IT×人事の技で最適人材の発掘を POSITIVEが導く未来型HR Tech

ITで人事の仕事を変えるサービス、HR Tech。中でもPOSITIVEは社内のあらゆる人事情報を集積・分析し、最適な運用や配置につなげられるという。

※「ITmediaビジネスオンライン」記事より転載

企業の人事部門が行ってきた業務にITの力を導入するサービス、「HR Tech」が数多く台頭してきている。今まで長時間をかけてこなしていた大量の人事データや書類の処理をAI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が短時間で代替したり、距離の離れた従業員同士がWeb電話や動画サービスを介して一緒に研修したりするなど、従来の人事業務の在り方を確実に変えつつある。

一方で、よくAIなどの先進技術には「何でもやってくれそう」、あるいは「本当に役に立つの?」というイメージを抱く人も少なくないのではないだろうか。あるいは、「こうしたテクノロジーサービスが普及すると人事担当者はどう変わっていくのか」と気にする意見も上がっている。

電通国際情報サービスの執行役員HCM事業部長、橋田裕之氏

人事の根幹業務を企業グループで集約・管理

ITを駆使したいわゆる「〇〇テック」と呼ばれるサービスがあらゆる業界に浸透しつつある昨今。HR Techは人事の世界において実際にどのようにヒトの仕事を変革していくのか。そしてその時、人事部門に新たに求められる能力や姿勢とは何か。そこで人事業務の代替や向上に取り組んでいるHR Techの1つ、電通国際情報サービスが提供する「POSITIVE」の例から迫ってみた。

POSITIVEは、人事の根幹を成す業務を企業グループで集約・管理することができる統合パッケージソフトだ。基幹人事システムの主要機能である人事・給与・就業管理やワークフローに加え、AIを活用したタレントマネジメントやモバイル対応など広範な機能を網羅した大手企業向けパッケージで、人事シェアードサービスの基盤システムにも多く採用されている。

POSITIVEの生みの親であり、2002年よりHCM(Human Capital Management)ソリューションビジネスを立ち上げた同社執行役員でHCM事業部長の橋田裕之氏は「数百社を傘下に持つ企業グループでもグループ統合人事システムとしてPOSITIVEが稼働している。1システムで大企業の人事をしっかり回せることが信頼性につながっている」と説明する。

実際、電通国際情報サービスの人事ソリューションサービスの導入実績数は2400社を超え、一定の支持を得ている。橋田氏も「大企業はもともと、巨大で独自の人事システムを持ち運用していたが、そこからPOSITIVEをベースにシンプルで標準的な運用、業務プロセスに改善していく。人事の定型業務を省力化することで、人事担当者には、従業員の最適配置や人材育成など高度な本来業務にもっと注力してもらえるようになる」と説明する。

AIが適切な人材配置を提案する「タレントアナライズ」

ただ、昨今の多くのHR Techではこうした「省力化」の機能が既に搭載されていることが多い。橋田氏によると、POSITIVEはシンプルな人力の作業の代替に加え、「AIを活用することでしか成しえない」機能もセールスポイントにしているという。例えば2018年に搭載されたのは、AIが適切な人材配置を提案するというサービス「タレントアナライズ」だ。

一般的に、AIと聞くと「任せれば問題を解決してくれる」といった少しSFチックなイメージを持たれている場合も少なくない。ただ、現実にはAIの運用に際しては、その判断の根拠になるデータが必ず必要となる。HR Techで言えば社内の従業員に関する人事情報が該当する。

POSITIVEでは従業員の入社時の情報、その後の活躍ぶりや勤務態度といった項目に至るまで、あらゆる人事データを個人にひもづけて収集することができる。

日本企業では従来、採用時や勤怠管理などで収集した人事情報がどうしてもばらばらに集積・保存されがちだ。採用時に受けた試験の結果や入社後の研修、その後の社内での勤務態度や昇進スピードと言った情報は、大企業においても結び付けて保管されていないケースが多い。「採用時に高評価だった新入社員がその後、社内で活躍したかどうか」といった検証がしづらいのが現状だ。

一方、人事システムの統合パッケージという形を取っているPOSITIVEは、すべての人事情報をひもづけて管理・検証することができる。

カスタマイズせず利用可能

また、カスタマイズしないで利用できる柔軟性もポイントという。例えばシステム上で人事が集められる情報については、従業員の住所や氏名といった基本事項がデフォルトで設定されているだけでなく、計100万項目を自由に設定することも可能だ。

