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経理人材育成と社内研修

コンサルタントの眼

~ROIC経営とシステム~

近年、「企業価値の向上」というテーマを、多くの企業HPで見かけます。
「企業価値の向上」をテーマとする企業にとっては、「資本効率性」、つまり、「企業が事業活動のために投じた資本を使って、どれだけ効率的に利益を生んでいるか。」という点が重要になってきます。企業では、この資本効率性を測るため、ROIC、ROA、ROEといった指標が用いられていますが、この指標をどのように見える化していくかという点が非常に難しい問題となります。

私は、普段、経営管理領域におけるシステム導入に携わっておりますが、現在、「グループ経営管理の高度化」を目的として、グループ全体の経営指標として設定された「事業別ROIC、事業純利益、経常利益」等のサマリ情報から各社の明細にドリルダウンした情報を、システム上で「見える化」していくというプロジェクトを担当しています。

そのプロジェクトでは、もちろん、上記の経営情報を自動算出、見える化できるシステムを構築していくことになるわけですが、例えば、事業別のROICを算出するとなった場合に、計算式は「税引後事業利益を投下資本で割る」とシンプルそうに見えますが、実際はそこに至るまでが簡単ではありません。各事業の投下資本や利益をどのように定義するかといった点は、管理会計の世界となり、全て定義していく必要があります。

事業別利益を算出するには、複数事業の製品を製造している工場の減価償却費はどこの事業に帰属させるか?、複数製品を担当している担当者の人件費は?、グループ共通費や本社経費の配賦は?といった課題が出てきますし、事業別投下資本に関しては、売掛金、在庫、固定資産等がそれぞれどの事業に帰属するかといった定義が必要になり、BS管理が必須になってきます。

これらの課題をクリアして、はじめてシステムが構築されることになりますが、システムが構築されて終わりではなく、次のステップとして、経営層~現場の各階層へのROIC等の考え方(多くの場合はそれより前のBS管理)の啓蒙・教育活動が必要になります。特に通常そういったことを意識していない現場担当者への浸透はかなり難しく、このお客様は、現在も継続して啓蒙・教育の取り組みを実施されております。

まだまだ取り組み途中のプロジェクトではありますが、まずは「見える化」できる仕組みがあることが、大前提となりますので、その意味では第1ステップをクリアした状態となっております。このプロジェクトでは、グループ全体のサマリ情報は管理連結パッケージ、各社の業績管理情報は予算管理パッケージ、さらに細かいトランザクション情報はERPといったシステム構成で実現されておりますが、最近では、グループ全体の連結サマリ情報~細かいトランザクションデータまでを1パッケージで取り扱えることを謳った経営管理のパッケージも出てきております。

上記のパッケージをはじめ、弊社では経営管理領域のソリューションを複数取り扱っておりますので、同様の課題、お悩みをお持ちの場合は、弊社を通じて、情報収集、ご相談頂ければ幸いです。

担当:高橋 良(ISID/コンサルタント)

中田雑感

経理人材育成と社内研修

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

最近、連結グループの経理部門の担当者を対象にした、グループ企業内の研修に、講師としてご依頼いただくことが増えてきました。

研修項目は、
(1) 予実管理の課題と見直す場合の方向性
(2) 会計基準の改訂(収益認識・リース)
(3) これからの経理人材が持つべき会計的視座
(4) 経理部門をとりまくデジタルテクノロジーの活かし方

などです。数年前までは、予算の削減などもあって、経理人材を育成するためにコストをかける企業が相当程度減少している傾向にありましたが、経理人材の減少やスキル不足が、次第に深刻になってきているように感じています。

(1)のテーマは、古くからあるテーマです。
毎年作成される予算が、会社全体で信頼されていないまま新年度のスタートを迎え、月次実績が集計されて予算と比較した際に把握される予実差異について、現場部門に説明を求めても、納得のいく回答が得られない、という不満をなんとか解消したいという要求が根の深いところにあるようです。

(2)のテーマは、新しい会計基準を適用する手続きを理解するだけでなく、新しくできた会計基準がなぜできたのか、会計基準とビジネスの関係はどう考えればよいのかといった、「会計の本質」を理解することが、今後の経理マンにとって有用だと考える企業が徐々に増えているように感じます。

(3)のテーマは、今後の制度会計の方向性を理解しながら、制度会計と経営のための会計を考える上で、経理マンとしての「ものさし」をきちんと持つことが必要だと感じられ始めているようです。

(4)のテーマは、ITリテラシーが比較的低いと言われる経理部門においても、人口知能(AI)、ロボティクス(RPA)あるいはデジタイゼーションやデジタライゼーションなどの「デジタルテクノロジー」を活用して、経理業務の効率を上げることで、残業を削減したいという関心が高鳴っているのだと感じられます。

いずれも一方通行の講義ではなく、グループ・ディスカッションと発表、そして質疑などを通して、社内やグループ企業内での研修の中で、参加者同士の意識の違いや、課題の捉え方の違い、そして変革を阻む阻害要因の識別の仕方の違いがわかることで、「組織として変えていく」という意識を醸成し行動につなげたい、というCFOや経理部長が増えている実感があります。

日本企業の経理部門は、このまま変わらないですむはずはありません。もちろん変わらないという選択をすることはできます。しかしそれは、相対的に、他社よりも品質と効率の悪い組織になってしまいます。もっとも重大な問題は、経営者が経営判断に用いる会計情報の品質が落ち、経営スピードを遅くさせることで、徐々にビジネスの優位を失っていくことにつながってしまうことです。

今後の経理部門はどん欲に最新情報を収集し、変化していく状況が経理部門のあり方とどのようにかかわっていくのかなどについて、ぐるぐると考えをめぐらす必要があるでしょう。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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