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東京証券取引所による
「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析

コンサルタントの眼

連結決算BPOシリーズ~連結決算BPOが各企業で検討されている背景~

※連結決算BPO・・・連結決算業務の一部または全部をBPOベンダーに委託すること

様々な企業の連結会計業務を支援している中で、連結会計組織に求められる役割が年々大きくなっていることを感じます。従来の制度連結業務に加えて、管理連結業務(月次連結、予算・見込・中計業務、多軸分析業務等)に連結会計組織が今まで以上に貢献することが求められています。
そのような状況の中でも、自社の人手は増えず、働き方改革で労働時間の削減が求められているため、連結会計業務の効率化、BPOに対するニーズはとても強く、このようなニーズに対応するために、連結決算BPOを検討され、弊社にご相談いただく企業が増えてきています。特にここ1年でご相談件数は急増しており、各企業の熱の入れ方が一段階上がって来ているように感じています。

今回は、なぜ今、連結決算BPOが各企業で検討されているのか背景をご紹介いたします。背景は各社各様ではありますが、大別すると以下の6パターンに集約されます。

■決算繁忙月における社員の残業時間削減
従来、決算月は残業、休日出勤で対応することが多くの企業で行われていましたが、昨今は「決算月だけは頑張り、他の月で代休を取る」と言う過去の常識は通用しなくなっています。また、人事部から残業超過を指摘されて対応の必要性に迫られている企業も多く見られます。この場合、決算繁忙月の社員の負担を軽減するために、部分的なBPOが検討されます。

■連結決算のキーマンの退職や異動による人材不足
連結決算業務は高度な知識、スキルが必要なことから、会計士などの特定の人材に依存しているケースが多々見受けられます。こういった人材が突然抜けると、十分な引継ぎもなされないことも多く、連結決算に支障をきたすことになります。この場合、当面の決算を乗り切るためのBPOが検討されます。その後は、自社で連結決算人材を採用、教育するか、全面的なBPOへ切り替えるかの検討がされます。

■連結決算業務の属人化からの脱却
長期間、連結決算職人とも言える人材が連結決算業務を担っているケースが見受けられます。作業手順や作成資料も属人化しており、他者への引継ぎも困難となっていることも多いです。この場合、連結決算のマニュアル化などにより「決算の見える化」や「決算の標準化」を促進しながら、連結決算業務の一部または全部のBPOが検討されます。

■頻繁な社員のジョブローテーションにより連結決算のナレッジが定着しない若手社員を中心に頻繁にジョブローテーション(部署間異動や出向などを含む)を実施している会社では、3年程度で社員がローテーションしています。連結決算システムに関する業務は若手社員が担当することも多く、担当者のレベルによってはローテーションのタイミングで大幅にナレッジが失われてしまうことがあり得ます。この場合、ジョブローテーションで発生する「ナレッジの谷間」を埋めるためにBPOを活用することが検討されます。

■社内経理リソースの利益創出部署への配置転換
数字に強い社内の経理リソースを、誰が実施しても同じ結果となる制度連結業務でなく、会社の利益を創出する経営企画や子会社管理などの業務に配置転換するケースが見られるようになってきました。特にCFOが交代したタイミングなどで会社の方針が変わり、現場で対応が求められるケースが多いです。この場合、恒久的に制度の連結業務はBPOが検討されます。

■IFRS導入やM&A対応等で一時的に社内リソースが逼迫連結決算に関連があるイベント(IFRS導入やM&A対応等)が発生すると、社内でプロジェクトが立ち上がり、当該プロジェクトへ連結決算の人材が異動するケースがあります。この場合、期間限定(1~2年)で現行業務の連結決算の人材が不足し、連結決算実務を担える即戦力が必要となり、BPOが検討されます。

上記の具体例を見ていくと、今はまだBPOとは関係ないと考えている企業の方も、他人事ではないと感じられる例があったのではないでしょうか。

根本的に連結決算の担い手の不足と言う社会的な課題があることから、自社での連結決算業務の内製化が限界を迎えていることは間違いないと感じています。

また、制度連結決算は季節労働(四半期に一度、PKG収集~精算表作成業務の約2週間がピークとなる)であることから、BPOとは相性が良いことは見逃せないポイントです。

