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新型コロナウイルスの感染が続く中での業績予想

コンサルタントの眼

連結会計業務アウトソーシングのご紹介

様々な企業の連結会計業務を支援している中で、弊社のBPOにご質問をいただくことが増えています。その背景として、市場における連結会計業務が可能な人材の不足、IFRS移行等のプロジェクト対応に起因する一時的な人員不足といったことが挙げられます。
人材が足りなくて困っているけれど、実際どんなことがしてもらえるのか、という声を伺うことがありますので、今回は、具体的に弊社で実施しているアウトソーシング業務についてお伝えします。

■連結決算事前準備
STRAVISや連結パッケージのメンテナンスをアウトソースいただくことが多くございます。
普段からSTRAVISをご利用いただいているユーザの方も、いざメンテナンスとなるとあやふやな点が出てきて戸惑ったり時間がかかったりすることがあるのではないでしょうか。STRAVISのメンテナンス業務にはユーザとして必要な知識以上のSTRAVIS知識が必要となります。そこでメンテナンス業務をアウトソースしていただくことにより、定常業務への集中や、浮いた工数で高付加価値業務への移行を図っていただくことが可能となります。

■連結決算対応
連結決算対応の中でお悩みのポイントは各社各様ですのでご依頼いただく業務も多岐にわたります。
例えば、連結子会社が多くパッケージチェックの段階で人員が不足する場合はパッケージチェックを、またジョブローテーションでキャッシュ・フロー計算書作成ができる人員がいなくなってしまった場合にはキャッシュ・フロー作成業務を、といった具合に、ご要望に応じた連結決算業務をアウトソースいただいております。
また、社内リソースの高付加価値業務への集中などの理由から、連結決算業務を丸ごとアウトソースいただくこともございます。

■子会社におけるパッケージ入力、開示対応
多くの場合、連結決算を実施する親会社からの依頼となるため、親会社業務のアウトソースとなるのですが、子会社の連結パッケージ作成が連結決算のボトルネックになっている場合は連結パッケージ作成を依頼いただくこともございます。またSTRAVISからは離れますが、開示資料作成をアウトソースいただくこともございます。

■業務改善
自社内で連結決算業務を完結させることを前提に、業務改善に主眼をおいたご依頼もございます。たとえば、マニュアル作成による業務の可視化・標準化やSTRAVIS機能を利用した手作業の削減等の業務改善を実施しています。

今後はBCP対策という意味でも、業務の可視化や標準化の必要性が高まり、プロフェッショナル人材として業務改善のアウトソースを検討する場面が増えてくるのではないでしょうか。弊社ではSTRAVISの知識を前提に、会計知識、実務経験が豊富なメンバーをご用意しております。

連結決算のアウトソーシングに興味がある場合は、ぜひ弊社のコンサルタントにご相談ください。

担当:根本 靖子(ISID/コンサルタント)

中田雑感

新型コロナウイルスの感染が続く中での業績予想

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

新型コロナウイルスの影響で、業績予想は大変難しい状況です。
そんな中、ソニーの開示内容が秀逸だと感じられたので、ご紹介します。

ソニーが5月13日に開示した2019年度の決算短信は、以下のURLで見ることができます。
https://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/library/presen/er/pdf/19q4_sony.pdf

この決算短信の24ページ目に「4 補足情報」として、「(1) 2020 年度の分野別営業利益試算」を開示しています。

ぜひ実際に決算短信を見ながら、このコラムを読んでいただきたいと思います。
カラーで色の濃淡も加えた、視覚的にもとても理解しやすい開示だと思います。

秀逸なポイントは以下です。
(1) 「業績予想」ではなく、「試算」として表現していること。
冒頭に以下の記載があります。
『前述のとおり、2020 年度の業績見通しについては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、現時点で合理的な算定が困難であるため、未定とします。ただし、一定の前提にもとづき、2020 年度の各分野の営業利益を試算し、金融分野を除く結果を 2019 年度の営業利益実績に対する割合の幅で示すと以下のとおりです。』
あえて「試算」という言葉を使ったことには意味があるように思います。
「業績予想」として開示すると、実績が乖離した場合に、業績予想の修正開示を行わなければならなくなります。
「試算」にすれば、このような義務を負わなくなると考えたのかもしれません。

