KANEMATSU USA INC. ビジネス変革を支えるデータ分析プラットフォームを構築

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写真左よりISIDアメリカ 中村友洋、KANEMATSU USA INC. ゼネラルマネージャー 中川新介氏、ISIDアメリカ 岡崎雄太

創業から130年以上の歴史を持つ兼松株式会社。1951年、日本商社として戦後初めて米国現地法人を設立するなど、早くから積極的に海外展開を進め、今では世界各地に拠点を持つグローバル企業として知られています。
KANEMATSU USA INC.のサマーセット支店は、1990年代前半から本格的にプリンター事業のビジネスを開始。当初は、製品販売中心のビジネススキームでしたが、2010年代後半からは、トータルソリューションの提供へと大きな変革を推し進め、その第一歩として、2017年に、兼松株式会社がプリンターメーカーを買収し、製販一体スキームの体制構築を開始しました。

こうした中、さらなる事業拡大を目指し、新規需要・新規案件の可能性を的確に捉えるため、2021年にスタートしたのがプリンターの需要予測プラットフォームの開発プロジェクトでした。
データウェアハウスにSnowflake、AI運用基盤にAmazon SageMaker、BIプラットフォームとしてTableauを採用。データ収集から分析まで一気通貫でできるプラットフォームが完成したことで、需要予測の精度向上と効率化に大きな効果を発揮しはじめました。プロジェクト全体を統括した、KANEMATSU USA INC. ゼネラルマネージャーである中川新介氏は、「ISI-Dentsu of America(ISIDアメリカ)と協業することで、我々の理想に近づきつつあると感じています」と話します。

データ活用で理想の経営を目指す

ISIDアメリカと協業することで、我々の理想に近づけそうだと実感が湧いてきています

KANEMATSU USA INC. ゼネラルマネージャー 中川新介氏

「兼松が日本のプリンターメーカーを買収し、アメリカでも、そのメーカーの製品販売を事業の中心に据えることになりました。さらには他社との差別化をはかるため、製品単体の販売だけではなく、顧客へのコンサルティングから顧客ニーズに応じた製品提供、及びその後のアフターフォローまでトータルで提供する事業形態への転換を目指し始めました」中川氏は新たな事業を成長させるため、さまざまな施策を模索していたと話します。
「ITの進化により、いまや業界の垣根は完全に取り払われています。我々商社も、DXを推進しデータ分析を駆使して顧客のニーズを取り込むことで、これまでのビジネスの枠組みを超えて一歩も二歩も他社の先を行くような事業を展開しなければならない。この理想に近づくためには、我々がこの30年で培ってきたデータや経験を、活用する仕組みが必要でした」と中川氏。

データを基点に顧客ニーズを把握し、新たなビジネスを作り上げる。中川氏は、DXを自社でも推進したいと考え、パートナー探しを始めます。しかし、その提案の多くは、実態に即していなかったり、予算規模が合わなかったりするなど、中川氏のイメージにフィットするものではありませんでした。

KANEMATSU USAとISIDアメリカの出会い

複数社と面談を行う中で、ISIDアメリカとの出会いがありました。中川氏はこの時の印象を次のように語ります。
「ISIDアメリカは、私たちがやりたい事を的確に理解してくれ、私たちの立場にたって、興味深い提案を、いつもしてくれました。これまでとは違い中身のある面白い提案もしてくれました。レスポンスも早く、相性の良さのようなものを感じましたね」

AIを活用したデータ分析ソリューションを担当していたISIDアメリカの岡崎雄太は、「当時ISIDアメリカでも、新たなビジネスを始めようとしていました。金融機関向けにデータウェアハウスを提供するチームと私が所属するデータサイエンティストのチームが組んで、データ収集から分析まで一気通貫でできるクラウドベースのデータ分析プラットフォームをサービス化しようとしていたのです」と話します。
ISIDアメリカで、金融機関向けソリューションを担当していた中村友洋は中川氏との出会いをこう振り返ります。
「最初にいくつかの課題を出していただいたのですが、どれも違う視点でありながら確かにデータを活用することで実現できそうなものばかりでした。これが実現できればKANEMATSU USAのビジネスを大きく変えるものになるだろうと。まさに私たちが構想していた新たなサービスと合致していたのです。それならば手探りの部分もありますが、一緒にやらせてもらえないですかと提案しました。最初の課題としてプリンタの需要予測に取り組むことにしたのです」

