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IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション

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ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。

すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。

目次

コンサルタントの眼
〜 IFRS対応のためのシステム要件とは 〜

今回はIFRS対応のためにシステムに求める要件を解説させて頂きます。

I..一般会計システム

一般会計システムでは、下記のデータ出力が求められます。

  • 会社法で求められる単体財務諸表データ(JGAAP)
  • 金融商品取引法で求められる連結財務諸表の基礎データ(IFRS)
  • 税務申告関連データ

一般会計システムでは、これらの目的ごとに必要なデータを出力できる必要があります。 そのためシステム内で複数会計基準の情報管理が必要となります。 代表的な管理方法としては以下が考えられます。どの方法にするかは、各社で使用している一般会計システムの要件・運用方針等を考慮し決定する必要があります。

1) 複数帳簿での対応 会計基準毎に別帳簿として管理する方法です。利点としては、決算手続がわかりやすいことです。 基準毎に異なる仕訳を入力する場合、どの帳簿に入力すればよいか一目でわかります。 複数帳簿対応において考慮すべき点として、基準差異のない共通仕訳の転記に工夫が必要なことが挙げられます。 複数会計基準といっても、ほとんどの仕訳は基準間差異がありません。 これらの仕訳を2重で手入力することは不可能であるため自動転記のシステム的な仕組みが必要となります。

2) 仕訳の差分保持での対応 日本基準を基本とし、IFRSで異なる内容は差分仕訳として保持する方法です(基本とする基準をIFRSとするやり方もありだと思います)。利点としては、

  • 1. 科目体系だけで基準間差異を吸収できるため複数帳簿の仕組みを用意する必要がなく、複数帳簿対応していない会計システムを利用している会社での対応がしやすい点
  • 2. 基準間差異を勘定科目ベースで確認できる点

です。考慮すべき点としては、

  • 1. 金融商品の計算など、基準間で計算方法が全く異なる場合、差分仕訳は単なる計算差異でしかないため、差分の意味を仕訳から直接追うことができない点
  • 2. レポーティングを工夫しないとIFRSベースの財務諸表の出力が困難な点
です。

II..固定資産システム

固定資産システムに関しては、会計基準毎に固定資産明細を保持し、償却計算ができる必要があります。償却方法や耐用年数など、基準間差異が発生する事 項が多く、また、度重なる税制改正により減価償却計算が複雑になっており、会計基準毎に自動で償却計算を行う仕組みがないと業務対応が困難であるため です。税制改正やIFRS要件を満たす固定資産パッケージをベースに対応を進めた方が良いと考えます。以下は、主なIFRS要件となります。

【固定資産システムに求める主なIFRS要件】

   1. 会計基準毎に明細データを保持し、それぞれ異なる取得価額、償却方法、耐用年数、残存価額を設定できること
   2. 枝番等により明細管理ができること(コンポーネントアカウンティングへの対応)
   3. 減損の戻入ができること
   4. 稼働中の資産の償却方法、耐用年数、残存価額が変更できること(複数の資産を一括で変更できるシステムが望ましい)

III..原価計算システム

原価計算はIFRSの影響を大きく受ける領域です。原価についてはIAS第2号 「棚卸資産」で簡単に触れられている程度ですが、固定資産の減価償却費、 有給休暇引当金等、製造間接費に含まれる費目の扱いが基準間で異なるため、 原価の金額そのものが変わってきます。

会計基準毎に原価計算を行うのが理想ですが、原価計算システムは、各社固有 の要件があり、自社開発やパッケージ製品の大規模な作り込みで対応されてい る会社が多く、複数会計基準対応は容易ではないと思います。一つの考え方と して、原価指標をIFRSに統一し、詳細な原価計算はIFRSのみで実施し、JGAAP は原価計算システム外の簡易な調整にとどめる方法があります。この場合、 JGAAPでの計算の粒度をどれだけ簡易に抑えることができるか、早めに監査法 人と検討を進めることが必要であると考えられます。

IV.債権・債務管理システム

債権・債務管理システムは収益認識の論点を考慮する必要があります。JGAAP は出荷基準の会社が多いと思いますが、IFRSでは検収基準となるためです。 JGAAPも検収基準へ変更することができれば、債権・債務管理システム、販売 管理システムへの入力タイミングを検収時点にする等の対応ですむためシステ ムインパクトは少ないと考えられます。しかし、法律による規制や商慣習上の 問題がある業種については、JGAAPの検収基準への変更が困難であると考えら れます。この場合、債権・債務管理システムで出荷、検収の情報を管理するた めのシステム改修が必要となると考えられます。

なお、収益認識のもう一つの論点として総額主義から純額主義への変更があり ますが、これは一般会計システム側で差分調整を行えばすむ項目と考えられま す。

V.連結会計システム

連結会計においては、連結パッケージの作成やその運用方法(海外関係会社の ガバナンス等)といった関係会社の情報収集の仕組みの再構築が重要であると 考えられます。IFRSでは開示項目が莫大に増加するため、パッケージデザイン の大幅な変更が必要となり、また、IFRSには支配力に関する具体的な数値基準 がなく、連結範囲が増加し、収集対象が拡大する可能性があるためです。

