IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション
ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。
すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。
目次
「BEPS行動計画」というものをご存知でしょうか。
本メルマガをご覧いただいてる皆様は、単体決算や連結決算の経理をご担当されているので耳慣れない言葉かもしれません。
「BEPS行動計画」とは、OECD租税委員会がG20からの要請に基づき、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトを発足させたものであり、2013年7月には15の行動計画が、2014年9月にはうち7つの行動について成果物である報告書が公表されています。
この15の行動計画のうち、特に日系グローバル企業に影響が大きいとされるのが行動13(移転価格文書化の再検討)です。多国籍企業グループの各法人に関し、国別報告書(CbCR: Country by Country Report)と呼ばれる資料を作成し、所在国ごとの報告(国単位での報告)を要請しているのです。
このBEPS対応を行うのは企業の税務グループと考えられますが、連結決算グループにとって無関係ではありません。なぜなら、国別報告書の記載事項として、以下の各社別情報が求められていますが、ほとんどが連結決算時に収集している情報と重複しています。
・収入
・税前損益
・支払/発生法人税額
・利益剰余金
・従業員数
・グループ企業名
・グループ企業の事業活動等
すなわち、BEPS対応のために、税務グループから別資料で子会社から情報を収集するのではなく、連結パッケージの情報を上手く拾ってくることで効率的に進めることができるのです。
連結パッケージの情報を拾うといっても、数十社の子会社を持つ企業にとってはひとつひとつの会社のデータを統合するのは楽な作業とはいえません。
できれば、連結会計システムから直接国別報告書の記載事項対象をレポートしたいところです。
例えば、ISIDの連結会計システムSTRAVISでは、これが容易に実現可能です。
STRAVISには、財務情報・非財務情報を問わず収集が可能であり、それらを任意の項目だけExcelに自由に出力するレポート機能があります。国別報告書も例外ではなく、レポート化の対象とすることができるのです。
今回のBEPS行動計画は、業務効率化の一例に過ぎません。経理グループの収集する情報と他業務で収集する情報が重複し、管理も別々に行われている状況は望ましいものではありません。現在の業務またはシステムの見直しを、BEPS行動計画を契機に行ってみてはいかがでしょうか。
◇ 担当:寺村 航(ISIDコンサルタント/公認会計士)
こんにちは、公認会計士の中田です。
このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。
よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。
2015年4月15日、金融庁は『IFRS適用レポート』(以下、本レポート)を公表しま
した。
本レポートの作成目的は、金融庁のサイトにも記載されている通り、「IFRSへの
移行を検討している企業の参考とするため」のものです。
言い方を変えると、「IFRSの任意適用を拡大促進するため」とも言えるでしょう。
また、本レポートは、金融庁が自発的に作成したものではありません。
上述のサイトにもある通り、2014年6月24日に閣議決定された「『日本再興戦略』
改訂2014」で公表するように対応が求められたことを受けたものです。
つまり、安倍政権の政治主導のもとに、金融庁が作成したという流れの中にある
のです。
会計基準の問題はすでに、「企業の実態をどう表すか」、という会計論的な次元
ではなく、どのような会計ルールが、「日本企業のビジネスにとってより都合が
良いか」という国家経済的なレベルの問題になっているということです。
今回のメルマガのタイトルは、「『IFRS適用レポート』の用途」ですので、それ
は「IFRS任意適用企業数の拡大促進である」ということで終わりそうです。
ただ、私には、少し引っかかったことがあるのです。
まず、本レポートを公表した当日に、金融庁は企業会計審議会会計部会を開催し、
本レポートを提示しました。まずは、開催時期に引っかかりました。
4月15日という、3月決算企業であれば、決算の真っ最中に、企業サイドの委員や
監査法人の委員などを含めて、わざわざ招集して開催したのです。
このタイミングは、連結決算短信を作成する前に、このような動きを明らかにし
て、より多くの企業に、連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考
え方」において、少しでもIFRS任意適用に向けて積極的な表現をしてもらいたい
という意図があったのではないかと邪推できます。
実は、私は4月15日の企業会計審議会会計部会を傍聴しました。
審議会では、金融庁事務局が、本レポートを要約して説明したのですが、注意し
て聞いていると、以下の項目を強調していたように感じました。
(1).IFRSを適用するにあたっては、確かにコストがかかった企業もあるが、それほど多額のコストをかけずに適用できた企業もある。
(2).IFRSを適用する期間は長い企業が多いが、実は(ジミー発言以降)中断した期間が含まれているので、それほど時間はかからなかったかもしれない。
つまり、これからIFRSの適用を検討する企業に対して、ハードルが低いことをア
ピールしたかったのではないでしょうか。
そして、本レポートについては、全委員が大絶賛でした。
各委員が絶賛した最大のポイントは、IFRSを適用した効果として第1位に挙げら
れたのが、「経営管理に役立つ」ということです。結局、金融庁が作成した本レ
ポートは、企業会計審議会の「お墨付き」となったわけです。
金融庁は、IFRSを適用できない理由として、「コストや時間がかかる」という言
い訳に対する「武器」を手に入れたのです。
しかし、「『IFRS適用レポート』の用途」としては、「IFRS任意適用企業数の拡
大促進」だけなのでしょうか。最近、この企業会計審議会に出席したある委員と
の懇談で腑に落ちた話があります。
私がその委員に企業会計審議会で取り上げられた本レポートについて話を向けた
際に、その委員は、「あれ(本レポート)は、翻訳を作りたかったからでしょう」
と言われました。ここで私にはピンときました。
確かに、審議会の直後に本レポートの英語訳がアップされました。そして、2015年5月1日にIASBのウェブサイトで、本レポートが紹介されました。そこには、
IASBのHans Hoogervorst議長の以下のコメントが掲載されました。
「IFRS適用が任意である日本の特質を考えると、本レポートは、日本の主要な企
業がIFRSの採用を決定する前に実施した費用対効果の評価に関する大変有用な洞
察を提供していると考えられる。このように多くの日本企業が、グローバルで認
知された単一の会計基準としてIFRSを使用することによる多大なる便益を認識し
たことは心強いことである。」(JICPAのサイトから引用)
これは、金融庁が日本市場において「IFRSを顕著に適用する状態」に至らしめる
努力を、世界に示しているということだと思います。
その意味は、今月大阪・名古屋で開催するセミナーで詳しくお話ができると思い
ます。
いずれにしても、金融庁は本レポートを、「世界に向けた情報発信としても使っ
た」ということだと、私は考えています。
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