三菱UFJ信託銀行株式会社

Microsoft Dynamics 365にオルタナティブ資産の情報を集約
投資ノウハウの蓄積と情報共有の高度化・効率化、ポート一体運営強化を目指す

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三菱UFJ信託銀行株式会社 プロジェクトメンバーの皆さん

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の一員として100年近くの歴史を有し、新たな信託銀行ビジネスの創造にチャレンジを続ける三菱UFJ信託銀行株式会社 。同社ではロンドン・ニューヨークなど4つの海外拠点と連携し、安定収益基盤確保を企図したグローバル分散投資を展開しています。 株式や債券といった「伝統的資産」の運用と両輪で進めているのが、昨今市場でも注目を集めている「オルタナティブ資産」(非伝統的資産)運用。同社クレジット投資部は2002年に発足以降、中長期的な相場見通しに基づく国内外の社債、証券化商品、プライベートエクイティ、不動産などへの投資を進め、足元ではDXを積極的に活用した投資・モニタリングプロセスの高度化に取り組んでいます。

オルタナティブ資産は伝統的資産に比べ、公開情報・定量情報が少ないことに加え、一部を除き委託運用が主となるため、定性面から運用会社の手腕を評価する必要があります。そのため、投資判断にあたっては高度な専門性と知見・経験が求められ、投資ノウハウの属人化やポートフォリオとしての一体運営に課題を抱えていました。そこで、2022年4月より着手したのが、同部及び海外4拠点が保有する全オルタナティブ資産情報を一元管理・共有するためのプラットフォーム開発です。これまでさまざまな形で分散していたデータやノウハウをMicrosoft Dynamicsをベースとしたシステムに集約。投資ノウハウの蓄積と情報共有の高度化・効率化、ポート一体運営強化を目指したプロジェクトをスタートしました。

約1年という短期間でのリリースを目指した本プロジェクトにおいて、確実な進行とシステム構築を実現するためのパートナーに選ばれたのが電通総研です。プロジェクトマネージャーを務めたクレジット投資部ファンド課の酒本真由子氏は、「ノウハウを部内および海外拠点との間で共有できる体制を構築し、誰でも自由にオルタナ情報へのアクセスが可能となったことから、ノウハウ・情報の利便性が格段に上がりました。加えて、バラバラに管理されていた情報に横串をさし一元管理・可視化することで、プロダクト横断の評価・管理が可能となりポート一体運営の強化に繋がっています。今後はユーザーの声を反映しながらブラッシュアップを続け、より一層投資プロセス高度化に資するプラットフォームにしていきたい」と、さらなる活用に向けた展望を語りました。

専門性の高い投資ノウハウの蓄積・共有とオルタナポート一体運営を目指すプロジェクト

「当社の安定的な財務基盤を支え、グローバル分散投資の柱となっているのが、伝統的資産への投資を手掛ける『証券投資部』と、オルタナティブ資産を扱う『クレジット投資部』です。オルタナティブ資産は、短期間での価値変動があまりないため『低流動性資産』とも呼ばれ、長期的な相場感に則った運用が行われます。また、投資判断にあたっては入手できる定量データが限られ、定性情報から判断する部分も多いため、ベースとなる高い専門知識や投資ノウハウが必要です」。酒本氏は、自身の業務の難しさについて、そう説明します。

オルタナティブ資産運用の多くは運用会社へ資金を預ける「委託運用」という投資手法をとります。委託する形で進められる同投資の判断基準は、「委託先の運用会社がいかに安定的に高いリターンを上げられるか」。その判断にあたっては過去のファンドパフォーマンス(トラックレコード)のみならず、運用会社の組織体制や投資戦略等の定性面からリターンの再現性を評価する必要があり、定量データから判断できない部分が多い分、投資ノウハウが属人化しやすいと言います。加えて、投資対象プロダクト(社債、証券化商品、PE、不動産等)ごとの専門性が非常に高く、情報共有基盤もなかったことから、担当者レベルでは「担当外プロダクトの市況・投資行動の把握が難しい」という課題がありました。しかし、ポートフォリオ運用においては、すべてのプロダクトを俯瞰的に見た上で最適なアロケーションを追求する必要があります。また、金融市場全体の把握や担当プロダクトの投資判断にあたっても他プロダクトの市場動向は有益です。