「〇〇さんからの評価」「社内資格の保有状況」など、会社や職場の特性や事情に合わせて必要な人事情報の項目を盛り込むことができる。橋田氏も「会社ごとに従業員を評価すべき項目は異なるが、それらを自由に設定することができる。人事データを分析・活用する上で、企業グループで人材情報を一元管理し、可視化できる基盤が必要だ」と語る。

こうしたシステムの拡張性から生み出されるのが「このポジションでは企業グループ内のどの人が活躍できそうか」といった人材配置に関わる人事情報の分析・提案の機能だ。そもそも大企業では、人事担当者が膨大な数の社員の能力や人柄をすべて把握しておくことは困難だ。特定の条件を満たす人材が広い社内のどこにいるか、POSITIVEならすぐ見つけ出すことが可能になる。

さらにそこで威力を発揮するのがAIだ。例えば「このポジション・地域に転勤させるのに最も適した人材は誰か」と、異動案について人事が悩んでいる際、過去にその異動先で活躍した従業員が持っていた能力や特性といった項目の候補を、自動的に算出してくれる。もちろん、人事担当者が逆に「海外経験年数」や「TOEICの点数」といった異動先で役立ちそうなデータの項目を挙げて、その特性に適した人材を検索することも可能だ。

最適な人材配置をAIが提案する「タレントアナライズ」機能

従来の「勘と経験」や管理職の顔なじみの範囲での人選では、特に大企業の広い社内で見落としてしまう人材が出てくる可能性も否めなかった。従業員の特定の能力や適性が、意外な職場や部署と適合する傾向があるといった、今までの人事の先入観を裏切る「ユニークなマッチング」が見つけ出されることもあり得る。

能力やキャリアをはじめとする膨大な人事項目のデータを元に、機械学習を用いて関連性の深い情報を見つけ出し、「どんな人がこのポジションでは活躍するか」という分析をすることができるPOSITIVE。データサイエンティストのような統計のプロでなくとも簡単な操作で分析できる上に、AIを使うため、従来の人事の判断基準ではどうしても紛れ込みがちな人間の主観もうまく排除できるようになる。

「あなたが異動先で活躍しそうな根拠」人事が明確に説明可能に

さらにPOSITIVEの長所として挙げられるのが、「人事が明確に異動の理由を従業員に説明できるようになる」というポイントだ。

「AIはブラックボックスになってはいけないとよく言われる。『あなたは転勤です』と人事に言い渡された従業員は、その理由を必ず聞くもの。『この担当で今まで活躍した人にはこういう傾向がある。あなたも同じように秘めた能力があるので、ぜひ手を挙げて活躍してみませんか』などと人事も説明できるだろう」(橋田氏)。異動や抜てきの理由が可視化されるので、人事に対して従業員が感じる公平性や透明性が増すことも期待できるという。

さらに導入企業の人事担当者も、人事情報の項目を自由に決めて分析できる機能を生かして、運営側のアイデアを上回るような人事の知見発掘に生かしているという。橋田氏によると、ある企業ではどの面接官が選んだ従業員が入社後、実際に職場で活躍しているかどうかについてPOSITIVEを使って分析。面接担当への適性判断など、採用の精度アップに生かしているという。

デジタルとアナログの力の合わせ技

人事の分野において、データとAIを駆使することで客観的な人材配置や活用案を提案できるPOSITIVEは一見、人間の人事の仕事を代替する存在に見えなくもない。しかし、橋田氏は「AIは決まった枠の中で、人事データから役立ちそうな因子を探すだけ。どのデータを見るか決めて分析し、結果から判断するのはあくまで人事の仕事」と強調する。

POSITIVEを活用する上で「分析結果を判断する人事の役割は重要」と強調する橋田氏

POSITIVEの事例から浮かび上がるのは、省人化の機能とAIを活用した自由度の高い人事データ分析機能を通じた「人事担当者の工夫の余地が広がる」可能性だ。集計や計算といった単純作業をITに任せるのは無論、「従業員を最大限活躍させられる人事のアイデアは何か」という問いに、AI技術と人事担当者の知恵を掛け合わせて挑む。HR Techの強みを最大限に発揮するコツとは、POSITIVEの活用例でも示された「ITのデジタル力と人間のアナログ力の合わせ技」と言えるのかもしれない。

  • 出典:2019年5月ITmediaビジネスオンライン掲載