IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション
ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。
すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。
目次
IFRS対応の論点の中に、
「原価計算を二重で行わなければならないか」
というものがあります。
従来の日本基準とIFRSとの会計差異により製造費用が異なること等に起因して(例えば固定資産の減価償却費)、それを受ける原価計算も二重で行わなければならないのではないか、というものですが、今日はこのテーマについて検討してみたいと思います。
まず、「二重で」という場合に、どのように二重化させるかによって以下のパターンが考えられます。
1)決算調整とする方法
標準原価計算における原価差額の調整のように、日本基準とIFRS基準との差額を売上原価と棚卸に配分する方法です。
方法としては最も簡便なものであり、IFRSを制度対応を割り切るのであれば最も効率的なアプローチですが、差額調整にどの程度の精度が求められるか監査人と協議していくことになります。
2)現状と同じ計算を二系統で行う方法
システム上データを二系統で持てるようにデータベースを修正(キー項目の追加など)し、日本基準とIFRSとで異なるデータを基に、同じ計算を行い、異なる結果を出す、ということです。
上記1)よりは高い精度の結果が期待できますが、データベースを修正するというシステム対応の労力を要することになります。
また、全く同じ方法とはいえ、データ収集や検証の手間は増加することになります。
3)現状と異なる計算を二系統で行う方法
IFRS対応を機に、財務報告用の原価と社内管理上の原価のあり方を見直し、それぞれにとって最適な方法により原価計算を行うという方法です。
管理用の原価と制度用の原価、それぞれが制約から(ある程度)解放され、それぞれにとって必要な原価計算を行うという形になります。
いずれにしてもIFRS対応を検討する上では、経営管理上必要な原価はどういうものかをはっきりさせることが重要になってきます。
管理の目的で複数系統の原価計算を行っている企業の例はありますが、開示目的のためだけにに日本基準とIFRSと複数系統の原価計算を行うということの実益はあまりないと考えられるためです。
ここで現状単一の原価計算の仕組みしか有していない企業にとっては、例えばこれを機に管理上は活動を基準としたより正確な原価を管理していこうということになるかもしれません。
また、IFRSの考え方の中で、管理上取り入れるべき有益なものもあると思います。
例えば、伝統のある製造業では古い資産でも長く大事に使うことによって、コストを抑えるような努力をしているところも多いと思いますが、単に税法に従った償却計算では、このような企業努力は財務数値に反映できません。実態に即した耐用年数で償却を行うことは、実態に応じた原価を算定するということにもつながるわけです。
担当:桑原正博( ISIDコンサルタント )
こんにちは、公認会計士の中田です。
このコーナーでは、私の著書である『わかった気になるIFRS』の巻末に紹介している『IFRS質問箱』に実際に投稿された質問とその回答を中心に、このメルマガ読者の皆さんからいただいた疑問点や、ISIDのコンサルタントがお客様からいただいたご質問なども交えてご紹介しています。
学習レベルにはバラツキがあり、いろんな部署の方からのご質問があります。これまでみなさんが持たれた疑問と比べることも、意味があるはずです。
また、これまでどこにも公表されていない貴重なQ&Aですので、どうぞご期待ください。
今回は、IFRSの経営情報としての有用性についてのご質問を取り上げます。
IFRSは投資家のための会計基準なので、経営者のための管理会計には役立たないと思うのですが、いかがでしょうか。
確かにIFRSは投資家のための会計基準だと言えるでしょう。
1989概念フレームワークでも、投資家、貸付者、仕入先、得意先、従業員など財務諸表を利用する何種類ものステークホルダーを列挙した後で、すべての利用者のニーズのほとんどを、投資家のニーズが含んでいるという内容の記載があります。それは、投資家がもっとも高いリスクを負っているために、最も多くの、最も詳細な、最も迅速な財務情報を必要としているからです。
そして、投資家が最も必要とする情報は、企業の「将来のキャッシュ・インフローの予測」に役立つ情報です。投資家の意思決定、すなわち投資判断ですから、企業の株価がどうなるかということについて、最も高い関心を持っていると言えるでしょう。
実際には、企業の株価は、単純には決まらないもので複雑な要因によって決まるものです。しかし、そうはいっても、企業の株価が、企業の将来の価値の予測に強い影響を受けることには、異論が少ないのではないでしょうか。そして企業の将来の価値を予測する上で、「将来のキャッシュ・インフローの予測」が最も強い影響を受けるでしょう。
経営者は、どのような情報を必要としているでしょうか。
経営者は、経営者の意思検定に必要な情報を必要としているはずです。経営者の意思決定、すなわち経営判断としては、企業の価値を最も高めるための判断をする義務があります。これこそ経営者の経営責任です。企業の価値を最も高める上で、「将来のキャッシュ・インフロー」を最大化することが重要なポイントになるでしょう。したがって経営者も「将来のキャッシュ・インフロー」に関する情報が非常に有用になるはずです。
結局、投資家も経営者も「将来キャッシュ・インフロー」の予測に役立つ情報を必要としていることになります。
IFRSは、概念フレームワークにある通り、「将来キャッシュ・インフロー」の
予測に役立つ会計基準であることが、基本的な考え方なのです。であるならばIFRSは、投資家のみならず、経営者にとっても非常に有用なものだといえるの
だと思います。
このような論理展開は、従来の日本基準をベースにした情報が経営に役立ってきたかという反省をする上でも、意味があると思います。実態とかけ離れた税法ベースの耐用年数で計算された減価償却で製品原価が算出され、その結果として、売上原価や売上総利益など、経営管理上も重要な指標が算出されてきたわけです。
実態とかけ離れた日本基準で、今後も経営を行っても支障がないかどうか、一度冷静に検討することは、決して無駄ではないでしょう。
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