スポーツ×ITで熊本を元気に!
IoTセンサーを活用した子ども向け体験イベント「くまもとアスリートチャレンジ」を実施

ISIDは、2017年10月に開催された「くまもと復光祭」においてIoTセンサーを活用した子ども向け体験イベント「くまもとアスリートチャレンジ」を実施しました。台風の影響で直前まで開催が危ぶまれましたが、当日は開始時間こそ遅れたものの、無事にイベントを実施することができ、多くの参加者で賑わいました。本レポートでは、ISIDが「くまもとアスリートチャレンジ」を企画・実施した背景やねらいを、当日の様子とともにお伝えします。

くまもと復光祭とISIDの関わり

くまもと復光祭は、2016年4月に発生した熊本地震の後、県民自らが復興への光を見出すことをねらいとして、一般社団法人熊本青年会議所の主催で同年11月に初めて開催されました。2回目となった今回は、公益社団法人日本青年会議所九州地区熊本ブロック協議会が主催となり、「スポーツで熊本を元気に!」をテーマに、様々な体験型イベントが行われました。地域の青少年に県内のプロスポーツチームやアスリートを身近に感じる機会をつくり、熊本のスポーツ経済の発展につなげることがねらいです。

ISIDでは、2014年に設置された2020テクノロジー&ビジネス開発室を中心に、2020年とその先を見据えた新たなソリューションの開発を進めています。スポーツ×IT、地方創生×ITなどをテーマに、IoTセンサーや人工知能などのテクノロジーを様々な産業分野に適用していく上で、その効果や有効性を検証する場所と機会を模索してきました。

そんな中、地域に根ざした活動を続ける青年会議所の方々との意見交換の機会に恵まれ、熊本での取り組みを紹介されました。大地震による被害がまだ多くの爪痕を残す熊本では、復光祭のようなイベントを通じて地域に明るさや活気を取り戻し、復興への足がかりにしようという活動が、青年会議所を中心に展開されていました。ITの力で地域の活性化や地方創生に貢献していきたいという私たちの活動テーマとも合致することから、2回目の開催に合わせ、企画段階から参加することになったのです。

くまもとアスリートチャレンジの仕組み

熊本県は、2019年に行われるラグビーワールドカップの開催地の一つで、同じ年に女子ハンドボールの世界選手権も開催されます。こうした国際的なイベントに向けた機運も捉え、「スポーツ」をキーワードに、地元のプロチームとも連携して熊本を盛り上げていきたい。今回の復光祭には、そんな想いを込めることが決まりました。そのメインイベントとして私たちが企画したのが、ITを活用して地域の子ども達にスポーツの”楽しさ”とトップアスリートの”凄さ”を実感してもらい、地元チームやアスリートを好きになるきっかけにしようという試み。名付けて「くまもとアスリートチャレンジ」です。

様々な議論や検討を重ねた結果、私たちは、スポーツが得意な子もそうでない子も真剣に楽しむことができる体験型イベントを企画し、それを実現するシステムを開発しました。スマートフォンに内蔵されている9軸センサーや赤外線光電センサーと独自のアルゴリズムを用いて、リアルタイムでプレーのスピードや精度の計測とスコアリングを行うことができる仕組みです。スコアリングの結果は、プレー中の映像とともにモニターに表示され、参加者がその場で確認することができます。このシステムでは、収集したデータの集約・処理をクラウド上で行っているため、蓄積されたデータを効果的に利活用することができます。今回は、参加者がイベント終了後にWebで自分のスコアや動画を簡単に閲覧できる仕組みを用意しました。

プレー終了後に表示されるスコア結果のイメージ

サッカー用のコースでは、ラダー、ドリブル、パス、シュートの4つの動きにチャレンジ。
各種センサーを用いて、身体の動き・スピード・プレーの精度を計測しスコアリングする。

くまもとアスリートチャレンジで体験できるのは、サッカー、バスケット、ラグビー、ハンドボールの4競技。小学生から高校生までを対象としました。各競技の動きを踏まえたチャレンジ種目とコースの設計には、元陸上選手の為末大氏が主宰する「アスリートブレーンズ」が協力。競技ごとに、ドリブル、パス、シュートといった特徴的なプレーの選定や全体の流れをプロの目線でアドバイスしてもらい、短いコースの中でも本格的なチャレンジができるよう設計しました。また自分の結果やランキングだけではなく、地元のプロチームに所属する選手が実際に同じコースで出したスコアと比較できるのもポイント。自分とプロ選手の違いを体感することで、競技やチームに興味を持つきっかけにしてもらおうという趣向です。今回は、サッカーの「ロアッソ熊本」、バスケットボールの「熊本ヴォルターズ」に所属する選手の皆さんにご協力いただき、事前に本番と同じコースでデータを測定させてもらいました。

当日と同じコースでトライアルを行うロアッソ熊本の選手

500人が地元プロ選手の記録に挑戦!

