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東京証券取引所の市場改革(再編)と会計基準

コンサルタントの眼

連結決算効率化のアプローチとしての連結仕訳の見直し

■ 連結決算の効率化、具体的にどこから手を付けたらよいか
多くの3月決算の連結決算チームでは、4~5月の残業が多くなっているのではないでしょうか。連結決算効率化は、関連するチームにとっては切実な問題になっています。しかしいざ効率化といっても、「具体的にどこをどうすればよいかわからない」、「他社はどうしているのか」という声をいただくことがあります。
そこで今回は、どこの会社にも必ずある連結仕訳を見直すことで図れる効率化について、弊社連結会計システムSTRAVISでの事例を交えてご紹介します。

■連結システムでできること:仕訳の自動化
連結システムを利用すると、投資と資本の消去、債権債務の相殺消去、内部取引高の相殺消去、当期純損益の按分、のれん償却、貸倒引当金調整、未実現損益消去、連結上の税効果といった定型の仕訳は自動仕訳を起こすことが可能です。また上記の定型仕訳でないものについても、自動仕訳にする余地があります。
例えば、子会社の利用している特定の勘定科目を親会社の会計処理に合わせて他の勘定科目に振替える仕訳や、各社のPLを合算した結果、両建てとなってしまう為替差損益を最終的に損または益に寄せるための振替仕訳を、手仕訳で入力している例が多いのではないでしょうか。

これらの仕訳は、単に特定の数値の振替仕訳にすぎません。このような仕訳はシステム内に保持する数値を参照して振替仕訳を起こせばよいため、自動仕訳として連結システムに設定できる可能性があります。STRAVISでは「ユーザ定義仕訳」機能を用いて、単純な数値振替仕訳を自動仕訳として設定することができ、自動仕訳化により手仕訳の削減が実現できます。

■それでもなくならない手仕訳の連結システムへの入力の効率化
手仕訳の自動化を進めたとしても、手仕訳が全くなくなることはありません。
手仕訳は人手が介入するため数字の打ち間違いや、誤った設定をしてしまうリスクがあります。また、どうしてその仕訳を入れたのかがわかりにくく、属人化しやすいリスクもあります。したがって手仕訳は少なければ少ないほど良いといえます。
大量に手仕訳を入れているならば、エクセルで作成した仕訳データを連結システムへインポートする方法を用いることも効率化につながります。インポートのためのエクセルデータは、業務マニュアルやエビデンスの目的も持たせて作成すれば、業務の属人化も防げます。
STRAVISでは、データインポートに加えてEX-REPORTを利用すればエクセルから直接仕訳を取り込むこともできます。

■自動仕訳を手修正、は危険?
ほとんどの連結システムでは「自動仕訳」であっても修正が可能だと思いますが、「自動仕訳」を修正してしまえば、その本質は「手仕訳」です。にもかかわらず、システム上は「自動仕訳」の区分のままになってしまいます。
次回別の担当者が「自動仕訳」を修正する必要があるのか、そのままでよいのか明らかにする観点からは、「自動仕訳」は修正しないことが望ましいといえます。
STRAVISでは「自動仕訳を修正できなくする」という設定も可能です。気になった方はこの機会に設定を見直してはいかがでしょうか。

システムの特性を理解して使いこなすことは、連結決算の効率化につながります。STRAVISの使いこなしに不安がある場合は、弊社コンサルタントにご相談ください。
貴社の課題ヒアリングや使用状況のモニタリングを通して、より効率的な決算のための使い方を一緒に考えていきましょう。

担当:根本 靖子(ISID/コンサルタント)

中田雑感

東京証券取引所の市場改革(再編)と会計基準

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

2019年3月15日の日本経済新聞で、東京証券取引所が、現在2100社超ある東証1部の上場企業数を絞り込むという記事が掲載されました。
「1部の上場企業数は3割程度減る可能性がある」という表現もありました。

現在は以下の4つの市場に区分されていますね。
(1) 1部
(2) 2部
(3) ジャスダック
(4) マザーズ

この4つの区分を以下の3つにするという記事でした。
(1) 1部
(2) スタンダード
(3) 新興

新しい1部上場を維持できる時価総額の基準は、現行の20億円から250億円に引き上げることを軸に検討して、時価総額で見ると、1部全体の3割超にあたる約720社が除外されそうだということです。
新しい1部企業には四半期決算での英文開示も義務づけるということにも触れられています。これは、海外投資家の日本株投資のハードルをできるだけなくしていく必要があるからだと思います。

また同年3月28日の日本経済新聞の記事では、日本取引所グループの清田CEOが市場区分の再編に関する論点整理について
「新しい市場構造は、できることなら2022年3月期までの新中期経営計画の期間中にできあがる形が望ましいと思っている」
との見通しを述べたようです。

さらに、同年5月8日の日本経済新聞に以下の内容の記事が掲載されました。

東証は3月27日に公表した論点整理で、将来の市場構造のイメージ図として再編後の3市場を横一列に並べた。
A市場は一般投資家の投資対象
B市場は高い成長可能性のある企業
C市場は国際的な機関投資家などの投資対象
と位置づける。

C市場が現在の東証1部に近いということです。

「東証1部上場企業といってもうちは実は中小企業ですから」などと謙虚な発言をよく耳にしますが、そういった企業にとって、かなり関心が高い問題ではないでしょうか。

私はこの一連の報道の中で、東証1部に残れない企業よりも、残る企業の問題を気にしています。それは、
「新しい1部企業には四半期決算での英文開示も義務づける」とか、
「C市場は国際的な機関投資家などの投資対象」
といった表現の中にある、「英文開示」と「国際的な」という言葉です。

新しい1部上場企業は、海外投資家に投資して欲しい銘柄だということになります。そうすると、日本の会計基準で財務諸表を作成するようでは、「海外投資家の日本株投資のハードル」がまだ残っていることになるでしょう。

したがって、新しい1部にとどまる企業は、国際財務報告基準(IFRS)を適用することが義務付けられるのではないでしょうか。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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