loading

続・新リース会計基準の開発動向

コンサルタントの眼

連結決算業務における確認作業の効率化

■連結決算業務における確認作業の重要性
連結決算業務の中でPKG等のインプット情報の入力作業の大半は子会社担当者が行い、連結システムを使用していれば自動仕訳の生成や集計作業はシステムが行うので、手仕訳入力を除くと親会社の連結決算担当者の業務は確認作業が多いのではないでしょうか。
そこで、連結決算業務の効率化というと、入力・集計作業に目が行きがちなところ、確認作業にスポットライトをあててみたいと思います。
確認作業の中でも、子会社が入力してきたPKGの確認作業はBS・PLはもちろん内部取引消去用の相手先情報、連結CF用の増減情報、各種注記用の情報等、多くの情報を収集しているため、PKGの内容確認に手間がかかり、親会社の連結決算担当者の負担も大きいのではないでしょうか。
弊社連結会計システムSTRAVISではこのような業務をサポートする機能が複数ありますので、事例をご紹介します。

■PKGの入力チェック機能
連結システムで入力をしている場合、BSの貸借不一致といった初歩的な誤りは起きないようシステム上担保されていることがほとんどですが、その他にも機械的に行えるチェックがあり、PKGの入力チェック機能を使用すると便利です。例えば、以下のようなケースは入力を誤る事例としてよく見られます。

1. 連結CF目的で集めたBS増減合計が期首と期末の差額と一致しない。
2. 注記目的で収集したBS・PLの内訳を合計してもBS・PLの金額と一致しない。
3. プラスかマイナスか決まっている項目に誤った符合が使用される。
4. BS・PLの増減金額が大きいにも関わらず、増減理由の入力がない。
5. 質問に「該当あり」と回答しているにも関わらず、内容について入力がない。

これらについて入力チェック機能を設けなかった場合、事前に防止することはできず検知のタイミングがPKGの提出を受けてからになります。また、確認主体も親会社の連結決算担当者となり、確認方法も何も情報がない状態で確認していくことになります。会社数が少なければ気にならないかもしれませんが、会社数が多ければ大変手間がかかる作業になります。

STRAVISで入力チェック機能を使用すると、PKG入力者がPKG提出前にこれらの誤りがエラー表示されることにより検知することができ、エラーのままだとPKG提出を制御することも可能です。これにより、親会社の連結決算担当者はエラーが解消した状態でPKGの提出を受けることができ、機械的な確認作業に追われることがなくなります。また、エラー項目・内容が一覧表示され、選択するとエラーが発生している箇所に遷移することができるため、PKG入力者側も効率良く誤りを修正することができます。
Excelでも数式を利用したエラー表示は比較的容易ですが、PKG提出に制御をかける、エラーの一覧表示、エラー箇所への遷移は実現が困難ではないでしょうか。

■内部取引金額の事前照合機能
PKGに入力している相手先情報の確認作業で簡単に行えるものとして、例えば、相手先別の売掛金合計額がBSに入力した売掛金の金額を超過していないかといった、勘定科目毎の相手先合計額の確認作業がありますが、これは上述した入力チェック機能で誤りを防止できるところです。
しかし、このような誤りをしていなかったとしても、内部取引照合を実施し照合差額が多額になった場合、どちらかの会社でPKGの相手先情報の金額が誤っている可能性が高いです。これは内部取引照合を実施しないと検知しづらいところです。通常は以下のようなプロセスで検知し解消していくものであり、結構手間がかかります。

(1) 親会社の連結決算担当者が内部取引照合の結果について確認作業を行うことで照合差額が多額に出ていることを検知する。
(2) 子会社担当者に照合差額を詰めるよう原因分析や必要であればPKGの修正作業を依頼する。
(3) 子会社担当者が上記作業を完了した後、再度親会社の連結決算担当者は照合差額が詰められているか、確認する。

このプロセスを効率化する方法として、STRAVISの事前照合機能が活用できる可能性があります。この機能では、子会社担当者に内部取引金額の照合結果画面を開放することにより、相手側のPKGが提出済であるかどうかのステータスや照合差額を把握することができ、事前に照合差額を詰めることを可能にします。親会社の連結決算担当者にとっては、最初の内部取引照合確認の時点で、照合差額が詰められた状態になることで確認作業もスムーズで、子会社に連絡したりすることもありません。言い換えれば、上記(1)~(3)の作業がなくなることになります。また、子会社担当者にとっては作業がなくなるわけではありませんが、前倒しで実施することが可能になります。

