グローバル&グループ経営をサポートする

IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション

STRAVIS ストラビス

株式会社 電通国際情報サービス

  • お問い合わせ

ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。

すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。

目次

コンサルタントの眼
〜 複数会計基準への対応に向けたシステム選定のポイント 〜

複数会計基準への対応は、従来、米国上場企業など一部の企業で求められていましたが、近年、IFRS導入、及びIFRSを任意適用できる会社の要件の緩和等々により、多くの企業に求められつつあります。

今回、米国上場企業やIFRS先行導入における財務会計システムの構築に携わった筆者が、複数会計基準への対応時における財務会計システム(パッケージ)選定のポイントを記述します。

複数会計基準対応において、財務会計システムに要求される機能には大きく以下の4つがあげられます。

1.複数帳簿管理
2.複数仕訳生成
3.複数会計基準に対応した財務諸表生成
4.複数会計基準に対応したマスタ管理

1.複数帳簿管理のポイント

複数帳簿管理とは、各会計基準毎の会計データ(仕訳、及び残高)を帳簿という単位で同一システム内に保持する機能です。通常、帳簿は会計基準毎に作成しますが、会計データの処理/保持方法には“並行方式”と“差額調整方式があります。

並行方式とは、各会計基準の会計データをリアルタイムで個別に保持する方式です。一方、差額調整方式とは、主となる会計基準(主基準)と副となる会計基準(副基準)を設定し、決算時に主基準と副基準の差額を調整して各々を保持、又は副基準の差分のみを保持する方法です。
導入している会計基準間で、差異が少ない場合には差額調整方式で対応可能ですが、それ以外の場合には差額調整方式は決算時の事務負担が増大となることから、並行方式を採用するほうに優位性があります。
複数会計基準を導入する場合には、“並行方式”と“差額調整方式”の何れを採用するかを検討し、採用した方式に対応した財務会計システムを選定する必要があります。

2.複数仕訳生成のポイント

複数仕訳生成とは、一つの取引、又は仕訳から同時に複数の会計基準の仕訳を生成して各帳簿に登録する機能です。
上流システムから財務会計システムへデータがインターフェースされる際に各会計基準の仕訳を生成する機能と、財務会計システムに仕訳が生成された後、帳簿間で仕訳の連携をして生成する二つの機能があります。
一般的には双方の機能を併用し、上流システム、又は仕訳の形態によって使い分ける傾向があるため、双方の機能に対応した財務会計システムを選定する必要があります。

3.複数会計基準に対応した財務諸表生成のポイント

財務諸表生成については、各会計基準に準拠した異なる様式の財務諸表を生成する機能が求められます。
財務諸表の表示様式や表示形式は逐次変化していく可能性があるため、容易にメンテナンス可能であり、加えてノンプログラミングで帳票の定義体を作成できる財務会計システムを選定することが好ましいです。
また、会計基準間の差異を把握できるように、会計基準を横断してデータを出力(複数の帳簿のデータを同時に出力)可能な財務会計システムを選定する必要があります。

4.複数会計基準に対応したマスタ管理のポイント

最後にマスタ管理機能についてですが、こちらは一元管理(会計基準を横断したマスタ管理)やメンテナンス性の高い管理機能を備えた多機能な財務会計システムを選定する必要があります。
例えば、部門のマスタは会計基準間で共有、勘定科目マスタは会計基準間で一部共有、その他のセグメント情報は会計基準間で個別 等々、マスタの値を共有できる機能を備えた財務会計システムを選定するのが好ましいです。

また、マスタの値を階層構造で保持できるシステムを選定した場合、各基準の科目体系を一つのマスタで実現することが可能です。
実際に、この階層構造を利用して、一つの勘定科目マスタ上に、J-GAAP、US-GAAP、IFRSの勘定科目体系を実現した事例もあります。
前述の財務諸表出力機能と合わせ、メンテナンス性の向上や横断的なデータの把握が可能になります。

