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リース会計基準における重要性の数値規準

コンサルタントの眼

連結決算における業務改善

連結決算に従事する皆様にとって、当たり前に求められる数値の正確性は切実な問題です。経営者への正確な報告や、監査人からの指摘の有無をチームや個人の目標として設定している場合もあるのではないでしょうか。正確なだけでなく、さらに迅速な分析・報告を求められるうえ、会社が成長し続ける限り業務は増え続けます。連結業務は改善し続ける必要があるといえます。

今回は正確な連結決算のためにできる業務改善について考えてみたいと思います。

◆業務の平準化
業務改善を考えるとき、一時期に集中する業務の平準化に焦点を当てることがあります。連結業務でいうと、決算前に準備できること、になるでしょう。
例えば、企業結合等、イレギュラーな取引や新規の取引は、間違いやすい取引である一方で、あらかじめ発生することがわかっていることも多いため準備が可能な取引でもあります。あるべき仕訳は作成していたが、システム対応が甘かった、キャッシュフローの設定がもれていた、など決算期間中に冷や汗をかいた経験はありませんか。
スプレッドシート上で仕訳レベルまで落とし込むことはもちろん、システム上もマスタや設定をしっかり準備しておきましょう。

◆業務の標準化
そもそも業務が正しく行われているかどうかがわからない属人化したブラックボックスはありませんか?
連結システムの処理一つとっても、実は属人化していることがあります。人員異動など、引き継ぎが発生するときは標準化のチャンスです。引き継がれる人の視点が入ることで属人化されているところを明らかにし、マニュアル化が可能となります。標準化によって業務が安定すれば、処理の誤りは減らすことができます。
STRAVISでは連結処理を標準化するために「ユーザ定義一括処理」を利用する場合が多いです。

◆分析業務の効率化
有効な分析業務をさらに効率化できれば、それだけ処理の誤りを手前で発見することができます。
まずは分析のために使用しているスプレッドシートを一覧にしてみましょう。誰が何の分析のために使っているかわからないスプレッドシートはそもそも分析資料としては不要かもしれません。
次に、作成に工数がかかっているスプレッドシートを見つけてみましょう。決算前にあらかじめ準備できることがないか、もっと簡単に作成する方法がないか、いつもと違った視点で改めてスプレッドシートを見てみると改善できる点が出てくるのではないでしょうか。いつもの担当者とは別の方に見てもらうことは有効です。
もしもSTRAVISユーザーで、「EX-REPORT」を使っていないのであればぜひご利用をお勧めします。「EX-REPORT」ではExcelとSTRAVISを直接連携することが可能なため、連結数値が変わるたびにスプレッドシートにCSVデータを貼りなおしたり数値を手入力する手間から解放され、簡単に大きな改善効果を実感していただけると思います。

◆データアップロードの効率化
連結処理の根拠資料としてスプレッドシートを作成をされている場合も「EX-REPORT」の利用で簡単に業務改善できる場合があります。
「EX-REPORT」にはSTRAVISに各種データや仕訳をExcelから直接アップロードする機能があるため、Excel集計後に仕訳の手入力やデータインポートをしなくとも、ボタン一つでデータ入力が可能となります。分析業務の結果、処理誤りに気付いたときの修正も簡単にできるようになります。

◆業務のアウトソース
業務改善の必要に迫られているが、人手が足りず現業で手一杯、そんなことはありませんか?
業務を切り分けてアウトソースすることを検討するときかもしれません。アウトソースによって意図的な業務標準化を行うことも可能となります。マスタやパッケージのメンテナンスといった準備段階から、パッケージチェック、専門的な知識が必要となる資本連結といった決算業務。切り分けたい業務は会社によって異なりますので求める人材も様々です。

弊社ではSTRAVISに関連した様々な業務支援サービスを提供しております。連結決算業務でお悩みのことがあったら、ぜひ弊社にご相談ください。

担当:根本 靖子(ISID/コンサルタント)

中田雑感

リース会計基準における重要性の数値規準

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

日本の企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(31項及び32項)では、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引は、重要性が乏しいと認められ、オペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができます。いわゆる「300万円ルール」ですね。

一方、国際会計基準のIFRS第16号「リース」(5項)では、原資産が少額であるリースは、リースを資産・負債計上する必要はありません。「少額資産」であるかどうかの金額基準は、基準の条文には記載がありませんが、「結論の根拠」という文書のBC100項に以下の記載があります。
「2015年にこの免除に関する決定に至った時点で、IASBは、新品時に5千米ドル以下という規模の価値の原資産のリースを念頭に置いていた。」
「5千米ドル」というとおよそ、50万円から60万円です。

日本基準だと「300万円」で、IFRSだと「60万円」ですから、IFRSを適用すると、資産・負債計上するリース物件が、大幅に増える企業も少なくないでしょう。
このIFRS16号のBC100項の記載を根拠に、日本の公認会計士の多くが「IFRSのリース会計の数値規準は、60万円です。」と言い切って、60万円を超える物件を資産・負債計上することを求めているようです。

しかし、これは大きな間違いです。

そもそも国際会計基準には、「重要性の原則」ともいえる規定が、概念フレームワークだけでなく、IAS1号「財務諸表の表示」という会計基準の7項と31項に存在します。個々の会計基準で開示が明確に要求されていても、各企業での重要性がなければ、会計基準に準拠する必要はないことが明記されているのです。
そして、国際会計基準の「重要性の原則」は、このIFRS16号にも適用されることが、BC85項で以下のように明記されています。
「IASB は、「概念フレームワーク」及びIAS第1号における重要性のガイダンスに依拠することが適切であり、他の基準と整合すると結論を下した。」
それでも、あえて「5千米ドル」という数値を示したことについて、BC101項で以下のように説明しています。
「IASBは、この免除は、そうしたリースが総額で重要性がないであろうことを証明する負担をなくすことによって、多くの借手(特に、小規模企業)にとって多大なコスト面の救済を提供することになると結論を下した。」

つまり、「5千米ドル」という数値は、重要性の判断規準ではなく、「どんな会社にとっても些末な金額だから、各企業が『重要性がないことを証明しなくて良いようにする』ために示されたということです。みなさんの負担を軽くするための規定なのです。
「5千米ドルを超える金額を資産・負債計上しろ」という意味ではなく、「5千米ドル以下の金額であれば、重要性がないことを証明することなく、資産・負債計上しなくても良い」という規定なのです。

ということは、「5千米ドル」を超える金額については、各企業が、『その企業にとって重要性がない金額であることを説明できれば』、「概念フレームワーク」及びIAS第1号における重要性のガイダンスに従って、資産・負債計上する必要はないのです。

IFRSを適用している経理関係者からは、「うちの会社では、300万円未満は、連結財務諸表に与える影響が小さいことを、監査法人に認めさせました。結果的に従来の数値規準を変えずに済みました」というお話も伺えました。逆に、「うちの会社では、40万円を数値規準にすることになってしまいました」という会社もあるようです。

このように、IFRSは各条文を深く理解しなければ、実務対応が全く異なってきます。まずは、自社の重要性に関する数値規準をきちんと作成することがポイントとなるでしょう。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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