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監査法人改革への期待

SKJ総合税理士事務所 所長・税理士 袖山喜久造

第1回 経費精算の電子化の準備と令和2年度の電子帳簿保存法改正

袖山喜久造   

経費精算業務は、業種、業態や従業員数の多寡にかかわらず、どの会社においても発生する社内業務となります。昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染拡大予防対策として、多くの会社が在宅勤務を推奨し、テレワーク対応を迫られている中、対応が困難となっている会社も多いと思います。

このような中、社内処理に押印が必要、書面の請求書や領収書処理のために出社をしなければならない、など書面の取引書類や押印行為がテレワークを行う上での阻害要因となっており、業務処理や働き方の改善は電子化により解決する必要があります。
「対面」、「押印」、「書面」の解決をデジタル化で行うためには、書面で受領した取引書類をデータ化すること、あるいは取引書類データ等をデータで授受すること、そして社内のプロセスを電子化するための電子ワークフローを導入することです。最終的には、デジタルデータで作成されているコンテンツ(born digital)をデジタルのまま流通させ活用することで企業の業務効率は明らかに向上すると同時に、テレワークなどへの対応やBCP対策にも役立ちます。

本メルマガでは5回にわたり経費精算業務を電子化するためのプロセス、および税務当局への承認申請書の作成や提出までを解説していきたいと思います。

【1】経費精算の電子化の準備
法人税法においては、仕訳帳及び総勘定元帳にはすべての取引について記帳することが規定されています。経費精算で承認された会計情報は、会計システムで経費計上されることになります。経費精算書は、本来帳簿に記載する必要がある経費の明細が記載されています。当該経費精算書は、帳簿代用書類となり取引書類として保存が必要になります。

承認された経費精算情報が、経費の1支払いごとの明細が会計システム上で計上されるのか、その場合支払先情報等まで会計システムに連携されているかなどを確認します。経費精算情報が、経費申請の勘定科目の単位ごとに合計され連携されている場合には、経費の1支払いごとの明細情報は経費精算システム上で保存されることになりますから、経費精算の明細は経費精算システム上で保存が必要になります。

このように、経費精算業務を電子化する場合には、まず会計システムへの連携方法や明細データの保存について確認を行います。

次に、経費精算書に添付される領収書ですが、当該領収書は取引書類として保存が必要ですので、書面で受領した場合には書面の保存、データで領収書データを受領した場合にはデータを保存することにはなります。書面で受領した領収書をデータで保存するためには、電子帳簿保存法(以下、「電帳法」)第4条第3項で規定されるスキャナ保存の承認申請書を所轄税務署に提出し、承認を受ければ原本は廃棄しデータのみで保存することが可能となります。

経費精算書及び領収書の電子化を行うためには、電帳法の要件を満たしたシステムを導入する必要があります。電通国際情報サービスの経費精算システム(Ci*X Expense)は電帳法の法的要件を満たしたシステムとして、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の電帳法スキャナ法的要件認定制度の認定を受けた製品ですので安心して利用可能です。

【2】令和2年度の電帳法の改正事項について
令和2年度の税制改正において、電帳法で規定される電子データで取引情報を授受する場合のデータ保存の際の法令要件が改正されました。この改正により、取引書類等をデータで授受する方法が促進されることが期待されます。

コーポレートカードやスマホアプリ等を利用した際に決済事業者から経費精算システムなどに連携された場合の決済データは、支払年月日、支払金額、支払先が含まれており、訂正や削除が物理的にできない仕組みなどにおいてデータ連携され保存される場合には、この決済データを領収書データとして保存できるように措置されました。

決済データは、訂正削除の記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用し、保存期間や検索要件を満たす機能があれば、電子取引データの保存に係る要件を満たすと考えられます。電通国際情報サービスのCi*XExpenseはこのような対応ができますので、本システムを導入することで、領収書のスキャナ保存をすることなく、経費精算を行うことが可能となります。

他方、例えば、システム上で一時的に保存された領収書またか決済データをダウンロードして別途データ保存するような場合には、電子取引データについて訂正削除の防止規程を整備し、検索要件を満たした状態で法定期間保存することが必要となります。

次回以降は以下のテーマでメルマガを配信する予定です。
第2回 経費精算の電子化の進め方
第3回 経費精算業務フロー・社内入力体制の電帳法対応
第4回 電帳法スキャナ保存に対応する社内規程の作成
第5回 電帳法承認申請書の作成と提出

SKJ総合税理士事務所

中田雑感

監査法人改革への期待

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

私はこれまでこのコラムで、何度か監査法人の課題について取り上げてきました。

ISIDメルマガ:2018.09.18配信「監査法人への苦情」
https://www.isid.co.jp/stravis/mailmagazine/20180918.html

ISIDメルマガ:2019.12.20配信「監査法人によるアンケート調査」
https://www.isid.co.jp/stravis/mailmagazine/20191220.html

そして、上記2019年12月20日のコラムの最後に、以下の文章を記載しました。「監査法人ではない、第三者機関から、監査法人の実態調査をしようと考えています。」

実は年明けの2020年1月に、一般社団法人日本CFO協会(以下、CFO協会)で実態調査が実現しました。
この実態調査は私が企画したので、その結果分析も私が行ない、CFO協会の機関誌「CFO FORUM」の記事になりました。
http://forum.cfo.jp/cfoforum/?p=15028/
(記事を閲覧するためにはアカウント登録が必要となります。)

監査法人によるアンケートとは、かなり違いのある回答結果が得られました。監査法人によるアンケートでは、「不満がある」という回答は皆無に近いのですが、CFO協会の実態調査では、ほとんどの質問に「不満」を感じている実態がわかりました。
特に私が注目していた質問は、「担当する監査チームが自社のビジネスモデルやビジネスリスクを理解していると感じる相手」を、パートナー、マネージャー、シニア、スタッフの4種類について、複数回答していただく質問でした。
回答内容で「全体」の傾向を見ると、パートナーが66%にとどまっていました。66%という数値は決して高い数値ではありません。クライアントのビジネスを34%ものパートナーが、きちんと理解しているとは感じられていないということなのです。
現代の監査制度は、ビジネスリスクを重視したリスク・アプローチを基本モデルとしています。クライアントのビジネスの理解なくして、現代監査は成り立ちません。
したがって、34%の企業が自社のビジネスが監査法人のパートナーレベルに理解されていないと回答した調査結果は、会計監査の品質に対して重要な疑念を生じさせることになると思います。

そして最近、この機関誌の記事を見て、公認会計士協会の会長や4大監査法人(今のところ2法人)の代表などから、面会のご要望が来始めました。実態調査の詳しい内容を聴いて、監査を改革していきたいという意欲が感じられます。7月初旬に立て続けに面会します。
その経緯や内容も、こちらのコラムでご紹介できればと考えています。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

メルマガ事務局より

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