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電子帳簿保存法によるスキャナ保存申請の動向

コンサルタントの眼

連結会計業務 効率化のための自動化について考える
~RPAその前に~

様々な企業の連結会計業務を支援している中で、連結会計組織に求められる役割が年々大きくなっていることを感じます。従来の制度連結業務に加えて、管理連結業務(月次連結、予算・見込・中計業務、多軸分析業務)に連結会計組織が今まで以上に貢献することが求められています。そのような状況の中でも、自社の人手は増えず、働き方改革で労働時間の削減が求められているため、連結会計業務の効率化、分散化に対するニーズはとても強く、このようなニーズに対応するために、「効率化」と「アウトソース」を検討され、弊社にご相談いただく企業が増えてきています。

今回は、「効率化」の根幹をなす連結会計業務の「自動化」にフォーカスして、弊社の連結システムSTRAVISを例に業務ごとにソリューションをご紹介します。

【用語説明】
・STRAVIS-LINK:STRAVISで連結会計処理を行う上で必要なデータを収集するためのシステムです。
・STRAVIS:連結財務諸表を自動作成する連結会計処理エンジンです。
・STRAVIS-BRIDGE(オプション):個別会計システムからのSTRAVISへのデータ連携ツールです。
・EXCEL-INTERFACE:ExcelデータをSTRAVISに取り込むためのデータに変換するツールです。
・EX-REPORT(オプション):Excel関数を使用してSTRAVIS、STRAVIS-LINKのデータを取得することで、
レポート作成を支援するExcelのアドインツールです。逆にExcelデータをSTRAVISに反映することも可能です。

■収集業務
「個別会計システムと連結会計システムのデータ連携」が主たる自動化の対象となります。STRAVISでは「STRAVIS-BRIDGE」を使用することで個別会計システムとSTRAVISとのデータ連携による入力業務の自動化が可能です。 収集業務における子会社の入力時間と子会社の入力ミスを発見、修正するために親会社が時間を要しているケースは多いため、自動化を検討する価値は大きいと考えます。

■連結精算業務
「データ入力業務」と「連結処理を実行するオペレーション」が主たる自動化の対象となります。仕訳データや各種連結処理のためのデータ(在庫データや税率など)の入力業務については、STRAVISでは「EXCEL-INTERFACE」や「EX-REPORTのデータ反映機能」があります。ExcelからSTRAVISへの手入力と比べると手間がかからず、手入力をミスするリスクもなくなるためチェック業務も削減することができます。連結処理を実行するオペレーションについては、「ユーザ定義一括処理」を活用することで一連の連結決算処理(例えば、外貨換算→資本連結→内部取引消去→未実現利益消去→連結精算表出力)を自動化することが可能です。担当者が細かいシステム操作を覚える必要がなく、処理漏れのリスクも低減することができます。

■分析業務・帳票作成業務(開示資料基礎データ作成業務など)
「連結システムからワークシート(Excel)へのデータ取得」が主たる自動化の対象となります。STRAVISでは、EX-REPORTを活用したワークシート作成の自動化が可能です。VLOOKUP関数の多用や複数シートにまたがる数値の参照は、ワークシートの作りを複雑にして集計ミスのリスクを高め、メンテナンス性も著しく低下します。EX-REPORTを使用すると、リアルタイムにSTRAVIS-LINK、STRAVISの保持するデータをExcel上に取得できるためワークシートの作りをシンプルにすることができ、連結数値変更の際の再作成も容易にすることができます。分析・帳票作成業務も収集業務と並んで作業量が多い業務であり、効率化の余地が大きい業務です。

■開示作成業務
「連結システムの情報の開示システムへの取り込み」と「連結システムと開示システムのデータ連携」が自動化の対象となります。連結システムの情報の開示システムへの取り込みについて、STRAVISには宝印刷株式会社のX-Smart.や株式会社プロネクサスのPRONEXUSなどの開示システムにSTRAVISで保持する情報をCSVファイルなどを介して連携する機能があり ます。開示システムのグレードにより連携できるデータは異なりますが、財務諸表本表のデータや注記データを連携可能です。上記では人手によるデータ作成→取り込みの作業が必要ですが、更に進んだ自動化として、STRAVISと開示システム間のデータ連携も自動化可能です。(例えば、宝印刷株式会社のX-transferなどのサービスがございます。)


最近では、自動化というとRPA(Robotic Process Automation)が真っ先に浮かぶ方も多いと思いますが、そもそも製品に搭載されている自動化機能は多くあります。特に連結会計領域は単体会計領域に比べると、伝票力業務などのRPAに向く反復的な業務が多くないため、まずは連結会計システムや開示システムの自動化の機能を使いこなすことを検討することも、効率化に向けた自動化の有力な選択肢と考えます。
決算効率化のコンサルティングやSTRAVISや関連するオプション製品について疑問点がある場合は、弊社の営業かコンサルタントに一度ご相談いただければと思います。

担当:鈴木 友二(ISID/コンサルタント)

中田雑感

電子帳簿保存法によるスキャナ保存申請の動向

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

スキャナ保存申請について、国税庁の統計情報が更新されました。2017年度(2017年7月1日から2018年6月30日までのお役所の業務年度)での申請状況が追加されています。スキャナ保存申請は、領収書や請求書などのエビデンス(税務上保管が義務付けられている「国税関係書類」)を電子的に保存して、「紙」の文書を捨てることができるようにするために、税務署に申請するものです。


仕訳帳や勘定科目元帳などの「国税関係『帳簿』」については、1997年から電子保存が認められました。一方、領収書や請求書などの「国税関係『書類』」については、2005年から電子保存が認められました。これが「スキャナ保存制度」の新設です。いずれも税務署に申請して承認される必要があります。
2015年6月末までの累計承認件数は、「国税関係『帳簿』」が、177,180件もあったのに対して、「国税関係『書類』」は、152件しかありませんでした。


日本企業の経営スピードを遅らせているのは「紙文化」中心で、管理業務が「紙」を中心に手続きが行われていることが、重大な原因であるというのが共通認識になりました。会社に保管されている文書のうち、実に70%が「国税関係書類」だという話もありました。


そこで、2005年に「スキャナ保存制度」が新設されたのです。しかし、2005年から2015年の10年間で、たったの152件しか承認されなかったために、2015年9月30日に、電子帳簿保存法が改正され、申請要件が緩和されました。また国税庁のスタンスも、スキャナ保存申請の内容に対して、厳しくチェックする方針から、申請があればほぼ承認する「みなし承認」に、180度の方針転換になりました。


この効果として、スキャナ保存申請の承認件数は、2015年度に233件、2016年に680件と、10年間の累計で152件しかなかったものが、着実に増加していました。


冒頭お知らせした国税庁の統計発表で、このスキャナ保存申請が2017年度でどのようになったかがわかるのです。今年度(2017年7月~2018年6月)の承認件数は、809件。累計ベースで、1,846件になりました。昨年度の承認件数が、680件でしたから、承認件数は129件(約19%)の増加です。申請する流れが徐々に拡大しているように感じられます。


私が直接お話を伺った企業でも、大手上場企業が申請され、領収書や請求書を廃棄し始めています。


ちなみに、2017年度に「申請」されたのは838件ですが、そのうち、却下されたのは、たった1件だけでした(昨年度は3件)。やはり、申請すればほぼ確実にそのまま受理されていますね。
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/sonota2017/denshichobo.htm

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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