この負荷の軽減のため、会計方針の検討の段階で、

   1.何らかの数値基準を設け、連結範囲を実務上対応可能な範囲に抑える
   2.重要性の低い関係会社は現行基準のままでよいこととする

といった交渉を監査法人と早めに進めておくことが必要だと考えられます。

担当:藤井一夫( ISIDコンサルタント / 米国公認会計士 )

<関連情報>

中田雑感              公認会計士 中田清穂
〜 はっきりしてきたアメリカのIFRS対応 〜

こんにちは、公認会計士の中田です。

このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。
よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

はっきりしてきたアメリカのIFRS対応

2月20から21日の両日、ロンドンで開かれたIFRS諮問委員会での、米国証券取 引委員会(SEC)主任会計士であるジム・クローカー氏の発言内容が、新日本 監査法人の以下のサイトで紹介されています。
http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-news/ifrs-news-us/2012-02-23.html

以下がジム・クローカー氏の発言内容の紹介記事の概要です。

  • (1) 日本では、米国におけるIFRS適用に関するSECの決定が延期されたことで、アメリカがIFRSに対して消極的な姿勢を示していると受け止める向きもあった が、他の案件の対応に工数をとられたためであり、決して、SECのIFRSに対する支持が揺らいでいるであるとか、SECがIFRSに対して暗に否定的なメッセー ジを発しようとしているなどと捉えてはいけないと明言。
  • (2) 今後数か月内に最終報告書並びに法令案を完成の上、これをSEC理事会に提出の予定。
  • (3) SECは、米国におけるIFRSの導入を、米国基準への「段階的組込」を通じて実現していくことを決定する予定。
  • (4) 米国における制度会計に関し、今後も最終的な責任はSECが持つことに変わりはない。
  • (5) 今後、米国企業が用いる会計基準については引き続き「米国基準」という名称を用いることとなる。
  • (6) 今後5年から7年ほどの時間をかけてIFRSを米国基準に徐々に取り込んでいくことになる。((3)の「段階的組込」の具体的な期間を明示した)
  • (7) IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」に基づく一斉遡及適用は行われない。
  • (8) SECのスタッフは、IASBの基準開発手続への参加を通じ、今後もIFRSの開発に対する強い影響力の保持を予定。
  • (9) 当面の間、国内企業のIFRS任意適用は認めない方向
私が特に注目した点は、「段階的組込」です。

「段階的組込」は、日本のコンバージェンスのように差異を少なくするものの 微妙に相違が残るような、類似する基準を開発するのではありません。 IFRSの規定が存在する部分は、該当する現行の米国基準をIFRSの規定と全く同 じものにそっくりそのまま入れ替えていくアプローチです。

たとえば、「減損会計」では、日本の会計基準にも新設されてコンバージェン スは終了していますが、IFRSの「減損会計基準」と日本の「減損会計基準」は そっくりそのまま同じものではありません。「減損の兆候の判定手続」や 「減損の戻しの取扱い」など微妙に相違が残っています。これが、日本がこれ までおこなってきたコンバージェンスです。

しかし、「段階的組込」は、IFRSの基準書と全く差異のない文章がアメリカの 会計基準に表現されるのです。そして、「棚卸資産」や「有形固定資産」など 一つひとつの基準を「段階的に」5年から7年ほどの時間をかけて、全ての米国 基準の内容が、IFRSと一言一句異ならないものにするということです。 したがって、これは実質的にアドプションです。 内容はアドプションなのに、「米国基準」という名前を付けただけと言えるで しょう。厳密には、原則としてIFRSに規定がない分野だけは、現在の米国基準 が残ります。

そして、私たち日本人が最も注視したいのは、現在金融庁で開催されている 「企業会計審議会」での今後の動向です。

今回のSEC主席会計士の発言で最も重要な影響がありそうだと感じたのは、 「段階的組込」をSECが採用すると明言したことで、日本もそれを参考にする (下品な言い方をすればマネをする)べきではないかということになりはしな いかということです。

これまでの企業会計審議会での議論は、日本でIFRSをアドプションするのは いつからかとか、どの範囲の企業に適用させるかということで、「アドプ ション」を前提に議論されてきました。 したがって、IFRS対応を中断した企業も、先行企業も、「初度適用」における 業務やシステム対応の負荷に対して、重大な関心と不安をもっていたと思いま す。

しかし、「段階的組込」であれば「初度適用」の心配が一切なくなるのです。 すなわち、(7)の発言にあるように、「初度適用」で要求される「一斉遡及適 用」をしなくてすむのです。これは、単に「遡及しないで済む」だけではなく 「開始財政状態計算書」をはじめとする、並行開示が不要となり、資本や包括 利益の調整表も不要になるのです。

これは、IFRSに対応する上では、実務上、決定的に重要なインパクトがあると 思います。

私は、ぜひ日本も「段階的組込」を進めるべきだと思います。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ
http://www.knowledge-nw.co.jp/

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