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経理部門のスキル不足

コンサルタントの眼

経費精算システムに求められるもの

働き方改革というキーワードから、経費精算システムの検討をされている企業とお話をする機会が多くあります。多くの企業がおっしゃるのが、申請にかける時間を減らせると働き方改革を実感しやすいだろう、というストーリーです。

そこで、経費精算システムに求められること、重視すべきことについてご紹介し、システム選定の一助にしていただければと思います。

<経費精算システムに求められる機能>

入力のしやすさ
・システムによるチェック
・タイムスタンプ対応
・モバイル対応
・会計システム連携
・人事システム連携
・カスタマイズ

■入力のしやすさ
経費精算システムは主に社員が使用するため、社員の賛同を得られなければ導入はうまくいきません。できるだけ少ないアクションで申請を行うことが、申請者に負担をかけないという点で重要です。経路検索サービスと連携して金額を提案するだけでなく、過去に訪問したお客様は、お客様名を入力するだけで経路や金額が埋まるところまで実現するのが親切です。何を買ったかを入力すれば、自動で科目と結びつけば申請者が勘定科目を考える必要がありません。このようなシステム側から提案してくる仕組みも重要ですが、見ただけで何を内容を入力すればいいかわかる、といった画面の作りも大切です。

■システムによるチェック
入力のしやすさと同時に、ミスや不正を未然に防ぐような仕組みも求められる機能です。日当が複雑な企業は多いにも関わらず、申請者が出張規程を覚えていることはまずありません。このような場合も、出張の日にちごとに自動で規程から提案できれば、申請漏れや不正受給を防ぐことにもつながります。また、交際費の単価チェックですが、これも経理担当者が計算するのではなく、自動で単価を出して、さらに適切な金額を超えた場合はアラートするような仕組みなどが考えられます。そして、重要なのはこれらのチェックをシステム会社ではなく、経理担当者自身でも追加変更が容易にできることです。

■タイムスタンプ対応
経費精算でいうタイムスタンプとは、領収書をいつ入手したかを証明することです。これまでは、領収書を台紙に貼り、上司や経理の判子をもらうのが一般的でした。タイムスタンプ対応とは、働き方改革やペーパーレスと同時に語られることも多く、経理担当者を惹きつけるワードのひとつです。領収書を入手したら、その場でスマートホンで写真をとって申請するといったことももはや夢ではありません。厳密には領収書をその場では捨てられず、会社で一定期間保管しますが、一番の違いは原本ではなく電子データが正になることです。そのため、今までのように倉庫を借りて領収書を保管し、監査の際に探しに行くような手間は不要です。

■モバイル対応
モバイルに求められるものは、いつでもどこでも場所を問わず、ということです。上述のタイムスタンプと組み合わせれば、出張の帰りに会社に寄って申請し、戻ったついでに他の作業もして…、といった負の連鎖からも解放されます。

■会計システム連携
ここまでは働き方改革から連想しやすい機能の紹介でしたが、経理担当者にとっては会計システム連携が重要です。経費精算に特化したシステムは、会計システムと連携するため、CSVの加工だったり、個別開発が必要があったり、といったことが多くあります。また、連携を容易にするために、経費精算システムを会計システムに寄せてに使用することで申請者に負担を強いるケースや、会計システムへの連携のために経理が勘定科目を設定しなおすケースなどをよく聞きます。会計システムへの連携に柔軟な設定ができ、申請者も経理担当者もお互いに手間がかからないことが重要です。

■人事システム連携
これも見落としがちですが、重要な機能です。 経費精算システムというと経理部門がメインになり、会計システムへ連携するところまでは容易に想像できます。しかし、人事システムの連携が実は非常に重要なポイントです。経費は社員が自ら申請するため、社員情報が必要です。また、社員が申請すると、その上司が承認することが通常です。その上司はどのように決まるかというと、部署であったり役職であったり、まさに人事の組織情報を使用することになります。そして、人事情報は部署移動等で月次や四半期単位で頻繁に変わるものです。この連携を無視していると、運用が始まってから非常に苦労することになります。

■カスタマイズ
カスタマイズと聞くと、敬遠されるかもしれませんが、会社特有の表現やどうしても必要な項目がある場合は変更したくなると思います。SaaSでさまざまな会社が使うようなパッケージの場合、これらのカスタマイズができないかもしれません。結果として、システム変更前より使いづらくなってしまうこともあります。どこまでカスタマイズできるのか、アドオンは可能なのかといった観点もシステム選定では重要なポイントになります。

以上のような観点で、働き方改革というワードに踊らされることなく、経費精算システムの本質を捉えてシステムのご検討をいただければ幸いです。

担当:沼 健一(ISID/コンサルタント)

中田雑感

経理部門のスキル不足

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

「連結決算担当者のスキルは十分か?」という質問に対する回答は、以下のようでした。
(1) 十分である :14%
(2) ちょうど良い:38%
(3) 不十分である:48%
半数近くで「スキル不足」という回答です。

これに対して、スキル向上に向けた取り組みとしては、
(1) 業務引継ぎによるスキル伝授(OJT) :70%
(2) 担当者による自己学習(自己啓発)  :67%
(3) 監査法人のセミナーや研修会への参加 :66%
が、他の回答を圧倒的に引き離していました(複数回答可)。

OJTと自己啓発といったこの上位二つは、過去に実施した人材育成をテーマにしたサーベイでもダントツの上位です。しかし、残念ながらこの二つは、スタッフに期待し「会社としては何もしていない」のに等しいと言えるでしょう。

スキルが不足していると認識しているのに、有効な取り組みを行っていないのでは、いつまで経っても、スキル不足という課題は解決しないでしょう。一体経営者は何を考えているのでしょう。多くの企業の経営者は、経理人材の重要性を理解できていないように感じられます。

このような実態の中でも、最近の会計基準の重要な新設・改訂の動きをキャッチアップする必要性などから、個別の社内研修会の講師を依頼されることが増えてきました。最近実施した社内研修会では、「わかりやすい書籍を探すのではなく、会計基準の条文を直接読み込んで、自分で理解することの必要性や重要性がわかった」とか、「新しい会計基準が従来の会計基準とは、全く異なる原理・原則で作られていることがわかり、もっと根本的な理解ができるように勉強する必要性を感じた」という感想をいただいています。個別研修会で講義をする際には、必ず受講される方々には「皆さんは恵まれていますよ」と言っています。なぜなら、スキル不足の現状を把握しながらも、ほとんど何もしてくれない上場企業がほとんどで、特に最近では、経理部門の予算削減で、「旬刊経理情報」や「週刊経営財務」などといった経理情報誌の定期購読ですら、やめてしまっている上場企業も多いからです。
外部から個別に研修会講師を招聘するケースはかなり稀ですので、監査法人のセミナーや研修会を利用することになります。これも有料だと参加しにくくなり、無料だと今一つ満足できるものは少なくなります。

したがって、ISIDや皆さんが利用している財務会計システムのベンダーに、皆さんが欲する研修会やセミナーの開催を希望する意見をどんどん出してはいかがでしょうか。ベンダーが自ら、皆さんのニーズを推し量ることには限界があります。皆さんからの直接の「声」が、非常に重要になるでしょう。自ら「声」を上げないと、迅速かつ適切に変えていくことはできないと思います。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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