こうした状況の中で、酒本氏はプラットフォーム開発について、「これまでも当部では、プロダクト横断で統一的な尺度で運用会社を評価するための『統一評価軸』を導入する等、担当者が変わっても同じ投資判断の質を維持できる様、また異なるプロダクト間でも横串を通した評価ができる様、さまざまな施策を講じてきました。本プラットフォームは、これまでの取り組みを軸に、投資ノウハウの共有、ポート一体運営の更なる強化を図る上で非常に重要な基盤となります。また、ポートフォリオ規模の拡大に伴い業量が逼迫する中で業務効率化という面でも高い期待が寄せられていました」と明かしました。

「システム実装力」と「金融業務への深い知見」を掛け合わせ、
短期間のシステム構築を実現

「CX領域のシステム構築において高い技術力を持ったチームと、金融の知見豊富なチームの両方が入り、電通総研内部で情報共有や認識のすり合わせをしながら進めてもらえたことが、円滑なプロジェクト推進の力になりました」

市場デジタル推進部 デジタルソリューショングループ 上級調査役 木村俊洋氏

前述の通り、「投資ノウハウの共有」と「オルタナポートの一体運営強化」を目指した本プラットフォーム開発。その基盤としてMicrosoft Dynamics 365が選ばれたポイントは柔軟性にありました。
「このプラットフォームには多彩なデータテーブルがあり、紐付けの構成も柔軟でした。ページレイアウトの作り込み方やデータ編集の仕方などさまざまな面において拡張性が高く、他業務でも使用しているマイクロソフト製品と同様の使い勝手で、直感的に操作性がわかる点も魅力でした」(酒本氏)。

また、約1年の短期間でMicrosoft Dynamicsの特徴を生かしたプラットフォームを構築するにあたり、電通総研を開発パートナーに選んだ理由を酒本氏は次のように話します。「開発期間の短さに加え、部内横断のプロジェクトとして要件をまとめていく難易度の高さにプレッシャーを感じていました。以前、ある定量データ分析ツールの開発を電通総研に担当してもらった際、堅確な期日管理の元、時には私たちへ積極的な働きかけを通し着実にプロジェクトを遂行していただきました。そこに大きな安心感と信頼感を覚えていたため、再度ご協力をお願いしたいと思いました」。

システム開発を担当した市場デジタル推進部の木村俊洋氏は、開発中の電通総研を次のように振り返ります。「電通総研の強みはCRMやSFAを専門にしているデジタルエンゲージメントセンターと、金融系システムを専門に扱う金融ソリューション事業部があること。Microsoft Dynamics 365のソリューションへの理解や実装力の高さと金融業務への深い知見を掛け合わせて、ワンチームで対応してくれたことは大きな力になりました。金融チームに伝えれば投資運用の細かい仕様を理解した上で、システムにどう反映させるかを社内で相談して進めてくださった点は非常に助かりました」。

開発中には、銀行ならではのセキュリティ管理の厳しさから、システムで使える機能が制限されてしまうといった課題も。しかし、システム部門やコンプライアンス部門との調整を重ね、同社として初のグローバル連携を伴うクラウド型のプラットフォームが完成しました。

木村氏はその意義について、「当社では海外拠点とも密接に関わりながら業務を進めており、現地から得られる情報は非常に貴重です。これまではメールでのやり取りが多く、分散した情報を探す手間がありましたが、それが一つのプラットフォームに集約され蓄積されることになりました。社内のコンセンサスを取り、セキュリティを担保していくのは大変でしたが、電通総研から技術面でのアドバイスももらいながら、海外とリアルタイムに情報を共有できるシステムが完成したのは大きな成果です」と評価しました。

