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ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。

すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。

目次

コンサルタントの眼
〜 「開発費の資産計上」が示唆するもの 〜

IFRS上は研究開発費のうち開発費に相当する部分を資産計上しなければならないとされています。

具体的にはIAS第38号の57項に規定があり、ごく簡略化して示すと以下のような6つの要件が示されています。

  • a)技術上の実行可能性
  • b)使用又は売却する企業の意図
  • c)使用又は売却できる能力
  • d)蓋然性が高く、将来の経済的便益を創出する方法
  • e)技術的、財務的リソースの利用可能性
  • f)支出を信頼性をもって測定できる能力
この中でも、最も議論となるのは d) の要件、つまり、その開発費が将来において経済的便益を生み出すことがどの程度確実と言えるか、という点ではないかと思います。

IFRSプロジェクトの現場で監査人と協議をしていると、研究開発プロジェクトにおける将来の収益性を精度高く見積もることは困難ではあるが、会計基準上一定の場合は資産計上が要求されている、そのため、販売することがほぼ明らかになった時点以降の支出を資産計上すべき、という議論になることが多いようです。

その中心的な議論は、単位としてはどの製品/商品を対象とするか、タイミングとしてはいつ会社として製品化を最終承認しているか、という点に集中する傾向があるように思います。

会計基準を適切に適用するという目的からすると、そのようなアプローチでよいのかもしれません。

しかし、財務諸表利用者の観点からすれば、その企業の競争力の源泉、例えばコア技術や様々な製品の基幹部品等の「技術単位(知財単位)」で開発費を資産計上すべきという意見もあると思います。

確かに、研究開発案件の収益性をどこまで管理できるか、そもそも研究開発管理自体は会計の守備範囲外ではないかということもあります。
しかし、多くの製造業で研究開発に対する多額の「投資」を行っていることを考えると、単に費用として流すのでなく、どのように資産として管理するかを考えるべき、というメッセージを発信することは会計の役割かもしれません。

 「開発にかかる収益性をもって見積もることができない」
 したがって、「資産計上は限定的」

という制度対応的なアプローチではなく、

 「財務報告の有用性(適切な開発費の資産計上)を向上させる」
 そのために、「研究開発の収益性管理を強化する」

という経営管理的なアプローチへの転換が求められているということではないでしょうか。

担当:桑原正博( ISIDコンサルタント )

<関連情報>

中田雑感              公認会計士 中田清穂
〜 対決!! IFRS推進派 VS 慎重派 〜

こんにちは、公認会計士の中田です。

このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。
よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

対決!! IFRS推進派 VS 慎重派

今回は2012年1月16日に発行された『週刊経営財務(No.3048)』の特別対談記事についての雑感です。

この対談は、『「IFRSを巡る諸問題」と「日本の進むべき道」』というタイトルで、IFRS推進派の実力者である島崎憲明氏と、IFRS慎重派の実力者である辻山栄子氏の二人だけの対談です。
企業会計審議会の論議がまとまりのない進められ方をしている中で、参考になる対談だと思いました。

この対談で注目した発言を以下に抜粋します。

【島崎氏の発言抜粋】

  • 2009年の中間報告では「日本だけが取り残されてはならない」という思いが強くあったのだと思う。
  • 経団連の2008年の提言書では、
    1.日本の金融資本市場の国際競争力の強化
    2.日本企業のグローバル展開基盤の整備
    の二つが、IFRS導入の意義である。
  • IFRSを日本で適用できるものにするためには、IFRSの基準作りに関連する各種組織のメンバーになり、IFRSの基準作りをする上で日本の発言力を高める必要がある。
  • IFRSを任意適用するだけでは、国として適用したことにはならないためにIFRSの基準作りに関連する各種組織のメンバーからはずされ、日本の発言力が弱まる。
  • すぐに適用する必要はないが、少なくとも7〜8割の上場企業にIFRSを強制適用させる状況にすることを、今宣言しないと、取り残される。
    (今この宣言をしないと、IFRSの基準作りに関連する各種組織のメンバーから順次はずされていくことになる:筆者補完)
 

【辻山氏の発言抜粋】

  • 「高品質な基準」の判断基準が定まっていない。
    (したがって、IFRSが高品質な会計基準だという判断ができない。高品質なものでないかもしれないものを日本の基準にするのは危険である:筆者補完)
  • 日本ではないIASBが作成した会計基準を、日本で適用すると、会社法や税法などの周辺制度への影響があり、IFRS適用のメリット・デメリットを比較考量しないとデメリットがメリットを上回る結果を招くことになる。
  • 総論は賛成だが、各論に問題がある。したがって、各論の問題を見極めることが重要である。そこで、日本ではすでにIFRSの任意適用が認められているので、任意適用のニーズがどれくらいあるか、そして、任意適用した企業が、 各論の問題に対してどのように対応したかを見極めたうえで判断すれば良い。

この対談は20ページにも及ぶ長い内容ですが、私が注目したポイントは以上です。

この対談での私の雑感は、以下です。

(1)島崎氏は、「日本だけが取り残されてはならない」という『結果』を起点として、IFRS推進論を展開されていると感じました。

(2)辻山氏は、「基準の品質基準の不明確さ」や「周辺制度整備上のデメリット」という『過程(プロセス)』を起点として、IFRS慎重論を展開されていると感じました。

(3)つまり、島崎氏は、『結果』を重視したビジネスマン的な発想であり、辻山氏は、『プロセス』を重視した会計学者的な発想だと思いました。

(4)両者の起点は全く違いますし、どちらが正しいかを論理的に判断することは難しいでしょう。しかし、「時間」という物理的な要素を考慮した時に、ポイントになるのが、島崎氏の以下の発言です。

  • 「先生のご主張は、任意適用の趨勢を見てIFRSの導入についての意思決定をするということですが、これでは国際的な流れから置いていかれる。そこを私は危惧しているのです。」
  • 「国際的な流れから置いていかれる」というのは、IFRSの基準作りに関連する各種組織のメンバーから順次はずされていき、日本の商慣習や退職給付制度の特徴などを反映したIFRSが実現しないということです。IFRS任意適用の趨勢を見てから判断した時のIFRSは、すでに日本ではとても 適用できないしろものになっている可能性があるのです。

お二人のスタンスの根本的なズレは、この「時間」という物理的な要素をどれだけ重要視するかにあると思います。
ビジネスマンにとって、「時間」は非常に重要です。タイミングを外すと、商談に敗れ、場合によっては、会社の存続にまで影響する重要項目です。
したがって、島崎氏の「今方向性を発信すべき」という考えが生まれるのだと思います。

(5)辻山氏は、IFRSの品質に対して大いに疑問をもたれているようですが、今日本企業が適用している日本の会計基準が高品質であるかどうかについて全く触れられていません。それは判断基準が定まっていないのでわからないのは当然ですが、この判断基準から定める必要があるとしたら、もっと長い時間がかかるでしょう。
これは(4)の「時間」や「スピード」を重視するビジネスにおいては、とうてい許される時間ではないように感じました。

(6)現在日本では、企業会計審議会で何度も議論が重ねられていますが、半年経ってもまとまりが見えてきません。

今回の対談では、二人に絞って意見交換されていましたが、ほとんど合意点はなかったので、多人数が参加している企業会計審議会で議論がまとまるわけがないと思いました。

したがって、どこかのタイミングで、「政治主導」により、いきなり結論が出される可能性も高いのではないかと思いました。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ
http://www.knowledge-nw.co.jp/

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