UBE株式会社 解析データをナレッジとして体系的に蓄積し、技術を伝承していきたい。 「CAE-ONE」をベースに理想の解析データベースを目指した開発の軌跡

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創業1897年という長い歴史を持つ宇部興産株式会社。化学、建設資材、機械の3つの事業を柱に世界各地に拠点を展開し、近年では環境に配慮した技術・製品を生み出すなど新たな挑戦を続けています。 2022年4月には、3事業をそれぞれ独立した運営体制へと移行し、同社は「UBE(ユービーイー)株式会社」に社名を変更。化学事業を中心としたメーカーとして、さらなるグローバル化を加速させようとしています。

製品開発、設備設計、設備トラブル対策等あらゆる場面で利用するCAE(Computer-Aided Engineering)では、構造解析や流体解析などのさまざまな解析が行われます。同社では、これらの解析で得られたデータを、ファイルサーバや個人PCなどで管理しており、担当者が異動や退職をしてしまうとデータがどこにあるかさえわからない状況がありました。

そのような状況を改善しようと宇部興産が導入を決めたのが、ISIDが提供する、解析業務の効率化を支援するWebフレームワーク「CAE-ONE」です。
「貴重な解析データをナレッジとして体系的に蓄積し、技術を伝承することで、開発、作業効率を上げていきたい」そんな思いを持って、理想の解析データベースを目指してきた過程とはどのようなものだったのでしょうか。

解析データベースの開発プロジェクトを牽引した、生産・技術本部 生産技術部 デジタル技術グループ CAEチームの村田満男氏は、「一般的な業務において、業務時間の8分の1は技術文書の検索作業など情報収集に使っていると言われています。その分の工数は大幅に削減できているのではないでしょうか」と語ります。

解析結果のデータをナレッジとして活用したい

「CAEはどうしても属人的になりがちです。そのため、担当者が異動や退職をしてしまうと、情報の保管先が分からなくなり、ノウハウが蓄積されないという課題がありました」と村田氏は振り返ります。 技術計算に関する知識が豊富な人に解析の依頼が集中し、その人が解析結果や関連情報を属人的に管理してしまっていました。

「解析結果のデータをナレッジとして体系的に保存することができれば、データを探す手間もなくなり、過去の解析をあらためて実施するなど解析の二度手間もなくなるなど、開発、作業効率を大きく改善できるはず」そう考えた村田氏は、とある解析データベースを導入します。しかし、しばらくして、この製品の見直しを迫られる事態となります。 「解析部隊は30人から50人くらいの人数なのですが、使える人数に制限があったことに加え、開発元の機能追加は解析計算の自動化部分がメインで、ナレッジ共有という観点での開発が進みませんでした。当社の使い方には合致しないということから、一旦白紙に戻すという決定がなされたのです」と村田氏は当時を振り返ります。

宇部興産とISIDの二人三脚での開発がスタート

データの価値はこれからさらに高まると思います。CAE-ONEへの満足度は非常に高いです。

UBE株式会社 生産・技術本部 生産技術部 デジタル技術グループ CAEチーム 村田満男氏

その製品に代わるものとして導入を決めたのが、ISIDの提供する、解析業務の効率化を促進するWebフレームワーク「CAE-ONE」です。その決断の理由を村田氏は次のように語ります。
「CAE-ONEは300人まで使え、人数の制約も解決。また、標準機能が充実している上に、自分達のやりたいことをカスタマイズして組み込めるという点も大きなポイントでした」

CAE-ONEは、製品の設計・開発段階で行われる解析業務に関連するデータ管理、ジョブ管理、リソース管理のプロセスを統合し、解析業務の効率と品質の向上に寄与するWebフレームワークです。計算サーバやライセンスの空き状況を確認し、解析業務に必要なデータを管理・活用できる「データ管理機能」、適宜解析計算を実行できる「ジョブ管理・解析自動化機能」、アプリケーションやハードウエアの利用状況を可視化する「リソース管理機能」の3つの機能を備えています。
特にデータ管理では、担当者名や解析目的、開発機種等の属性情報を保管データに付与することができ、登録されたデータは容易に検索、流用が可能です。実施した解析データと設計データなど関連情報を紐づけて管理できるため、設計検討時に行った解析結果やそれを受けての検討過程をたどることができ、類似する製品の設計時の工数削減や製品の不具合が発生した際の調査時間短縮に繋がります。

