジネスユニット デジタルバンキングビジネス部長 和田祐一、同部 名取達哉、セブン銀行 金融ソリューション部 チャネル・API開発グループ 眞下太一氏、同グループ 関根幹太氏、同グループ長 尾嵜由香氏

2023年秋。セブン銀行と電通総研(当時 電通国際情報サービス(ISID))は、両社の若手社員を対象に、顧客・ITベンダーの枠を超えて、互いの会社の事業や業務理解促進のため「交換留職」プロジェクトを実施しました。

セブン銀行から2名、電通総研から1名が選出され、約1か月半にわたり、研修派遣のような形で週3日を留職先の会社で、残りの2日を自社で働きました。本プロジェクトでは、3名が普段とは立場を変えてシステム開発案件に取り組んだり、周りの社員も彼らとコミュニケーションを深めたりと、新たなパートナーシップを築きました。

「留職をしたことでベンダー側の苦労や考えがよくわかり、なにをどう伝えればよりよい開発につながるかが見えた」「システム開発の面白さを実感し、キャリア観が変わった」、こう語るセブン銀行メンバーの関根幹太氏と眞下太一氏。「銀行が考えるシステムの全体構想や、そこに至った背景や思いに触れたことで、普段の顧客からの相談や依頼に対してより深く考えられるようになった」と語る電通総研メンバーの名取達哉。交換留職に参加した3名と、その上長であるセブン銀行の尾嵜由香氏、電通総研の和田祐一に、今回の取り組みについてたっぷり振り返ってもらいました。

セブン銀行×電通総研の交換留職が実現した背景とは?

─ 資本関係のない銀行とベンダーが互いの社員を“留職”させるという今回の取り組み。とても革新的で、珍しい施策ですよね。どのような経緯で交換留職を行うことになったのでしょうか?

尾嵜由香氏(以下、尾嵜):セブン銀行では、従来の外部委託によるシステム開発だけでなく、内製化にも取り組んでおり、その範囲は年々拡大しています。さらに近年は、「ITドリブン企業を目指す」といった方向性を明確に打ち出して、全社的にDXを推進しており、DX人材の育成にも力を注いでいます。教育プログラムの提供や、PowerPlatformを活用したアプリの開発など、さまざまなスキルアップ施策を実施しつつ、社員のキャリアアップの道筋などについても大きく見直しをしているところです。

こうした背景もあって、ぜひ人材育成の領域で、新しいことに挑戦したいと考えていたところでした。ちょうどその時、セブン銀行と電通総研の両トップの間で「交換留職を実施しよう」という話が挙がったと聞いて「ぜひやってみたい」と感じました。

 

和田祐一(以下、和田):当社の場合は、ちょうど電通国際情報サービス(ISID)から電通総研へと社名が変わろうというタイミングだったことが大きな後押しになりました。シンクタンク機能・コンサルティング機能が加わり、電通総研という名称になって、これからは単なるSIerではない、より広い視野での仕事が求められるようになる。お客様側の視点やコンサルタント的な思考が求められるようになるだろうと感じていたので、交換留職はそれらが得られる素晴らしいチャンスだと思いました。

入社1~2年目の新卒社員をメンバーに選んだのは、成長に期待したいと考えたからです。変わっていく電通総研、成長するセブン銀行を支えるのは若い力です。両社のこれからを作る人材に、ぜひこの貴重なチャンスを生かしてほしいと思いました。

 

新しいことに意欲的。互いの気持ちが重なり留職が始動!

─ なぜ数ある会社の中から、お互いを留職のパートナーに選ばれたのでしょうか?

和田:我々がはじめてセブン銀行と取引をさせていただいたのは、今から10年以上前のこと。インターネットバンキングサービスに関するシステムの保守や機能向上に関する取り組みからお付き合いが始まりました。そこから、クラウドを活用したスモールスタート基盤の構築をはじめ、さまざまなプロジェクトでご一緒しています。
お付き合いが長いということもあると思いますが、我々をパートナーとして尊重してくださり、いい意味でカジュアルで、そして変な壁がない。また、新しいことに意欲的なトップの気質や社風も似ているところがあると感じています。セブン銀行となら、よい形でチャレンジができそうだと思いました。

尾嵜:おっしゃる通りです。私の上司が「本場のUXデザインを学びたい」とアメリカに渡ったときも、電通総研、DENTSU SOKEN USA、Dentsu Innovation Studioが総力を結集して支援してくれ、その知見を持ち帰って私たちに文化として定着させるところまで伴走してくださいました。なにもわからないなかで雲をつかむような相談をしても、絶対に「無理です」とは言わず、なにか手立てを考えてくれる。新しいことを始めたいと思ったときに、とても相談しやすい会社なんですよね。

期間は約1か月半。まずは電通総研社員がセブン銀行へ

─ 今回の交換留職について、具体的な内容をお教えください。

名取達哉(以下、名取):先に私がセブン銀行に1か月半留職して、次にセブン銀行の関根さんと眞下さんが電通総研に留職する、という、入れ替わりのような形で実施しました。留職期間中は、週3日、先方のオフィスに出社して、残りの2日は自社に出社していました。

 

─ セブン銀行さんはどのようなプログラムを用意して、名取さんを迎え入れたのでしょうか?

