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リモートワークと経理業務の評価基準

コンサルタントの眼

経営管理とAI 

AI(人工知能)というキーワードが世に出てきてから、既に数年が経過しております。

身近なAIといえば、スマホのアシスタントやお掃除ロボット、最近では高輪ゲートウェイ駅にAI案内員や無人AI決済店舗などが登場しました。近い将来にはドラえもんやC-3POのようなAIロボットが出来てしまうのかもしれません。

私自身の生活の中では、AIはまだまだ将来のものという印象がありますが、私が携わっている経営管理領域において、以下の観点でAIがどのように活用できるのかを考えてみました。

1.データ作成
2.経営分析
3.経営判断

1.データ作成
経営管理に限らずですが、システム運用においては、必ず何らかのデータ作成が必要になります。販売計画や経費計画、費用配賦で使用する配賦基準の作成など、様々なデータを作成し、システムに入力することが必要になります。入力されたデータの精度により、後続において課題の抽出や正確な経営指標に繋がりますので、非常に重要な業務です。

例えば、販売計画を作成する場合、新製品であれば営業担当者が販売見込数を元に予測し、既存製品であれば、これまでの販売実績に数%(または-数%)を上乗せして予測する、などの方法で作成しているとします。この作業にAIを活用できれば、より短時間で、かつ正確に販売計画の作成ができるのではと考えます。また、データ入力にRPAを活用できれば、さらなる効率化につながるのではないでしょうか。

私がお話をお聞きしたお客様のなかでも、実際に将来予測の値をAIにより導出し、担当者は確認または微修正を行うのみ、というお客様もおられますし、ある小売業のお客様では、一部商品の発注数量をAIで出されており、徐々に対象商品を拡大していく、というのをお聞きしたことがあります。

この効率化により、担当者はデータ作成・入力作業から解放され、人の判断が必要な業務にシフトすることができそうです。


2.経営分析
会計システムなどからデータを収集して、配賦処理などの計算を行った結果を、様々な経営分析レポートとして出力したり、ROICやROEなどのKPI指標を算出します。経営分析としては、例えば、対前年比較や、製品別損益、KPIの数値などの内容に対して、評価をしてコメントなどを入力します。この分析結果を経営層に提出し、経営判断を仰ぎます。

ここにAIを活用する場合、対前年比較などの金額比較であれば、しきい値を設けて、比較した結果がしきい値以上ならコメントを入力する、などのことができそうです。KPI指標であれば、同業他社や業界の指標を入力しておけばAIが判断して、必要なコメントを入力することもできるのではないでしょうか。


3.経営判断
経営管理の最終的な目的としては、経営分析などの判断材料をもとに経営層が的確な経営判断をすることです。この経営判断にAIを活用するのは難しいのではと考えております。

例えばある事業からの撤退を判断する場面で、今後の成長性や市場の変化、社内のモチベーションや経営者の経験値などを総合的に考えて判断を下すことが必要になり、これらの定量的に判断できない部分は、まだAIには難しいのではないでしょうか。

いずれにしても、業務をAIに任せるには、ただAIを導入するだけではなく、相応のデータをAIにインプットするなどの事前準備が必要になります。この事前準備や運用コストと、AIでできることの費用対効果を検討して、まずはAI導入の経営判断が必要になりそうです。

弊社では経営管理領域のソリューションを複数取り扱っておりますので、課題などがございましたら、是非弊社にご相談ください。/p>

担当:生駒 一範(ISID/コンサルタント)

中田雑感

リモートワークと経理業務の評価基準

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

4月に緊急事態宣言が発令されて、営業自粛、外出自粛が強く要請され、多くの方々がリモートで仕事をする時間が増えています。
そんな中、日本経済新聞で「日立、週2~3日出社 在宅前提に脱・時間管理」という見出しの記事が掲載されました。抜粋記事が以下です。

『日立製作所は26日、新型コロナウイルスの終息後も在宅勤務を続け、週2~3日の出社でも効率的に働けるよう人事制度を見直すと発表した。国内で働く社員の約7割にあたる約2万3千人が対象だ。働きぶりが見えにくい在宅でも生産性が落ちないよう職務を明確にする「ジョブ型」雇用(総合2面きょうのことば)を本格的に導入し、勤務時間ではなく成果で評価する制度に移行。コロナ後の「ニューノーマル(新常態)」を見据えて多様な働き方を認める動きが広がりそうだ。(2020年5月27日付 日本経済新聞 電子版)』

