空間型VR映像システム「ReverseCAVE」をSIGGRAPH(シーグラフ)2017に出展

ISIDのオープンイノベーションラボ(以下、イノラボ)は、筑波大学デジタルネイチャー研究室(以下、DNG)の石井晃氏、ジセカイ株式会社(以下、ジセカイ)代表取締役社長の鶴田真也氏らと共同で開発した、空間型VR映像システム「ReverseCAVE(リバースケイブ)」を、2017年7月31日(月)から8月3日(木)までロサンゼルスで開催された「SIGGRAPH(シーグラフ)2017」で展示しました。 出展の様子をイノラボの鈴木淳一が報告します。


SIGGRAPH(Special Interest Group on Computer GRAPHics)とは、アメリカコンピュータ学会が主催する世界的なコンピュータグラフィックス (CG)に関する国際会議・展覧会の一つです。毎年夏にアメリカ各地で開催され、2008年からは冬にアジア地域において「SIGGRAPH ASIA」が開催されています。ロサンゼルスでの開催は2015年以来で、メイン会場となったロサンゼルスコンベンションセンターは、市街地の中心部にあり、過去にはグラミー賞の授賞式も行われたそうです。
今年のSIGGRAPHは、映像制作やCG技術に限らずAIを用いたアートコンテンツ拡張といった新しい領域もカバーしており、会場では幅広いテーマで展示が行われていました。来場者は16,000名を超え、学会関係者以外にも、ハリウッドで活躍する映像制作関係者などが多数来場し、例年よりも幅広い層が参加しているように感じました。
今年の特徴は、VRデバイス「Oculus Rift」を用いて、VR作品を体験することができるコーナー「VR Theater」が設けられていたところです。2種類のプログラムが用意されており、体験型のデモを通じて有識者だけでなく一般の人にもVRの世界をイメージできるようになっていました。

SIGGRAPH 2017の会場となったロサンゼルスコンベンションセンター

ReverseCAVEは、DNGの研究成果が展示されているブースで紹介されました。ReverseCAVEとは、VRコンテンツをヘッドマウントディスプレイ(HMD)上で再生すると同時に、周囲に設置した半透明スクリーンに裸眼で視聴できる立体映像としてリアルタイムで投影し、HMDを装着した人と周囲にいる人が、同じ空間内でそれぞれの位置や視座に応じたVR体験を共有できる新しい映像システムです。映像制作現場やテーマパーク、イベント会場等での活用が想定されています。
ReverseCAVEの説明を聞いた来場者からは、「ヘッドマウントディスプレイを装着しなくてもVRの疑似体験ができる発想が新しくて面白い」「実際の制作現場での悩みを解決してくれそうだ」といった声があり、非常に高い評価を受けました。ブースには映像制作関係者も訪れ、ReverseCAVEの実用性や今後の展開について、より具体的なディスカッションを行うことができました。

ReverseCAVE 展示の様子

ReverseCAVEの全体図
半透明スクリーン、複数のプロジェクタおよびセンサーで構成される立方体の空間型映像システムで、HMDを装着した人と周囲にいる人が同じ空間内でそれぞれの位置や視座に応じたVR体験を共有できる。

ReverseCAVEを用いたVR体験の様子
[左] VRでゾンビに襲われる映像を見ている人の体験が、HMDを装着していない周囲の人にも立体映像でリアルに伝わる。
[右] モーションキャプチャを用いたCG制作の現場で、マーカーを装着した演者の動きとキャラクターの動きを重ね合わせて映像監督が好きな位置から確認できる。

会場では、大学生・大学院生を対象としたコンテスト「ACM Student Research Competition※」も同時開催されていて、ReverseCAVEを発表したDNG石井晃氏とジセカイ鶴田真也氏が銅賞(SIGGRAPH 2017 Student Research Competition Graduate 3rd Place)を受賞しました。
イノラボは、DNGを主宰する筑波大学の落合陽一氏を2015年にコラボレーションパートナーに迎え、DNGとの共同研究プロジェクト「POST PIXEL & MEDIA」を立ち上げました。従来の2次元の映像ディスプレイ環境にとらわれない、空間型メディアの実現を研究テーマとしており、ReverseCAVEはこの一環で開発したものです。石井氏とは、これまでReverseCAVEの開発を一緒に進めてきましたが、今回の出展・受賞を機に、あらためてイノラボのコラボレーションパートナーとして迎えることになりました。

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[左]イノラボ鈴木淳一、[右]ACM Student Research Competitionで銅賞を受賞したDNG石井晃氏

ReverseCAVEは、11月にバンコクで開催される「SIGGRAPH ASIA 2017」にも出展されることが決定しています。これからもReverseCAVEの実用化に向けた研究を進めつつ、より幅広い領域で新しい映像コミュニケーションの創出を目指して活動していきます。

 

  • ACM Student Research Competition: マイクロソフト社がスポンサーを務める大学生と大学院生を対象としたコンテスト。アメリカをベースとするコンピュータ科学分野の国際学会であるAssociation for Computing Machinery (ACM)が主催・共催する著名な国際会議で、学生が自身の研究について発表する場として2013年より開催されている。

2017年10月更新