ロボット技術を身近なものに活かす、ISIDイノラボの挑戦!

ISIDは、2019年9月24日〜25日に開催されたROSCon JP 2019において、「モノを動かす価値の探求」と題し、「動く家具」のプロトタイプを出展しました。
本レポートでは、ISIDが「動く家具」を企画・開発した背景やねらいを、当日の様子とともにお伝えします。

自律移動ロボットの技術を応用し、身近な人たちを助けたい

近年、自律移動ロボットの開発や導入が世界中で活発に行われています。日本では2020年に向けて、タクシーやバスなど自動運転の実用化を目指した実証実験が様々な企業や自治体で進められているほか、すでにホテルや病院では滞在者にアメニティや医療品を運ぶロボットが登場し、人を介さず安全かつ適切にものを届けるサービスも実現しつつあります。

このような動きが加速する中、ISIDのオープンイノベーションラボ(以下イノラボ)では自律移動ロボットを支える技術の進展に着目しています。コンピューターやバッテリーの高性能化や小型化、さらには自分の位置を認識して目的地までの道筋を計算したり障害物を検知して回避しながら移動する技術。これらが一般的になってくると、あらゆるものを自動で動かすことが可能ではないかと考えました。

一方で、私たちは日頃、あまり意識することなく人手で行っている面倒な作業があります。その一つが参加人数や形式に合わせた会議室のレイアウト変更でした。ワークショップ形式の研修から参加者が向かいあう会議、同じ会議室を使っているとテーブルとイスを動かす必要が出てきます。私たちはこのレイアウト変更を、人手を介さず自動化できたら“働き方改革”につながるだけでなく、重たい椅子を動かすことが難しいお年寄りや体の不自由な方の役にも立てると考えたのです。

動く家具を開発

2019年7月、世界的に注目を集めているロボット開発ソフトウエアであるROS(Robot Operating System)を活用した家具を動かすシステムの開発プロジェクトは始まりました。ROSとは開発者のロボットアプリケーション作成を支援するオープンソースソフトウエアです。メッセージ通信を担うミドルウエアを中心に、デバイスドライバやライブラリ、視覚化ツール、メッセージ通信などの機能やツールなどが提供されています。ROSはコミュニティが盛んで、参加者のアプリケーション開発のノウハウが結集されているため、優れたプラクティスをシステムの設計に組み込むことができます。

動く家具の実現に向けて、まずはテストケースとしてミニチュアで自律移動する机・椅子を作って、人が使う上での技術的な課題を洗い出すこととしました。また同時に、ミニチュアシステムの動作を人に見せ、コンセプトを伝えることで、家具が動くことで生まれる価値を感じてもらえるか、机上ではわからない利点や欠点が見えてこないか、検証することにしました。

今回開発したプロトタイプには全面的にROS2が使われています。ROSにはROS1とROS2があり、ROS2はROS1に比べ、複数のロボットを協調制御しやすいよう設計されています。しかしながら、ROS2はROS1とは独立して新たに作られたため、システムとして実装された事例はまだあまり公に出回っておらず、オープンソースとして作られているため、信頼性やどこまでの作りこみが可能であるかがわかっていませんでした。そこでROS2を駆使して机や椅子が整列するシステムをどこまで作れるのか、実際に作ってみて確認することにしました。

実際に作った動くプロトタイプを、多くのロボット専門家に見せてコメントをもらえるよう、ROSCon JP 2019での展示にターゲットに置き、2か月というタイトな開発期間で制作を進めました。

開発した動く家具と出展の様子

ROSCon JP 2019に出展

ROSConとはROSの公式開発者会議で、年に1回世界で開催されているものです。ROSCon JP 2019は日本で開催されるROSConのローカルイベントであり、昨年に続き2回目の開催でした。204名の参加者、24社のスポンサーが参加し、各展示企業ブースでは先鋭的なロボットシステムが展示されます。その中でもイノラボの展示する家具のユースケースは、通常のロボット展示とは“生活者が利用するロボット”という意味で異なるものでした。

ロボットのプロフェッショナルである来場者に動く家具を見てもらい、様々な議論を交わしました。
「旋回移動だと周囲のロボットや壁にぶつかってしまうので、全方位に動ける機能が必要では?」や「机や椅子は人がよく使う家具なので、危険がないように動かす必要がある」など、今後の課題となる視点ももらいながら、「ロボットの実際の使い道の実例を動体で示していて良い」、「今までとは違った領域でのチャレンジである」といった私たちの背中を押してくれる意見もいただきました。
展示中、電波の干渉の問題等もありましたが、無事に会期を終え、今後の実用化に向けた多くの課題を持ちかえることができました。

仕組みへの質問や技術的な課題など多くの議論が交わされました

モノが動く世界でよりよい未来を

動く家具が実現すれば、快適性や利便性の向上、ハンディキャップのある人の自立生活サポート、危険から人を守るなど、自分にあう空間が自動で構成される未来が見込まれ、多くの社会問題解決につながると想定されます。
しかしながら、本当にそれが人にとって良いものなのか、実際にあらゆる種類の「動く家具」を実装して検証を進めていきたいと思います。

イノラボでは、これからもモノが動く価値を探求し、これまでになかったサービス領域を築くべく検討を進めてまいります。

2020年2月更新