昨今、コンバージェンス、アドプション、複数会計基準に対応したパッケージソフトウェアは市場に多く出回っていますが、カタログ上に掲載されている機能についても細かいレベルで制約があり、業務要件を満たせず運用回避するといったことも起きています。
システムを選定する際には、要求する機能の詳細を見極めて採用する必要があります。

◇ 担当:山岸 功義(ISID/コンサルタント)

<関連情報>

中田雑感              公認会計士 中田清穂
〜 あれから1年 〜

こんにちは、公認会計士の中田です。

このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。
よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

あれから1年

6月20日は、昨年金融庁企業会計審議会から「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(以下、「当面の方針」)が公表された日です。

つまり「当面の方針」が公表されて、はや1年です。

「当面の方針」では、以下の3項目が決定されました。

(1) IFRS任意適用要件の緩和
(2) IFRSの適用の方法(いわゆる「エンドースメントされたIFRS」の作成)
(3) 単体開示の簡素化

この1年間で上記3項目についてはすべて着手され、(1)と(3)についてはその作業が完了しました。

(2)については、「日本版IFRS(J-IFRS)」とも言われていましたが、最近の企業会計基準委員会(ASBJ)では、「修正版IFRS」という表現になっています。
ともかく、こちらも昨年8月から作成作業がスタートし、そろそろ公開草案が公表されそうです。もしかすると、皆さんがこのコラムを読まれる頃には、J-IFRSの公開草案が発表されているかもしれません。
そして昨年のスケジュール案通りに進められれば、今秋にはJ-IFRSが完成するでしょう。

以上を振り返ると、「当面の方針」が、いかに大きな影響力を持つ報告書だったかが理解できるでしょう。企業会計審議会の委員の意見を、ただ並べたものではなく、実際に省令等の改正が行われたり、ASBJを動かせたりしたのですから。

「当面の方針」に記載されていることは、上述の3項目だけではありません。
3項目は、あくまでも当面できることを明示しただけのことです。

「当面の方針」の本質的な目的は、IFRSの任意適用の拡大です。ただ「当面の方針」には、IFRSを任意適用する具体的な企業数や年限は明示されていません。

IFRSを任意適用する具体的な企業数や年限を明示したものに、自民党の提言があります。2013年6月13日に自民党政務調査会金融調査会の「企業会計に関する小委員会」が公表した、「国際会計基準への対応についての提言」(以下、自民党の提言)です。

この「自民党の提言」が公表されて、はや1年です。

「自民党の提言」では、「2016年までに適用企業数300社」という具体的な数値目標が掲げられておりました。
あれから1年経過して、IFRSの適用を予定する企業を含めても、41社(2014年6月26日現在:東京証券取引所のサイト「IFRS任意適用・任意適用予定会社一覧」より)しかありません。300社にはほど遠い状況です。
進捗が悪すぎると言えるでしょう。
あと2年半で260社近くが次々と適用を公表することは、なかなか現実的とは思えません。

あれから1年経過して、2014年5月23日に公表した「日本再生ビジョン」の中で、自民党は以下のように指摘と提言をしています。

1. 2016年までのできるだけ早い時期に、強制適用にすべきかどうか、強制適用をする場合にはいつから適用させるか、そのタイムスケジュールを決定する作業を、具体的にかつ早急に実施するべきである。
2. 自民党・企業会計小委員会が昨年6月にまとめた提言では、2016年の年末までに300社程度の企業がIFRSを適用する状態にすることが求められた。
 政府はその実現に向けてあらゆる対策を検討し、実行に移すとともに、積極的に環境整備に取り組むべきである。

すなわち「2016 年末までに300 社」という目標を再度確認した上で、政府に積極的な対応を要求しているのです。
さらに1.では、「強制適用」という、金融庁の「当面の方針」では「当面」先送りされた課題について、踏み込んだ提言をしています。

安倍政権が6月24日に閣議決定した、いわゆる「骨太の方針」(正式名称は『「日本再興戦略」改訂2014−未来への挑戦−』)には、自民党の「再生ビジョン」ほど明確ではありませんが、以下のような表現が盛り込まれました。

