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金融庁長官の人事

コンサルタントの眼

会計領域でのブロックチェーン活用への期待

ブロックチェーンとは
ブロックチェーンは仮想通貨に用いられている分散型の台帳技術です。その原理を説明しようとすると技術的な話になってしまうため、今回はブロックチェーンが持つ特性と、それが会計領域にどのように活用され得るかについてお話したいと思います。

ブロックチェーンの持つ1つ目の特性は、非改竄性です。ブロックチェーンにより記録された台帳は、改竄しようとすると分散した膨大な一連のデータの書き換えが必要になり、理論上改竄は不可能と言われています。2つ目の特性は透明性です。ブロックチェーンで記録された台帳は公開されることで、一連の記録の透明性を確保することができます。

これらの特性により、ブロックチェーンは仮想通貨のみならず、金融を中心に様々な分野で応用のための実証実験が進められています。会計領域においても、ブロックチェーンの活用が議論されており、次のような分野での利用が期待されています。

期待1 送金
これは会計というより金融分野になりますが、金融機関の台帳をブロックチェーン技術で接続することで、信頼ある第三者の仲介なしに決済でき、送金コストを低減できるという期待があります。この実現のためには金融機関同士でルールや仕様を標準化する必要があり、複数の開発・検証コンソーシアムで議論が進められています。

期待2 契約
ブロックチェーンを利用したスマートコントラクトという技術があります。この技術により、契約とその履行である取引や決済を、信用担保のための第三者を介さず自動的に記録し処理することができます。スマートコントラクトという考え方は、法学者・暗号学者のNick Szaboにより提唱された概念ですが、ブロックチェーンの登場により実装が進んでいます。

期待3 監査
トランザクションを改竄不可能かつ追跡可能なブロックチェーンで処理することにより、信憑性を確認するプロセスを自動化し、監査に掛かる時間を大幅に短縮することが期待されています。四大会計事務所もブロックチェーンに関するコンソーシアムへの参加や、ブロックチェーンに関する調査レポートの発行など、ブロックチェーン技術の会計への活用に取り組んでいます。

会計領域でブロックチェーンのメリットを享受するには、企業間でルールや仕様を定めていく必要があり、まだまだ課題はあります。しかし、複数のサービスプラットフォームや開発・検証を行う企業グループが実用化に向けて実証実験を進めており、今後の動向が注目されます。

担当:近藤 洋介(ISID/コンサルタント)

中田雑感

金融庁長官の人事

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

金融庁長官が森氏から遠藤氏に変わる人事が発表されました。森氏は、地銀の再生を本格化させるなど、かなり活発な施策を打ち出して、実際に実行してきました。最初の2年間は、官邸の評価も高く、信任されていたようです。しかし最近になって、仮想通貨の問題やスルガ銀行の問題が続き、厳しい目が向けられていたようです。私たちにとって金融庁はとても関わりが深いので、遠藤長官になって路線変更があるのか、どの施策に変化があるのか、注視したいと思います。


特に、2016年4月の金融庁金融審議会ディスクロージャー・ワーキング・グループ(以下、DWG)の答申の内容が、引き続き積極的に推進されるのかどうかに注目したいです。DWGで答申されたことで、すでに2017年3月期から実行に移された項目は、以下です。



1.決算短信の作成意義である「タイムリー・ディスクロージャ」を明確にする施策
・決算短信を対象とする監査・四半期レビューが不要であることを、改めて明確化する
・「経営方針等や経営者による経営成績等の分析等」の記載を削減する


2.有価証券報告書での「非財務情報開示」の充実として、決算短信で開示されていた
「経営方針等や経営者による経営成績等の分析等」の記載を充実させる


3.有価証券報告書と事業報告・計算書類の記載内容の重複・ムダを削減するために、
大株主の状況の取扱いを共通化したり、新株予約権等の開示内容を合理化する


4.株主総会日程の後ろ倒しの制約となる、法人税確定申告書の延長期限を、
1ヶ月から4か月に変更する


DWGの答申内容で、まだ実現されていない項目で、私が注目しているのは以下です。


1.有価証券報告書と事業報告・計算書類の一体化

2.株主総会資料の電子化、特にEDINETに登録すれば、招集通知に計算書類を添付する必要をなくす

3.株主総会日程の後ろ倒しを実現し、有価証券報告書作成から1ヶ月後に株主総会を開催させる

4.単体IFRSの任意適用


これらの動きは、当然、金融庁単独では実現しないために、これまでは、森氏のリーダーシップが発揮されてきたわけです。それが、遠藤氏に変るとどうなるのか。経理の現場を直撃する課題であるだけに、とても強い関心を持っています。


さらに、もっと大きな動きとしては、国際会計基準(IFRS)への対応です。2013年に安倍政権が発足して、金融庁企業会計審議会の答申、いわゆる「当面の方針」で、「当面」先送りが決定されたIFRSの強制適用ですが、任意適用が拡大している状況になり、いよいよ再検討が始まるのではないかと感じていました。
この点も、森氏から遠藤氏に変ってどうなるのか。注目したいです。金融庁長官と同じ「位(次官級ポスト)」である、金融国際審議官としては、氷見野氏が留任するようです。そうなると、2013年以来の、「IFRS任意適用拡大推進」の方針に変更はなく、任意適用が拡大した暁には、「全面強制適用」を検討する動きが出てくるように思います。


最後に、今年(2018年)6月28日にDWGの答申で以下の文言で、四半期開示義務化の廃止について記載がありました。「現時点において四半期開示制度を見直すことは行わず、今後、四半期決算短信の開示の自由度を高めるなどの取組みを進めるとともに、引き続き、我が国における財務・非財務情報の開示の状況や適時な企業情報の開示の十分性、海外動向などを注視し、必要に応じてそのあり方を検討していく」つまり、四半期開示義務化の廃止は、「当面」先送りされたわけです。これがまた、森氏から遠藤氏に変ったことで、継続されるのか、見直されるのか、淡い希望をもって見守っています。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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