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新しい「収益認識基準」が及ぼす税務への影響

コンサルタントの眼

専用パッケージシステムの活用

読者のみなさまは、今どのような会計システムを利用されているでしょうか。

いまこの記事をお読みになっている方の中には、会計システムを直接実務で利用している方としていない方、もしくはシステムを管理されている立場の方など、様々な方がいらっしゃるかと思います。

ご利用中のシステムに対する課題認識や思いもそれぞれの立場がおありかと思いますが、今回は、私が直接担当させていただいたお客様で、会計業務の一部をERP(Enterprise Resources Planning )から個別の専門パッケージに切り替えることで、現場の業務改善、システムの運用コストの削減に成功されたケースがありましたので、その事例も踏まえ、個別専門パッケージの活用についてお伝えできればと思います。

※ ちなみに、ここで言う"個別専門パッケージ"という表現が一般的に正しいかどうかは別として、連結会計(弊社のSTRAVISにあたる)や固定資産などの特定業務領域を専門的に扱うシステムと捉えていただければと思います。

個別専門パッケージの特徴としては、主に以下のような点が考えられます。(採用するパッケージやベンダーに依るところはありますので、一般論として述べます。)

<個別専門パッケージの特徴>
・機能の充実度が高い(かゆいところに手が届く仕様、カバー範囲の広さ)
・法制度対応スピードの速さ
・導入・サポート担当者の専門性の高さ

これらは一見、経理の現場目線に偏った内容に見えがちですが、結果的には下記のように導入・維持コストの削減、システムメンテナンス性の向上にも大きく寄与することとなり、システム部門やシステムを管理者の立場でも大きなメリットと言えます。

<個別専門パッケージの特徴>
・機能充実度の高さ==>標準機能の効果的な活用によるアドオン、カスタマイズ費用の抑制、メンテナンス性の向上
・法制度対応スピードの速さ==>法制度施行までの充分な時間を確保することにより計画的なシステムリリース(VerUP等)をおこなうことでシステム管理メンバーの負荷、法制度対応コストの削減が可能
・導入・サポート担当者の専門性の高さ==>円滑な要件定義の実施、豊富な経験に基づく対応により、ユーザとベンダー間の調整負荷(仕様決めや課題検討など)が低減

実際、私が担当させていただいたお客様においても、個別専門パッケージを効果的に活用することで、ERPを使用していた時よりも、

・標準機能の効果的な活用によるアドオン費用の削減
・システムの利用ユーザ拡大による閲覧専用資料の作成負荷を大幅削減
・標準帳票の活用による管理帳票類の削減

などの多くのメリットを感じていただいております。

同じシステムを長く利用していると、そのシステムの仕様や使い勝手を『当たり前だと思って使い続けていた(他にも便利なものがあることを知らなかった)』というお客様の声はよく伺いますが、現状抱え続けている課題は何かしら解決する方法があるかもしれません。"システムを変える"ことは、中長期目線での検討が必要かもしれませんが、まずは現状利用しているシステムにおいて、課題を抱えていたり、改善の必要性を感じている場合には、弊社のような中立的なシステムベンダーを通じて、情報収集・相談をしてみてはいかがでしょうか。

担当:赤尾 光一(ISID/コンサルタント)

中田雑感

新しい「収益認識基準」が及ぼす税務への影響

公認会計士 中田清穂

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

今回も企業会計基準委員会(ASBJ)が今年7月に公表した企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」(以下本公開草案)について触れます。

本公開草案では、割賦販売の「延払基準」が廃止されます。その影響を受けて、平成29年12月14日に公表された平成30年度税制改正大綱(以下本税制改正大綱)でも、割賦販売の「延払基準」が廃止されることが明記されています。また、本公開草案では、返品の可能性が高い場合、引当金の計上ではなく、売上高から控除することになります。その影響を受けて、本税制改正大綱でも、「返品調整引当金」の取扱が廃止されることが明記されています。いずれもすでに2月2日の通常国会に税制改正法案として提出され、平成30年4月1日からの適用に向けて手続きが進んでいます。

この事実から二つの疑問が生まれます。

一つ目は、本来、上場企業にのみ関連するはずの会計基準の内容が、なぜ税制の改正によって、非上場の企業にも影響が及んでしまうのか。二つ目は、まだ公開草案でしかない段階であるにも関わらず、なぜ平成30年度の税制改正の手続きを始めているのか。
一つ目の疑問についてですが、本公開草案では、いわゆる「連単分離」ではなく、単体財務諸表に計上する売上高にも適用されることになります。したがって、会計基準と税制に差異が生じると、申告調整手続きが増え、事務作業が煩雑になるので、上場企業とその関係会社の経理手続きの煩雑さを避けることが目的なのだと思います。しかし、従来会計基準に準拠していない非上場企業は、従来通りに売上高を計上すればよいはずですが、税制が会計基準の影響を受けてしまうので、必然的に、従来とは異なる会計処理、つまり会計基準に準拠した会計処理に変更しなければならなくなることになります。

二つ目の疑問についてですが、本公開草案では、強制適用の時期は、平成33年4月1日に始まる会計年度からになりますが、早期適用が、平成30年1月1日、つまり今年からになります。したがって、本公開草案が完成して、今年の1月1日に開始する会計年度から早期適用する12月決算の会社や、今年の4月1日に開始する会計年度から早期適用する3月決算の会社にとって、今年の税制が本公開草案に合わせて改正されないと、会計基準と税制に差異が生じ、申告調整手続きが増え、事務作業が煩雑になります。そこで、本公開草案が完成した際に早期適用する上場企業と、その関係会社の経理手続きの煩雑さを避けることにしたのだと思います。しかし、本公開草案が完成しても早期適用しない企業にとっては、まだ現在の会計手続きで売上高を計上したくても、税制が先行して改正されてしまうので、会計基準と税制に差異が生じ、申告調整手続きが増え、事務作業が煩雑になってしまいます。ただ、返品調整引当金の廃止や割賦販売の延払処理の廃止については、経過措置がありそうなので、実際には影響はないかもしれません。ちなみに、早期適用をする可能性が高い企業は、国際会計基準(IFRS)を任意適用している企業だと想定されているようです。

以上のことを考えていくと、今回の「収益認識基準」の開発と税制の改正については、IFRSを任意適用している上場企業とその関係会社を優先した対応であるように感じています。

なお、このメルマガが発行される予定の3月9日には、ASBJの会議が開催される予定です。そこで、本公開草案の最終化が議決されると、いよいよ「収益認基準」が完成し公表されることになるでしょう。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

メルマガ事務局より

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