・2008年の G20首脳宣言において示された、会計における「単一で高品質な国際基準を策定する」との目標の実現に向け、IFRS の任意適用企業の拡大促進に努めるものとする。
・また従来進めてきた施策に加え、IFRSの任意適用企業が IFRS移行時の課題をどのように乗り越えたのか、移行によるメリットにどのようなものがあったのか等について、実態調査・ヒアリングを行い、IFRSへの移行を検討している企業の参考とするため、「IFRS適用レポート(仮称)」として公表する、などの対応を進める。
・上場企業に対し、会計基準の選択に関する基本的な考え方(例えば、IFRSの適用を検討しているかなど)について、投資家に説明するよう東京証券取引所から促すこととする。

上記3項目のうち、私がもっとも注目したのは、3項目目です。

「IFRSの適用を検討しているかについて、投資家に説明するよう東京証券取引所(以下、東証)から促す」

これは「ソフト・ロー」の定型的なものです。
強制ではないのに、事実上義務化していくのです。

東証が実施している「ソフト・ロー」で最も有名なものが、決算短信の発表(決算発表)です。決算短信を義務とする根拠法令はありません。法的には、義務ではないのです。しかし、決算短信を発表しない上場企業はありません。

東証は、義務でもないものを義務化するチカラを持っています。

「強制適用」にするには、法令を改正する必要があり、財界や会計学会などからの反対も調整しながら、相当なエネルギーを必要とします。

しかし東証からの要請であれば、法令の改正なく企業を動かせるのです。

ただ、よく読めば「IFRSを適用するよう東証から促す」のではなく、「IFRSの適用を検討しているかについて、説明するよう東証から促す」となっています。

ここで似たような手口として思い当たるのが、「独立社外取締役の義務化」です。

改正会社法では、「独立社外取締役の義務化」は見送られましたが、「独立社外取締役を選任しない場合には、その理由を説明すること」を義務化しました。
「選任は義務ではないけれども、選任しない理由を説明するくらいなら、選任しちゃえ」という企業もあるのではないでしょうか。
「義務化はしないが、選任企業を拡大させる」。これも「ソフト・ロー」と言えるでしょう。

さて、これから1年で、すなわち2015年6月までに、IFRSの任意適用企業数は何社になるでしょう。1年後で考えると、「2016年末」までに「あと1年半」です。

仮に、あと1年でIFRS任意適用の企業数があまり拡大していない事態になっていると、どうなるでしょう。

私は、その時こそ「強制適用」に向けた動きが始まると思います。
「強制適用」を発動するには、時間がかかるでしょう。金融庁が「強制適用」をいきなり決定することは、極めて可能性が低いと思います。

手順として企業会計審議会を開催し、「強制適用」肯定派の委員をそろえて半年くらい議論するカタチを取ったうえで、2016年に「強制適用」の方針を明示することになるでしょう。

したがって、これから1年でどのくらいの企業がIFRSを任意適用するかが、非常に重要な鍵を握っていると考えています。

加えて、余談を許さないのが「政治決断」です。

思い返せば、IFRS適用の動きがストップしたのは、いわゆる「自見発言」でした。
IFRS適用に向けて、再び動き出させるのは「麻生発言」になるかもしれませんね。
これは、自民党の提言や「骨太の方針」を素地として、いつ飛び出してもおかしくない状況です。

メルマガ事務局より

このコーナーでは読者のみなさまからのご質問を受け付けています。
以下のメールアドレスまでお気軽にお寄せください。

いただいたご質問にはすべてお答えする予定ですが、お答えするのにお時間がかかる場合がありますので、予めご了解ください。
g-ifrs@group.isid.co.jp 『ISID 経理財務メールマガジン』 事務局

STRAVISに関する資料をご希望の方は、資料ダウンロードページよりダウンロードできます。
資料ダウンロード
STRAVISの機能や導入に関して詳細を知りたい方はお問い合わせフォームよりお問い合わせください。
お問い合わせ

関連情報

  • 多様な業種・規模のお客様がSTRAVISで課題解決されています。

COPYRIGHT INFORMATION SERVICES INTERNATIONAL-DENTSU, LTD.