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ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。

すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。

目次

コンサルタントの眼
〜包括利益の開示〜

今回の3月期末決算から日本の上場企業でも包括利益の開示が始まりました。

これについて、5/23までに決算発表を行った3月決算企業のうち前の期と比較できる1479社について集計したところ、以下のような結果が出たそうです。(5/25付日経新聞記事より)。


2010年3月期

 

  • 純利益合計    7兆5289億円
  • 包括利益合計 13兆1431億円

 

 

2011年3月期

 

  • 純利益合計  12兆1180億円
  • 包括利益合計  7兆7531億円

 

 

 

つまり、純利益が前期比61%増であったのに対し、包括利益は41%減という対照的な動きになっています。これを、純利益と包括利益の差額でみると、

2010年3月期

 

  • 包括利益合計-純利益合計=   5兆6142億円

2011年3月期

 

  • 包括利益合計-純利益合計=△4兆3649億円

となり、単なる減少ではなく、符号が正負逆になる大変動になっています。

上記差額の中には少数株主に帰属する損益も含まれるため単純計算はできないのですが、今回、包括利益が大幅減になった主要因は「その他の包括利益」、なかでも、円高、株安に伴う「為替換算調整勘定」及び「その他有価証券評価差額金」の影響だとのことです。

このように、包括利益は「為替」や「株式相場」など、経営者がコントロールできない外部要因で変動するため、経営成績を評価する指標としてはあまり適していないという意見はもっともだと思います。また、今回はマイナス側に大きく振れましたが、来年は全く逆に振れることもあり得るわけで、期毎のブレ幅が大きいという点からも使いかたが難しい指標と言えそうです。

では、包括利益の開示は意味が無いのかというと、そういうことではないと思います。確かに「その他の包括利益」は経営努力とは関係のない外部要因で変動しますが、逆の見方をすれば、経営者がコントロールできない純資産増減リスクがどの程度内在しているかを理解するうえでは意味のある指標だといえます。ただし、そのとき気をつけなければいけないのは、このリスクは小さければ小さいほど良いというものではないということです。

例えば積極的にグローバル化を進めている企業が、為替変動が包括利益に影響を及ぼすからといって海外拠点の展開をやめるようなことは意味が無いことです。また、持ち合い株式がビジネス上重要な意味を持つ業界では、包括利益に影響するからといって今すぐ持ち合いを解消するという動きはしづらいのではないかと思います。

ですから、単純に包括利益の大小のみで企業間比較をするのはあまり意味が無く、「その他の包括利益」の変動からその企業のビジネス特性や内在しているリスクについて理解し、それがビジネス上必要な(テイクすべき)リスクなのか、その大きさは企業の規模や体力に対して適切なのか、大きすぎるのであれば何かを見直す必要があるのではないか?といった観点から財務諸表や中長期的な経営戦略を読み解いていくことになるのだと思います。また経営側にとっては、このような観点からの説明責任が増すものと考えられます。


担当:藤原啓之( ISIDコンサルタント / IFRS Certificate )



<関連情報>

実録!!IFRS Q&A 公認会計士 中田清穂
〜コンポーネント・アカウンティング〜

こんにちは、公認会計士の中田です。

このコーナーでは、私の著書である『わかった気になるIFRS』の巻末に紹介している『IFRS質問箱』に実際に投稿された質問とその回答を中心に、このメルマガ読者の皆さんからいただいた疑問点や、ISIDのコンサルタントがお客様からいただいたご質問なども交えてご紹介しています。

学習レベルにはバラツキがあり、いろんな部署の方からのご質問があります。これまでみなさんが持たれた疑問と比べることも、意味があるはずです。
また、これまでどこにも公表されていない貴重なQ&Aですので、どうぞご期待ください。

今回はコンポーネント・アカウンティングについてのご質問を取り上げます。

ご質問

コンポーネント・アカウンティング

IAS第16号有形固定資産に関しての質問です。 減価償却に関連してコンポーネント・アカウンティングが必要であり、飛行機の例が挙げられていますが、建物に関して言えば一体、どのように分ければよろしいのでしょうか?例えば、一般的なオフィスビルの場合、税法に基づくと、「建物」、「付属設備(各種)」、「構築物(外構等)」の3つに分解されますが、 これでコンポーネント・アカウンティングをおこなっていると考えてはいけないのでしょうか?ダメな場合、更に細分化するとしたら「建物」部分しかないと思いますが、どのように分ければいいのでしょうか?色々な文献を見ましても、企業の判断とか、重要な部分を企業が判断するとかのみで、具体的な話は何一つありません。先生の私見でも構いませんので、お考えを伺えればと存じます。

回答

ご質問の件ですが、コンポーネント・アカウンティングについては、日本ではほとんど問題にならないという意見が多数であると認識しております。理由はご指摘の通り、税制上の耐用年数表での「構造又は用途」及びその「細目」でかなり細かく規定されているためです。

IFRSで最も重要なポイントは、利用年数が異なる構造部分については、利用年数に合うように別個に減価償却することです。税制上の耐用年数が実際の利用可能年数と一致しているかどうかは別の課題ですが、細分化の単位については十分細かいと判断しても決しておかしくはないと思われます。

ちなみに、IAS第16号でコンポーネント・アカウンティングの規定があるのは、欧米では、「工場全体で●●年」などという、乱暴とも言える耐用年数の決め方が横行していたからだという話もあります。このような話からも、日本では従来から税制上の耐用年数表で細かい区分で取り扱ってきているので問題ないという判断が多いのだと思います。


公認会計士 中田清穂氏のホームページ
http://www.knowledge-nw.co.jp/

メルマガ事務局より

このコーナーでは読者のみなさまからのご質問を受け付けています。
以下のメールアドレスまでお気軽にお寄せください。

いただいたご質問にはすべてお答えする予定ですが、お答えするのにお時間がかかる場合がありますので、予めご了解ください。
g-ifrs@group.isid.co.jp 『ISID 経理財務メールマガジン』事務局

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