イベント数日前から大型台風21号が九州に接近・上陸するとの予報が出され、天気図を睨みながらやきもきする日々。当日に台風直撃となれば、何よりも安全を最優先しイベントを中止せざるをえません。プロジェクトメンバーは全員現地入りして準備を進め、開催前日の夕方に下される実行委員会の判断を待つことになりました。メンバーの必死の祈りが届いたのか、台風の通過速度が速まり、当日は開始が数時間遅れたものの無事に復光祭が開催されることに。風が強く、万全のコンディションとはいえない中でのスタートとなりましたが、子ども達とその保護者を中心としたのべ3000人の方が会場に訪れ、そのうち500人以上の方にくまもとアスリートチャレンジを体験してもらうことができました。

参加した子ども達の中には、競技経験があまりない子やスポーツが苦手な子も多かったのですが、モニターに映る自分のプレーやスコアに一喜一憂し、笑顔で何度も挑戦する様子が見られました。「今度こそもっと良い点数を取るぞ」「楽しいからもう一回やりたい」「○○選手のスピードがすごい」と自発的にスポーツを楽しむ子ども達の姿はキラキラ輝いていて、楽しんでくれてよかった、やってよかったなと、スタッフ一同感慨深い気持ちになりました。応援していた保護者の方にも多く参加して頂き、家族みんなで楽しめる時間になったのではと感じています。当日の運営にあたっては、地元のスポーツチームや青年会議所、高校生・大学生ボランティアの皆さんなど多くの方々にスタッフとしてサポートいただきました。

さあ、チャレンジスタート!

イベント後も熊本を応援するアンバサダーに

こうしたイベントでの楽しい体験や思い出を、その場限りのもので終わらせるのではなく、地域スポーツとの継続的な関わりにつなげてほしいと考え、私たちはもう一つ工夫を凝らしました。参加してくれた子ども達に、熊本を応援する証として「くまもとスポーツアンバサダーカード」を贈呈したのです。これは、参加の記念というだけではなく、県内で開催されるロアッソ熊本や熊本ヴォルターズの公式試合の入場割引を受けられるカードになっていて、イベントを通じて地元チームやアスリートに興味を持った子ども達が、次は試合を観に行ってみよう、というきっかけをつくる試みです。約200名の子ども達にアンバサダーカードが贈呈され、そのうち約18%にあたる36名が、後日地元チームの試合に足を運んでくれました。

割引特典などへの反応率については諸説あり、一概には言えないのですが、例えば一般的な折込チラシや配布チラシへの反応率は10,000枚配布しても1~30名程度、つまり0.001~0.3%と言われています。私たちも当初の目標としては、せいぜい10名程度が試合に来てくれれば大成功と思っていましたが、蓋をあけてみれば予想を大きく上回る数字になりました。イベントでの体験が、参加した子ども達に何らかの特別な印象や思い(=エンゲージメント)をもたらした結果、通常のチラシやクーポンとは全く異なる反応につながったのではないかと思います。

子ども達に贈呈された「くまもとスポーツアンバサダーカード」

ISIDでは、今回のくまもとアスリートチャレンジの成果を踏まえて、次回開催に向けた調整をすでに青年会議所の皆さんと進めています。また今後の展開としては、こうした仕組みを全国的に展開できないかと考えていて、各地の自治体や競技団体などとも協議を始めたところです。地元スポーツチーム・アスリートへのエンゲージメントやスポーツ体験の機会創出を通じた地域活性化が、全国各地で行われるようになれば、熊本はもちろん、日本中がもっと元気になれるはず。そんな夢を描きながら、私たちは日々テクノロジーと向き合っています。

 

2018年2月更新