(2) 「前提条件」を4つ明記していること。
前提条件として以下のような内容が記載されています。
a) 第1四半期中は新型コロナウイルスの感染拡大が続き、ヒト/モノの移動が制限され、事業活動への制約が続く。
b) 6月末に感染拡大はピークアウトし、第2四半期中にヒト/モノの移動制限が緩和され、事業活動も段階的に正常化に向かう。
c) 第2四半期末には新型コロナウイルスの影響は、ほぼなくなり、第3四半期には事業活動は正常な姿に戻る。
d) 為替の前提は1ドル=105円、1ユーロ=115円

この「前提」を記載することが、極めて重要なのです。
この決算短信は、5月13日に開示されたのですが、すでに3ヶ月近く経過しています。したがって、これらの前提が当たっていたかどうかを、一部確認できます。特に、b)の前提は、「外れた」と評価できます。
しかし、この「外れた」ということをもって、「やはりこんな開示をしなければよかったのに」などと考えてはいけません。

「6月末に感染拡大はピークアウトし、第2四半期中にヒト/モノの移動制限が緩和され、事業活動も段階的に正常化に向かう」という「前提」で、各セグメント別の営業利益を「試算」したのですから、ピークアウトどころか第2波が強く疑われる状況になった現時点では、「試算」の数値がさらに悪化することを、主に投資家等の情報の利用者は「予想」することができるのです。
ここが最も重要なポイントです。
この「試算」を開示しなければ、状況が悪化した時の「予想」ができないからです。本来企業の業績の「予想」は、投資家等が自分で行い、将来株価が上がるかどうかを判断して、「経済的意思決定」(買うか売るか持ち続けるか)を決めるのです。
「予想」のためには、財務数値などの情報が提供されないとできないことは、自明の理です。「試算」や「業績予想」は「当たるかどうか」が問題なのではなく、「どのような"前提"で算出したか」がわかるように情報を提供することが重要なのです。

(3) セグメント別に「試算」をしていること
ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、イメージング&センシング・ソリューション、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(テレビ、オーディオ・ビデオなど)の報告セグメント別に開示しています。
ソニーはこのような任意の開示おいても、セグメント別の開示を、当然のようにしています。
セグメント情報の意味をきちんと理解していると言えるでしょう。

(4) 「試算」について、「幅」をもたせて表現していること
各セグメントの営業利益を、一般的な業績予想で開示されているような「1つの数値」ではなく、「"幅"を持たせた数値」として開示しています。
この"幅"は前期の「実績」に対する「割合」だということです。
例えば、「ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)」の営業利益は、前期と比較して、だいたい55%から75%くらいの割合の幅で減少するだろうということです。オレンジの色にはグラデーションがかかっていて、中心あたりが濃くなっています。このことから、だいたい70%あたりが「最頻値」なのかなという印象を受けます。
もしこれが「試算」ではなく「業績予想」ならば、前期比70%減の営業利益を開示することになるでしょう。
そして、「前提条件」で示された状況よりも現時点で悪化していることを加味して判断すると、この"幅"の中でも中心よりも左寄りになることが「予想」できます。そうなると、G&NSセグメントの営業利益は、「55%から60%くらいになるのかな?」ということで、投資家等が自分で「試算の修正」を行うことができるでしょう。
また、各セグメントの「幅」を見ると、一様ではないことがわかります。これはすなわち、セグメント毎に「不確実性」が異なることを示しているのです。G&NSセグメントよりも音楽セグメントの方が「幅」が広いですね。これは音楽セグメントの方が「不確実性」が高いということで、別の言い方を知れば「読みにくい」ということです。

ところで、この「前提条件」は誰が決めたのでしょう。
この決算短信では、誰が決めたかは開示されていません。
ただ、このように開示された情報の利用者(投資家等)は、「ソニーの経営者は。経営判断をする上で、このような前提に立って経営意思決定を行っているのだろう」と受け止めるでしょう。
この「前提」が「甘いのか厳しいのか」、その判断は情報の利用者(投資家等)によって違うでしょう。それで良いのです。それぞれの判断で投資意思決定を行えばよいのです。大切なことは、経営者がどのような前提で経営意思決定を行っているのかに「透明性」を持たせて、それぞれの投資家の意思決定に役立てることなのです。

「業績予想」、「試算」、「予算」、「経営計画」、「見込み」など、「将来予測」と言われるもので、最も重要なポイントは「前提条件」を明示することだということを理解していただけたら、とてもうれしいです。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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