その他に、当期の入力内容を前期と比較分析する確認作業を実施している会社も少なくないと思いますが、PKGの入力項目を前期・当期と並べるレポートを組むことで効率化できるのではないでしょうか。
今回は確認作業にスポットをあてましたが、弊社コンサルタントは、確認作業だけでなく連結決算業務全般において様々な効率化案を提案可能です。
何か手間がかかると感じる業務があれば、お気軽にご相談下さい。

担当:細川 喬平(ISID/コンサルタント)

中田雑感

続・新リース会計基準の開発動向

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

2019年8月26日に開催された、企業会計基準委員会(ASBJ)の審議の様子を、ASBJのサイトにあるWebキャストで見ました。
リース会計の審議内容を聴いていたら、審議終了30秒前に、小賀坂委員長が以下の発言をされています。

「どこかの段階で事務局として、大きなモデルとしてどういう形で進んでいくのだというところについての提案をしなければならない」

ここで私は、「大きなモデル」というのが公開草案ではないかと感じました。

今年3月に「すべてのリースを資産・負債計上する」という大方針が決まっています。そして、ASBJでは前回までに、審議事項の6つのうち、5つまでを対象に審議をしていました。
今回は審議事項で最後に残った、「リース期間」に関わる項目を審議しました。
つまり、当初予定していた6つの審議事項を一通りすべて審議したことになります。公開草案を作り始めるタイミングとしてはおかしくないでしょう。

また、収益認識基準のFINALが2018年3月30日であり、その年から早期適用を認めるという対応をした理由が、日本でのIFRS任意適用企業の便宜を図ってのことだったことは周知の事実です。
IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(いわゆる収益認識基準)の強制適用が、2018年1月1日以降開始する事業年度からだったので、日本でのIFRS任意適用企業は、少なくとも連結財務諸表にIFRS第15号を、2018年度に適用するしかありませんでした。
そこで、個別財務諸表についても、同じタイミングでIFRSと全く同じ会計処理ができるように、2018年に会計基準を完成させ、即、早期適用ができるようにしたのです。

リースの場合、IFRS第16号の強制適用は、2019年1月1日以降開始する事
業年度、つまり今年です。IFRSの「強制」適用年度と日本基準の「早期」適用年度を一致させた、収益認識基準と同じベースで考えると、日本のリース会計基準は、今年中に完成させることになります。
リースに関する開示の重要性が、収益認識と同じレベルかどうかという判断にもよるとは思いますが、重要ではないとは言い切れないでしょう。
今年中にFINALにするには、9月末に公開草案を作る必要があります。なので、小賀坂委員長の発言が、8月下旬にあったことは、公開草案を9月末までに作ることを想定しているのではないかと、うがった想像をしています。

まだこのリース会計の策定動向については目が離せません。
そして、思った以上のスピードで基準の開発が進んで行くように感じられます。
IFRSを任意適用している12月決算企業の2018年度の有報で開示された解約不能オペレーティング・リースの将来の最低リース料総額と、2019年度第1四半期の四報で増えたリース負債を比較すると、数倍から数十倍になっていることがわかります。
その理由として、IAS第17号とIFRS第16号では、「リース期間」の取り扱いが大きく変わったことを開示している企業もあります。

実務対応にかなり手間がかかる会計基準であり、思いがけない多額のリース負債の計上になることが少なくないようですので、早めにこの動向を押さえて、ほぼほぼ固まってきたタイミングで、対応し始められるようにしておくべきでしょう。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

メルマガ事務局より

このコーナーでは読者のみなさまからのご質問を受け付けています。以下のメールアドレスまでお気軽にお寄せください。いただいたご質問にはすべてお答えする予定ですが、お答えするのにお時間がかかる場合がありますので、予めご了解ください。


g-ifrs@group.isid.co.jp 『ISID 経理財務メールマガジン』 事務局

メールマガジンお申し込み

ISIDではSTRAVISやIFRS、連結会計に関する情報をメールマガジンでお送りしています。
STRAVISをご購入いただいていないお客様も購読可能ですので、お気軽にお申込みください。

メールマガジンお申し込み