なぜ、ISIDはAI開発に取り組むのか? OpTApfの開発編

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2020年5月、ISIDはAIを搭載した3種類の自社製品を発表しました。大量の文書をAIで分析し自動分類を行う「TexAIntelligence(テクサインテリジェンス)」、図面の記載内容の識別・チェックを行う「DiCA(ディーカ)」、AIモデルをユーザー自身が構築・運用できる「OpTApf(オプタピーエフ)」です。
「これまで数多くの企業にAIのソリューションを提供してきましたが、業務課題の選定からモデル開発、学習、評価というステップを繰り返して精度を向上させるのに、時間がかかっていました。お客様により早く成果を実感してもらうためにはどうすれば良いのか、常に考えていたのです」と、AI製品の開発を主導したXイノベーション本部AIテクノロジー部 深谷勇次は言います。
深谷をはじめとするAIの技術メンバーが考えたのは2つのアプローチ。1つは、特定の業務課題に特化し、迅速な導入を可能とするAI製品の開発。もう1つは、顧客の業務担当者自身がAIモデルを構築し、運用することができる製品の開発です。日々移り変わる先端技術へのキャッチアップ、従来のソフトウエアとは違う開発手法、多くの困難が立ちはだかった製品開発の日々を支えたのは、ISIDが持つお客様の業務知見とAIの技術力、そして「AIを本当に役にたつものとする」という強い思いでした。

OpTApfとは

OpTApf は、AIの専門知識がなくても、高精度なAIモデルの構築・運用ができるソリューションです。不具合判定・需要予測・画像による異物検出など様々な目的のAIを開発出来ます。
ISIDのデータサイエンティストのノウハウを元に、「データの入力」「データの確認」「大量のAIモデルの構築と最適なAIモデルの抽出」の3StepでAIモデルの構築~運用までを支援します。

作りたいのは専門知識がなくてもAIモデルの構築ができる製品

「OpTApfの開発のきっかけは2015年まで遡ります」と開発を指揮してきたXイノベーション本部AIテクノロジー部 深谷勇次はいいます。ITコンサルタントとして、主にマーケティングのデータ分析の領域で活躍していた深谷がISIDに入社したのは今から5年前。「ちょうどAIブームがきており、ISIDがAI専任組織を立ち上げるという話がありました。以前よりAI開発に携わりたいと思っていた私は、その話を聞いてISIDに入社することを決めたのです」(深谷)。そして2016年に立ち上がったのが、現在のAIテクノロジー部の前身となるデータサイエンス部でした。
「当時は、お客様の課題をお伺いし、AIを開発することはもちろん、AIで何かできることはないかという漠然としたご相談も多く、お客様と一緒になって業務課題の選定から行っていました」

一方で、「このアプローチだと1件1件の解決に時間がかかり、多くのお客さまの期待に応えるのは難しい」と課題を感じていたと言います。 「AIの開発は、モデルを構築してもデータを学習させるまで精度が分からないという難しさがあります。お客様毎に業務課題の選定からモデル構築、学習、評価というステップを繰り返していては、AIの効果を実感してもらうまでに時間がかかりすぎます。より早く成果を実感してもらうためにはどうすれば良いのか常に考えていました」

深谷が考えた解決方法は、お客様自身でより簡単にAIモデルの構築や運用を行うことのできる製品の提供。「AIの精度は、お客様が準備するデータに依存することに加え、お客様がAIに求める精度は、一定ではありません。例えばある業務では80%の精度で問題ないが、ある業務では99%の精度が求められることもあります。これらはすべてお客様が決めること。つまり、AIを利用したいと考えているお客様にとって最も良いことは、“お客様自身で、AIモデルの構築~運用が実現出来ること”でした」。 とはいえ、ISIDで一からこのようなコンセプトの製品を作るのは不可能だと感じていたともいいます。

OpTApfの開発を主導してきた深谷勇次

お客様自身でのAI活用を促進

2016年頃から海外パッケージの調査や、社内でのAI技術の研究開発を繰り返します。そんなときに出てきたのが、自動機械学習機能が内包されたマイクロソフトのAzure Machine Learning(以下Azure ML)でした。
「Azure MLを使ってみると私が考えていた“誰にでもAIのモデル開発ができる”というコンセプトに近いことが分かりました。これをベースにすることで、ISIDが“お客様自身でのAIモデルの構築・運用“を実現するプラットフォームを提供することが出来ると確信しました」

約1年間の検証・開発を経て、2020年5月、OpTApfをリリースします。

実際にお客様に使っていただき、嬉しい声も届いているといいます。 「ITの専門家でない方が、OpTApfを使って毎月の需要予測を行っています。さらに予測精度を高めていくために、学習データを増やし再学習する作業も、自ら行っているそう。少しずつAIの活用領域を広げようと、お客様自身がOpTApfの活用方法を工夫してくださることも増えました。まさに私の目指していたことが実現しようとしています」

技術の伝承をAIに託す

OpTApfはまだ世に出たばかり。既存機能の改良や新たな技術の搭載など、次のバージョンアップに向けてすでに研究開発が進んでいます。深谷は更なる夢の実現に向けてこう締めくくりました。 「データから法則を導き出すのはAIモデルですが、そのAIモデルに学習させるデータを作る、データに教師ラベルをつけるのは現場のエキスパートです。つまりOpTApfのような仕組みを利用すれば、知見を持った人がそれを残す仕組みを自分で作ることができるのです。その道のエキスパートが技術の伝承をAIに託す——そんな時代を目指して、OpTApfの開発に邁進していきます」(深谷)

  • Azure Machine Learning:米国 Microsoft Corporationが提供する、企業向け仕様の機械学習サービス。機械学習モデルをよりすばやく構築、トレーニング、デプロイでき、信頼のおける AI を実現できるよう設計されている。

2020年12月更新

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