記事で、本格的に導入するとされている「ジョブ型」雇用について、具体的に触れられている部分が以下です。

『平日のうち2~3日を在宅で働きながら生産性を高めるためには業務の透明化が必要だと判断。「その日に何時間働いたか」ではなく「何の成果をあげたか」を基本的な尺度にしたい考えだ。

具体的には、職務定義書(ジョブディスクリプション)で社員の職務を明示し、達成度合いなどをみる「ジョブ型」雇用を本格導入する。同社では管理職を中心に段階的に採り入れてきた。今後、各職場での検討や労働組合と協議し、来年4月からの導入を目指す考えだ。(2020年5月27日付 日本経済新聞 電子版)』

「ジョブ型」雇用は、従来からある考え方で、全く新しいものではありません。ただ、経理業務がこの「ジョブ型」雇用の対象になることは、かなり少なかったようです。それは、「就業時間以内」に「所定の日常経理業務」や「決算業務」を遂行するスタイルが多く、「時間管理型」の評価が適しているという考え方が基本にあったからだと考えられます。
また、「何の成果をあげたか」で評価するより、「何時間働いたか」で評価する方が、面倒くさくないということもあるようです。

特に、経理業務を対象として「何の成果をあげたか」という評価をしようとしても、「経理業務の成果って何??」ということで、スタートから思考停止に陥ることも多いでしょう。

そこで、今回は、「経理業務の成果とは何か」を考えてみました。
経理業務というのは、「日常業務」と「決算業務」に大きく区分できます。

「日常業務」は、日々の各部門の活動を毎日「記録」することです。
”bookkeeping”ですね。
ということは、「日常業務」は、「適時・適切に会計記録を行うこと」が成果になるはずです。したがって、「適時・適切に会計記録を行うこと」ができていれば、基本給を支給すべきです。
極端な話ですが、一日1時間しか仕事をしていなくても、その日の会計処理が「適時・適切に」行えていれば、それ以上働く必要はなく、男女を問わず、育児でも家事でも副業でも、その人の判断で、最も有効なことに時間を使えば良いのです。

「決算業務」も本質的には同じです。
「決算業務」は、法務日程通りに、適切な財務情報を作成することです。
”Settlement”ですね。
ということは、「決算業務」は、「法務日程通りに、適切な財務情報を作成すること」が成果になるはずです。したがって、「法務日程通りに、適切な財務情報を作成すること」ができていれば、基本給を支給すべきです。
極端な話ですが、一日1時間しか仕事をしていなくても、その決算担当者の決算作業のうち、その日の作業が「スケジュール通りに・適切に」行えていれば、それ以上働く必要はなく、男女を問わず、育児でも家事でも副業でも、その人の判断で、最も有効なことに時間を使えば良いのです。
(タイトな決算中に自由な時間があるなんて想像しにくいですが・・・)

「日常業務」でも「決算業務」でも、上記のような考え方をベースにして、さらに、評価を上げる要素として以下のような項目を加味して、昇給や昇進などを検討しても良いと思います。

(1) 予定より早く担当業務(タスク)を完了させた
(2)  より早く、より適切に業務を行えるような「改善提案」を行った
(3)  他の担当者の作業を「補助・サポート」した
  (この場合、サポートを受けた担当者の評価は下げない方が良いと思われます)
(4) 経営層や他部門にとって「有益を考えられる情報を発案」した
このような評価が基本になれば、経理業務は、なんだかこれまでより楽しい業務になるような感じがします。

ちなみに、今回取り上げた記事では以下の記載もありました。
『在宅勤務で増える光熱費や、出社時に着用するマスクの費用などとして、1人あたり月3千円を補助する制度も新設し、6月から支給する。(2020年5月27日付 日本経済新聞 電子版)』

日立製作所は、現場の課題をきちんと押さえながら「変化」に対応して、大胆な改革をスピーディーに行えているような感想も持ちました。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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