関根幹太氏(以下、関根):主に3つのプログラムを考えました。1つ目が、「電通総研に担当していただいているDBS以外のシステムを見てもらう」ということ。「セブン銀行のすべてのシステムを見ていただく」というぐらいの気概で、アプリのミーティングやコンタクトセンターシステムの勉強会に参加してもらいました。

2つ目が「業務部の仕事に触れてもらう」ということ。よく電通総研から「このシステムのそもそもの狙いや意図を知りたい」と言われることがあり、恐らくそこがベンダーから見えにくい部分なのだろうなと感じていたため、業務部のミーティングやアシストに参加してもらう機会を設けました。

3つ目が「リレーションの強化」です。私たちも名取さんも、新型コロナウイルスの渦中にそれぞれの会社に入社しました。コミュニケーションはテキストがメインで、お会いしたことがない人だらけという状態。実は名取さんのことも、アイコン画像とチャットでしか存じ上げず、勝手にベテラン社員の方だと思っていたぐらいなんですよ(笑)。そのくらいつながりが希薄で、中々踏み込めない気持ちを持っていましたので、とにかく仲良くなろうと。当社のベテラン社員を交えたランチや飲み会などにたくさん参加していただきました。

 

若手メンバーだからこそ悩みを共有し刺激し合えた

─ 電通総研側はどのようなプログラムを用意して、セブン銀行の皆さんを迎え入れましたか?

名取:前半はできるだけ具体的に開発案件を見ていただくようにして、後半は仕事の進め方や心構えのようなものを当社のベテラン社員から、私も一緒になって教わるようなプログラムを考えました。

このような内容にした理由は、私が先にセブン銀行に伺い、関根さん、眞下さんと、悩みを共有していたからです。私たち3人全員が「長期に渡るシステム導入案件は全体像が見えづらい」「経験が浅いこともありなかなか自信が持てない」と悩んでおり、システム開発のプロセスをただ共有するだけでなく、ベテラン社員から具体的な業務の進め方に関するヒントを得ることが必要だと考えました。

─ 実際に留職をしてみて、どのような学びや気付きがあったのでしょうか?

関根:私は、システム開発の見方がガラッと変わりました。セブン銀行の新卒は、全員、総合職として入社します。どこの部署に配属されるかわからず、そこからシステム部に所属することになったため、私自身が確固たる軸が持てていないということが悩みでした。仕事の全体像やシステム開発について、きちんとわかっておらず、留職するまではベンダーの苦労を理解せずに浅い会話をしていたように思います。当たり前のように簡単に「この機能を追加してほしい」と言い放つこともよくありました。ところが電通総研に留職に行って、それがどれだけ他のシステムに影響を与えるのか、たった一つの機能追加にどれだけの労力がかかるのかが本当によくわかりました。この経験によって、コミュニケーションの取り方、情報提供の仕方、見通しの立て方、様々なことが変わったと思っています。

眞下太一氏:私は入社1年目なので、メンターの関根さんについて行きつつも、「余計なことは考えずに、とにかく業務をともにする電通総研の皆さんと仲良くなろう!」という意識で留職に参加しました。最初はそのような気持ちでしたが、電通総研の皆さんの業務内容や働き方を見て、関根さんと同じように、価値観が大きく変わったように思います。開発の細かな部分やベンダー側の苦労、膨大なシステム構成図などを見て、これまで見えなかったことが見えるようになって開発の面白さややりがいを感じるようになったのです。「もっとシステム開発を知りたい」「ITの分野で自分のキャリアを積み上げていきたい」と強く思うようになりました。

 

名取:私も、非常に多くのことを学びました。私たちベンダーは要件を受け取って、それをもとに開発を進めます。その上流にあるお客様の思いや全体像等の基の部分はなかなか見えません。留職してミーティングに参加したりプロジェクト計画書を作らせてもらったりする中で、大きな考え方や要件が詰められていく過程を学ぶことができました。

あとはセブン銀行の方々と仲良くなれたということも価値ある収穫でした。同じオフィスで対面して雑談したりランチに行ったりすることで、皆さんのバックグラウンドやお人柄が見えた。以前はコロナ禍ということもあって少し距離を感じていたのですが、現在は距離が縮まったことで「心理的安全性」と、セブン銀行の期待に応えなければという「良い意味での緊張感」が生まれました。

今後は若手発のビジネス開発へとつなげたい

─ 留職メンバーの上長である尾嵜さん、和田さんから見ていかがでしょう? 留職の感想や今後についてお聞かせください。

尾嵜:関根や眞下が言うように、「マインドが変わったな」と感じています。そしてなにより、総合職として入社した若手が非常に早い段階で、システム開発を「面白い」と感じてくれたことに手応えを感じています。自社にはないカルチャーや人と直接交わり、大いに刺激を受けたのでしょう。この取り組みが、会社の垣根を超えた若手発のビジネスやサービスにつながるといいなと思っています。若手の発想で、今後も両社を盛り上げてほしい。これからもぜひ交換留職を続けていきたいですね。

 

和田:冒頭で「若手の成長に期待したい」とお話したのですが、まさに「若手が成長する取り組み」になりました。顧客理解、業務理解が進み、発言も増えて、仕事が自分事になってきているのだなと感じています。

セブン銀行は、全国各地のセブン-イレブンや空港・駅、商業施設などに、2万7,000台以上のATMを設置する、いわば社会インフラを支える企業です。ATMは、機械からお金が出てくるという驚くべきデバイスであり、絶対に嘘をつかず、セキュリティも信頼性も高いです。また少子高齢化社会の中で、大きな可能性を秘めていると考えます。セブン銀行のATMと電通総研の自治体向けサービスを組み合わせれば、これまでにない新たな市民サービスが提供できるのではないかと思います。
今後はぜひ一緒に、ATMを基点にした社会課題の解決などに取り組めると嬉しいですね。そして、交換留職という取り組みが、そのような新しい挑戦の、一つのブースターとなってくれればいいなと思っています。

 

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セブン銀行の公式noteでも本取り組みについて紹介しています。

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