中川氏が思い描いていた1つのツールは、これまで経験や勘に基づく暗黙知で把握していた顧客の発注サイクルなどを、AIのデータ解析によって、より詳細に予測する仕組みです。さらには、自社のデータだけでなく、経済指標や市場の動向、競合の動きなどの外部データを活用することで、新たな需要傾向が見えてくるのではないかと期待していました。

クラウドサービスで需要予測モデルのプラットフォームを構築

フィードバックを与え合うことで、一緒に課題に取り組むパートナーという形になれたのはとても良い経験でした

ISIDアメリカ 中村友洋

2021年4月、プロジェクトで最初に手を付けたのが、既存データの可視化でした。
「Tableauを導入したことで、月次報告資料の作成作業が格段に効率化されました。顧客別の詳細データもすぐに確認できるようになり、お客様との打ち合わせ前に過去実績を確認し、より細かな質問や提案ができるようになったことも大きな変化です」と中川氏は語ります。

また岡崎は、データが可視化できたことで、KANEMATSU USA社員のデータに対する理解が深まったことも大きいと指摘します。
「自社のデータが資産としてどのような価値を持つのか、このフェーズで感じていただけたと思います。ここで具体的なイメージを持てたことは、自社のデータ資産をさらに活用しようという次のステップへの布石となったと感じています」

2021年10月、次フェーズとして需要予測モデルのプラットフォームを構築し、実際にデータをAIで解析し予測するPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施します。ここでの課題は、経済指標や市場動向などの質の高い外部データをいかにして取り込むかという点でした。そこで選択されたのが、データクラウド「Snowflake」です。Snowflakeは、データウェアハウスとしてのスケーラビリティやパフォーマンスに優れているだけではなく、データプロバイダーが提供する様々なデータを選択できる「Snowflakeマーケットプレイス」を有していることが大きな特長です。この機能により、外部データを容易に取り込むことができます。

機械学習の運用基盤として選んだのは「Amazon SageMaker」でした。 「KANEMATSU USAのプリンター事業は、本体や消耗品などの分類ごとに多くの商品を取り扱っています。商品の中には販売推移が類似するものがありますが、多くの商品の長期間に渡る販売推移の類似性を人間が認識するには限界があります。そうした人間が認識できない隠れた類似性を発見して需要を予測できるのがAmazon SageMakerでした。さらには、運用していく中で生まれる新しいデータを元に再学習し、モデルの精度を上げていくという機能を備えている点も重要でした」(岡崎)

PoCで得られた予測結果の手応えを、中川氏は次のように語ります。
「今まで我々が経験に基づいて捉えていた傾向がデータからも導き出されたことは良かったです。ISIDアメリカからさまざまなデータの見方や考え方を教えてもらい、新たな知見を得られた点も大きな収穫になりました」

また、岡崎もKANEMATSU USAの実務視点からの意見がもらえたことは、とても貴重な体験だったと語ります。
「Snowflakeマーケットプレイスには1,500を超えるデータがあります。データを選定するにあたってはマクロとミクロの両方の視点で市場動向を捉えることが必要だと考えました。例えばマクロ視点のデータとしては米国全体の経済動向が分かるGDP、Inflation Rate、Interest Rateなどの主要経済指標、ミクロ視点のデータとしてはプリンター販売先の業界別動向を捉えるデータを検討しました。どういったデータを活用するべきか共に議論できたことで、実際のビジネスの需要予測においてどのようなデータが有効なのか理解できるようになりました」

