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IFRSの「のれんの償却処理」

コンサルタントの眼

連結決算業務の断捨離

昨今の働き方改革もあり、連結決算業務で余計な時間がかかっていて他の業務にあてるための時間が不足している現実がある場合、対策を講じない訳にはいきません。
マンパワーが一定の場合、取り得る対策は大別して、「(1)効率的にできるよう業務を改善する。」、「(2)業務をなくす。」の2つが考えられます。一般的には、「(1)効率的にできるよう業務を改善する。」方が良いイメージを抱かれやすいと思いますが、業務を改善するためのシステム投資が必要になったり、コストがかかることも多いです。そんな時はシンプルに「(2)業務をなくす。」ことを考えてはどうでしょうか。
今回は、連結決算業務の断捨離についてです。
会計基準で原理原則が決まっている連結決算で、「内部取引仕訳を全く起票しない」ことや「税効果仕訳を全く考慮しない」という(ミニマム過ぎる)連結決算の方向性を追求することは現実的ではありません。少しハードルを下げて、業務負荷を少しでも軽減する断捨離が成功の秘訣と考えられます。

そんなプチ断捨離候補例として以下の業務があります。

・不要な連結パッケージシートの見直し
会計基準の新設・改定は毎年のようにあり、それに応じて連結パッケージも毎年改修があります。この時、今後不要になるシートがあるにもかかわらず、そのまま子会社に毎年入力してもらっていることはないでしょうか。不要なシートを洗い出して削除することで、連結パッケージ入力業務の一部をなくすことができます。対象となるのは、主に注記を収集するシートとなると考えられますが、開示と絡むため、開示担当者と連結パッケージ担当者の双方で検討することが有効です。

・内部取引消去の差異調整の許容値の見直し
会社規模や勘定科目の重要性などから、多くの会社では内部取引消去差異許容値を設定して、許容値未満になるように内部取引金額を調整しています。
当該許容値を見直して、調整する内部取引が少なくなれば、子会社に問い合わせて内部取引金額を調整するという業務の一部をなくすことができます。
一般的に内部取引消去は最終損益には影響ありませんが、各段階利益には影響がありますので影響額を考慮しながら検討する必要があります。

・利用されていない分析資料の作成
数値が確定した後の分析資料の作成にも、相当な時間がかかっていることがあります。しかし、「過去から作っているが、何のために誰が分析するために作っているのかわからない。」という資料はないでしょうか。現状の分析には手間もかかりますが、前回踏襲を断ち切り、資料の提出先や必要性、代替資料の有無を検討して分析資料作成業務の一部をなくすことができれば、非常に効果的な断捨離になります。

連結決算業務のプチ断捨離を積み重ねて、全体最適を目指して業務を構築することが、働き方改革を達成するための手段の1つになるのは間違いありません。さらに、弊社連結会計システムSTRAVISでは、「(1)効率的にできるよう業務を改善する。」ことも強力にサポートします。オンライン収集を可能にする「STRAVIS-LINK」、エクセル帳票作成時に非常に便利な「EX-REPORT」などです。連結決算業務の働き改革を考える時は、是非、弊社にお問い合わせください。

担当:大形 浩祐(ISID/コンサルタント)

中田雑感

IFRSの「のれんの償却処理」

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

2019年6月26日の日本経済新聞の朝刊に、
「欧米企業、慎重論強く 国際会計基準でM&A「のれん」償却減損リスク なお懸念」
という見出しの記事が掲載されました。

この記事では、「のれん」を巡って、国際会計基準(IFRS)で定期償却を導入することに慎重論が強まっていることが紹介されています。
具体的には、国際会計基準審議会(IASB)の会合で、「のれんの定期償却導入の是非」について採決が実施されて、定期償却の導入に反対の理事が8人、賛成の理事が6人だったことが記載されています。

「積極的にM&Aを手掛けてきた企業を中心に反対意見が強まっている」(IASB関係者)ことが背景にあるという表現が記事にはありますが、私の感覚とはズレがあります。

経理関係の皆さんはいかがでしょうか。

私の感覚では、
・IFRSではのれんは償却しない
・IASBで議論が始まったとはいえ、定期償却導入については、まだまだ消極的というものでした。

ところが、
・「のれんの定期償却導入の是非」について採決が実施された
・賛成派が14人中6人もいる
・反対派の一人でも賛成に転じたら、五分五分なるところに来ているさらに、記事によれば、IASB議長のハンス・フーガーホースト氏は、「賛成派」とされています。そして、ハンス・フーガーホースト議長は、「のれんの定期償却導入の是非」の採決の結果について、反対の理事は「8人だけだった」と表現しているようで、「今後、賛成派による反対派への働きかけが続くもよう」のようです。

『今回の採決は最終決定ではなく、のれんの定期償却が導入される可能性は残る。IASBは議論を続け、年内にたたき台をまとめる。その後、2020年以降に公開草案を取りまとめるかどうか決める。』

とありますから、これまで我々日本人が持っていた感覚と異なり、IFRSで「のれんの定期償却」が導入される可能性が、非常に高まっているように感じます。

「のれんを償却しなくてよいからIFRSに移行したのに」という企業は、はしごを外される可能性が高くなっているということです。

また別の観点で言えば、ピュアIFRSが、修正国際基準(JMIS)に近づいているともいえるでしょう。採用企業が1社もない会計基準ですが、日本が主張する「あるべき国際基準」としての存在価値が、再認識されることにもつながるように思います。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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