CAE-ONE導入プロジェクトは、宇部興産とISIDの二人三脚で進められ、現場に活用してもらうための要件を細かく詰めていったといいます。
「定期的に打ち合わせをし、ユーザーからの声を拾いながら進めていきました。こちらからの要望に対し、CAE-ONEでどうすれば対応できるか、さまざまな提案をいただきました。我々の要望もかなり多かったと思います。面倒くさいクライアントだったかもしれませんね」と村田氏は苦笑いします。

目的に合わせた3つのDB構成。ワークフロー機能も活用

ISIDは常に親身に考えてくれるので、これだけ長い付き合いになっているのだと思います。

UBE株式会社 生産・技術本部 生産技術部 デジタル技術グループ CAEチーム 村田満男氏

出来上がった解析データベースは、いかにユーザーに楽に使ってもらえるかを考え抜いたものになりました。データベースは、「業務案件DB」、「材料DB」、「ドキュメントDB」の3つのDBで構成されています。業務案件DBは宇部興産で扱う製品案件ごとにデータが管理されるもので、解析計算用に作成したモデルや、解析を委託する別会社からの報告書など案件で発生する全ての情報が登録されます。誰がどの案件にアクセスできるのか権限を細かく管理することも可能です。材料DBは、案件が違っても共通のデータを活用できるようそれぞれの素材の物性データを保管しています。ドキュメントDBは、解析アプリケーションのマニュアルや共有可能な事例など広く公開できるドキュメントを保管するものとなります。
「案件毎にセキュリティを担保すべき情報、解析毎で改めて調べる必要のない材料の物性データ、そして全員がアクセス可能なマニュアル等の3分類に落ち着きました」と村田氏。

解析業務をグループ会社に委託する発注内容、金額や結果報告書の内容を複数人で回覧するワークフロー機能も活用しています。 「主に解析業務を委託する宇部情報システムとは、解析データをCAE-ONEで共有しています。システム上でやり取りができるので、紙での承認が必要なくなったのは業務効率化につながっていますね」と村田氏は語ります。

CAE-ONEの利用が当たり前の光景に

こうして、データの体系的な保存、容易な検索、参照権限の管理という機能が使えるようになり、機能面での目的は満たすことができました。過去のデータを検索する際、社員がCAE-ONEを利用するのは、今では当たり前の光景となり、以前のような、ファイルサーバの中にあるデータを一生懸命探すというような作業はありません。
「一般的な業務において、業務時間の8分の1は技術文書の検索作業など情報収集に使っていると言われています。その分の工数は大幅に削減できているのではないでしょうか」(村田氏)

さらに、その先を見据えて次のように続けます。
「機能面においては、ほぼ満足できるものになりましたが、これらのデータをナレッジとして本当に活用できているのかという点では、まだまだやれることは残っていると思います。例えば、解析依頼書の内容に関してメールやチャットでやりとりを行うことがあるのですが、その依頼書に添付された具体的なファイルと紐付けておくことができれば、会話の中に含まれるナレッジを後からでも参考にできますよね。そのようなデータ活用を狙ってCAE-ONEにディスカッション機能を追加してもらいました。今後はチャットデータについても同様にナレッジ化を実現できないか模索中です」

さらに進化する宇部興産の解析データベース

AI活用やデジタルトランスフォーメーションが進展し、データの価値が高まっています。早くから解析データベースを整備してきた宇部興産には、すでに多くの貴重なデータが蓄積されており、その先見性は素晴らしいものがあります。今後、この解析データベースをどのように生かしていこうと考えているのでしょうか。
「課題への問いかけに対し、その解決方法を答えてくれるチャットボットのような仕組みがあるといいですよね。私たちが早くからデータの重要性を考えていたことは間違いではなく、その価値はこれからさらに高まっていくと思います。CAE-ONEへの満足度は非常に高いです」と村田氏は語ります。

2021年、CAE-ONEを最新バージョンへ更新し、更なる機能の追加も検討中とのこと。宇部興産の解析データベースは、今後もさらに進化していきます。
「ISIDはこちらからの要望に対し、いつも親身に対応してくださり非常に助かっています。だからこそ、これだけの長い付き合いになっているのだと思います。今後とも、どんどん新たな提案をしていただいて、我々の思考の幅を広げていってほしいです」

ISIDは2022年、CAE-ONEの名前をi-SPiDMに変え、新たな機能を追加。今後も製造業の解析業務を強力に支援していきます。

2022年4月更新

  • 記載情報は取材時(2021年12月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

ご参考資料

ISIDが40年以上にわたるCAEビジネスで培った知見とノウハウを結集した、SPDM(Simulation Process and Data Management)システムです。解析・実験など検証業務プロセスの効率化、設計品質の向上・製品開発の期間短縮に貢献します。

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