グローバルに投資ノウハウの共有が可能に!
今後もプロアクティブな提案に期待

「要望に対して真摯にご対応いただき、かつ、提案にはシステム開発専門家としてのこだわりもしっかりと感じられたため、非常に信頼出来ました。さまざまな方法を調べ尽くして、ご提案いただいていることが伝わるので、こちらも腹落ちでき、自信をもってプロジェクトを推進できました」

クレジット投資部ファンド課 酒本真由子氏

実際にシステムを利用するユーザー主導のもと開発が行われたことは、本プロジェクトのユニークな点です。困難はありながらも、「ユーザー側の私たちが、自らの希望を直接伝え反映しながら開発を進められたことでユーザビリティの高いプラットフォームができました」と酒本氏は表情をほころばせます。

「このプラットフォームは部内横断で利用することから、構想段階からできるだけ多くの意見を反映し、コンセンサスを得ながら進めることに注力しました。各課間で既存業務の横串をさしつつ、それぞれのプロダクト特性も反映する必要があったことから、業務を深く理解しているユーザー部主導だからこそできたように感じます。本開発は一部アジャイル開発の要素もあったため、実際の画面を見ながら開発を進めることができました。利用場面をイメージしつつ、操作性も確認しながら進められた点は非常に有効でした。また、要望をお伝えすると、電通総研からは内部でしっかりと検討を重ね納得感を持ったご提案をいただきました。私達はご提案いただいた選択肢の中から判断していけば良かったので、技術的な難しさを感じる機会は少なく進めやすかったです」(酒本氏)

「今回はユーザーと電通総研を含む現場の人間が直接話せたので、やりたいことがダイレクトに伝わりました。通常のシステム開発はユーザーの話が開発者に伝わるまでに何人もの人間を経由するので、連携性とスピード感が他の案件と全く違ったのだと思います」。木村氏は本プロジェクト成功の理由をそう分析します。

同プラットフォームは2023年4月から運用を開始。クレジット投資部・海外拠点内に留まらず、社内からも高い評価を得ているそうです。「各担当者からはアクセスできる情報量が格段に増え、担当外のプロダクト情報にも容易にアクセスできる様になったことからポート一体運営という意識が高まった、過去の分析、他拠点の分析を参照し易くなったため、分析力向上・ノウハウ継承に繋がっているとの声が届いています。キーワードを打ち込めば関連情報が全て表示され、情報同士の新たなつながりや気づきを得るといった使い方も実現できました。また、グローバルに投資ノウハウの共有を可能にし、当社のオルタナ運用高度化に資する取り組みが評価され、社内の賞も複数受賞しました」(酒本氏)

今後に向けて、木村氏は「市場部門以外でも、例えばミドルオフィスや受託財産部門など他部署との情報連携ができると、全社的に使いやすいものになると考えています」と部門に留まらない拡張利用に言及。また、酒本氏は引き続きDXを活用しながらの投資運用の高度化を目指したいと前置きした上で「過去に電通総研のサポートを受けながら構築した定量分析ツールとの融合やグループベースでの展開の可能性も含めて更なる活用方法を模索していきたい」と話しました。

今後電通総研に期待することとしては「様々なプロジェクトを通し我々の業務を深くご理解いただいていると同時に、常にデジタル技術の最先端に触れていらっしゃると思うので、当社業務に照らし新たなDX技術を使いながら何ができるか、プロアクティブなご提案をいただけるとありがたい」(酒本氏)

三菱UFJ信託銀行株式会社 会社概要新しいウィンドウで開きます

社名
三菱UFJ信託銀行株式会社
本社
〒100-8212 東京都千代田区丸の内1-4-5
設立
1927年3月10日
資本金
3,242億円(2023年3月末)
従業員数
6,218人(2023年3月末現在)
事業内容
リテール部門、法人マーケット部門(資産金融事業、不動産事業、証券代行事業)、受託財産部門、市場部門等
  •  記載された会社名・商品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
  •  記載情報は取材時(2023年11月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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