SnowflakeとAmazon SageMakerの強みを生かしたPoV

多くの議論によって共通の意識を持てたことが、同じベクトルを向いてプロジェクトを進めるための大事な骨組みになりました

ISIDアメリカ 岡崎雄太

PoCの手応えを得て、現在進行中なのが、構築したプラットフォームを実務に適用するPoV(Proof of Value:価値実証)の取り組みです。

このフェーズで重要になるのは、新しいデータを取り込み予測モデルに再学習させるというサイクルがうまく回るかどうかの検証です。

モデルの精度を上げるには、データをチューニングするやり方と、アルゴリズムをチューニングするやり方の2種類あります。今回、SnowflakeとAmazon SageMakerを組み合わせたことで、このどちらも非常に効率よくできたと岡崎は話します。
「データのチューニングでは、Amazon SageMakerの正規化の機能が非常に有効でした。Snowflakeで得られるGDPや失業率などのマクロデータと、プリンターの需要数などといったミクロデータの取り扱いが容易になり、学習の効率が高まりました。また、アルゴリズムのチューニングでは、100〜200のパラメータの組み合わせを効率的に比較でき、最適解を短期間で得ることができました。これらを私たちがツールなしでやっていたら、半年くらいかかっていたかもしれないですね」。

中川氏が思い描いていた1つのツールは、これまで経験や勘に基づく暗黙知で把握していた顧客の発注サイクルなどを、AIのデータ解析によって、より詳細に予測する仕組みです。さらには、自社のデータだけでなく、経済指標や市場の動向、競合の動きなどの外部データを活用することで、新たな需要傾向が見えてくるのではないかと期待していました。

多くの議論を通して深まったパートナー関係

ここまでのプロジェクトを振り返って、中川氏は次のような感想を語ってくれました。
「ISIDアメリカのメンバーはビジネスの実態や私たちの考えを理解してくれて、複数のツールを提案、実装してくれました。それぞれの立場からさまざまな議論ができ、その内容をしっかりと現実に落とし込んでもらえたのは非常にありがたかったです」

両社は、各フェーズの立ち上げの際、意見交換に多くの時間を割いたといいます。
「プロジェクトの目的、ビジネスの課題、テクノロジーで解決したいことなど、いろいろな話をさせてもらいました。ここで共通の意識を持てたことが、同じベクトルを向いてプロジェクトを進めるための大事な骨組みになったと感じています」と岡崎は語ります。

今回構築したプラットフォームは、他拠点や他事業でも活用できるものになると中川氏は力強く話します。
「兼松のプリンター事業はヨーロッパやアジアでも展開していますので、まずはそこに横展開できないかと考えています。また、その他の事業領域でも応用できるかどうかを見極めていきたいです」。

両社のノウハウを生かすことができた今回の体験は、ISIDアメリカのマインドセットを大きく変えたと中村は続けます。
「これまで我々はテクノロジーの専門家としてお客様に価値を提供しなければならないと考えてきましたが、もしかすると、それは一方通行の考え方だったかもしれません。今回、KANEMATSU USAの皆さんは、『テクノロジーを使う側』としての経験と知見をお持ちでした。テクノロジーを提供する我々とフィードバックを与え合うことで、一緒に課題に取り組むパートナーという形になれたのはとてもよい経験でした」

今回のプロジェクトを中川氏は、次のように総括してくれました。
「ここまで来るには、我々だけではとても無理でした。ISIDアメリカと協業することで、我々の理想のビジネスツール開発ができそうだと実感が湧いてきています。まだまだISIDアメリカのノウハウを活用する事で、様々な新しい事ができると考えていますので、その実現に向けて、さらなるサポートを期待しています」。

2022年7月更新

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社名
KANEMATSU USA INC.
本社
1900 East Golf Road, Suite 800, Schaumburg, IL 60173, U.S.A
事業内容
国内外のネットワークと各事業分野で培ってきた専門性と、商取引・情報収集・市場開拓・事業開発・組成・リスクマネジメント・物流などの商社機能を有機的に結合して、多種多様な商品・サービスを提供する商社
  • 記載情報は取材時(2022年4月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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