連結決算BPOに興味がある場合は、弊社の営業かコンサルタントに一度ご相談いただければと思います。

担当:鈴木 友二(ISID/シニアコンサルタント・公認会計士)

中田雑感

東京証券取引所による「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

2019年8月1日に日本証券取引所(JPX)のサイトで、
「『会計基準の選択に関する基本的な考え方』の開示内容の分析について
≪2019年3月期決算会社まで≫」(以下、当分析)が、公表されています。
https://www.jpx.co.jp/news/1020/20190801-02.html

当分析は、安倍内閣による「日本再興戦略(2015)」で掲げられた、「IFRS任意適用企業の更なる拡大促進」で示された方針に沿ったものです。

当分析によると、分析対象会社数は、3,639社で、内訳は以下の通りです。
・12月期決算会社 : 1,036社
・2月期決算会社 : 260社
・3月期決算会社 : 2,343社

特に「適用済の会社」、「適用を正式に決定した会社」、「適用予定を開示した会社」(ここでは、これら3つを「IFRS適用確実会社」とします)の状況に注目した分析です。

また、IFRS適用については「IFRS適用確実会社」の時価総額の合計は220兆円(225社)であり、東証上場会社の時価総額(605兆円)に占める割合は36%となりました。 つまり、時価総額ベースでは、東証上場会社の3分の1以上になります。

さらに、JPX日経インデックス400の銘柄企業では、「IFRS適用確実会社」の時価総額の合計は200兆円(114社)であり、JPX日経インデックス400の時価総額(457兆円)に占める割合は44%となりました。

この2種類の情報から以下のことがわかります。
(1) JPX日経インデックス400の時価総額(457兆円)は、東証上場会社の時価総額(605兆円)の75.5%を占めている。3,639社のうち、たった400社の時価総額が、全体の4分の3以上になっていることがわかります。

(2) 「IFRS適用確実会社」は2019年6月末時点で、225社であり、そのうち114 社がJPX日経インデックス400の銘柄企業になっています。「IFRS適用確実会社」の50.7%が、JPX日経インデックス400に選ばれていることになります。

ここで最近の会計基準の動きについて考えてみましょう。
昨年(2018年3月)に、IFRS第15号(収益認識基準)をほぼ丸呑みした会計基準が、企業会計基準委員会(ASBJ)から公表されました。日本の会計基準でありながら、中身はIFRSです。
これは、会計基準として日本基準を採用していても、売上高の会計処理は、IFRSで行うということです。私はこれを、「IFRSの部分的強制適用」と呼んでいます。

また、リース会計についても、今年(2019年)3月に、「すべてのリースを資産・負債計上する」という方針が、ASBJで正式に承認されました。現在、この方針を前提に、どのような会計基準にするのかを、ASBJで議論しています。今年5月のASBJのWebcastでは、小賀坂委員長が、「たとえ、IFRS第16号(リース)を丸呑みしないアプローチを採用したとしても、『すべてをオンバランスする』、『リースの識別』、『リース期間』の3つは、IFRS第16号(リース)の内容を取り込まざるを得ない」という発言をされています。上記3つは、IFRS第16号(リース)の根幹をなすポイントです。したがって、実質的に日本のリース会計は、IFRS第16号(リース)に準拠した内容になるでしょう。
そうなると、ここでも、会計基準として日本基準を採用していても、リースの会計処理は、IFRSで行うということになります。
つまり「部分的強制適用」の広がりです。

同様の動きは、金融商品会計でも見られます。

多くの日本企業が「日本基準」を採用していても、中身が「IFRS化」しているのです。「日本基準」を採用していながら、次第にIFRS対応をさせられていくのです。そうすると、日本基準採用企業がIFRSに変更する際の手間と時間は、以前よりは激減するでしょう。
なぜなら、日本基準の変化に対応していくことで、自然にIFRS対応をすることになるからです。そうなると、安倍政権の方針である「IFRS任意適用企業の更なる拡大促進」は、達成しやすくなると言えるでしょう。

金融庁の『周到な進め方』を強く感じます。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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