ブラザー工業株式会社

クラウドCAEプラットフォーム「Rescale ScaleX Platform」を設計環境に組み込み、
開発を加速

  • ものづくり
写真左より アビームシステムズ株式会社 浅野早紀氏、ブラザー工業株式会社 IT戦略推進部 IT事業推進グループ 中切將仁氏、アビームシステムズ株式会社 シニアスペシャリスト 大森直樹氏

1908年創業のブラザー工業株式会社。ミシン修理からはじまった同社の事業はいまや欧米、アジアをはじめ中近東、アフリカまで世界40以上の国と地域で広がるグローバルビジネスに発展しました。様々な業種がコロナ禍で影響を受けるなか主力のSOHO向けプリンター複合機や家庭用ミシンの販売は堅調に推移。競争激しいグローバル市場でさらなる成長を続けていくため、同社は事業のスピード向上とコスト競争力強化に取り組んでおり、その一環として社内ITインフラのクラウド化を積極的に推進しています。

こうした状況のなか、同社のIT事業推進グループはプリンター開発部隊にクラウドCAEプラットフォームRescale ScaleX Platform®を導入。衝撃解析など計算リソースを要するシミュレーション環境をクラウドに移し、設計の機動力を高めています。その導入にあたり解析の自動化の仕組みや既存の社内システムとのハイブリッド環境の構築に力を奮ったのはISIDでした。導入を指揮したIT事業推進グループのスーパーバイザー、中切將仁氏は「今回のプロジェクトが円滑に進んだのもISIDの存在が大きい。インフラ構築、クラウド展開、CAEに実績があるので安心できます。今後も開発力を高める新しいテクノロジーをどんどん提案してもらいたい」と話します。

オンプレミスかクラウドか

「予算をかけて社内サーバーを入れ替えるか、コスト効率が良く処理速度が速いクラウドにするか。メリットを天秤にかければ結論は明らかでした」と話す中切氏。
社内サーバーとは自社開発の解析自動化システム“ATLAS”に装備された計算用サーバーのことで、同社プリンター開発部隊では設計エンジニアがそれを使って強度解析などを行っていました。

しかし2019年、ATLASに組み込まれたハードウエアの保守契約が切れることとなり、IT事業推進グループはそれをどのように刷新するか選択を迫られます。
折しもブラザー工業では、成長を実現するため事業のスピード向上・コスト競争力強化を目指し事業運営基盤構築を進めており、ITインフラのクラウド化が進行。ものづくりの部門でもその方針に沿った動きが始まっていました。「クラウドには災害時の事業継続のメリットもあり、セキュリティが担保できれば、積極的に活用していこうという機運でした」と中切氏は振り返ります。

ハイブリッド環境を構築

ほとんど使われないツールに予算を割くより従量制のクラウドサービスを利用する方がはるかに効率的です

アビームシステムズ株式会社 シニアスペシャリスト 大森直樹氏

ATLASに組み込まれた解析ツールのなかには衝撃・熱流体解析のLS-DYNAのようにハイスペックCPUの並列化を要するものもあり、その高額なIT投資は予算を圧迫していました。
「開発のピーク時にしか使われないツールを維持するため大きな予算を割くよりも、従量制のクラウドサービスを活用する方がはるかに効率的です」。ブラザー工業のITサポートを担うアビームシステムズ株式会社でATLASの保守管理と運用支援にあたっている大森直樹氏はそう話します。

しかし、そのためにはクラウドCAEを従来と同じ使い勝手でシームレスに社内システムに組み込む必要があり、そうしたハイブリッド環境を構築するのはたやすい仕事ではありません。信頼のおけるパートナーの支援が必須でした。
そこでIT事業推進グループが白羽の矢を立てたのは、プリンター開発部隊と長年の付き合いがあったISIDでした。「ISIDの仕事ぶりは定評があり、しかも当時クラウドHPC(High Performance Computing)の世界的大手Rescale社と契約を交わしRescale ScaleX Platform の導入支援を始めていたので、まさにうってつけのタイミングといえました」と中切氏は話します。

即戦力のクラウドCAE

操作はシンプルで面倒がないのでエンジニアには歓迎されます

アビームシステムズ株式会社 浅野早紀氏

Rescale ScaleX Platformは米国Rescale社が提供するクラウドCAEプラットフォームで、衝突解析や流体解析等の大量のマシンリソースを要するコンピュータシミュレーションをHPC環境上で実行できます。300種以上の商用およびオープンソースアプリーションが搭載されており、目的に応じて最適なアプリケーションやハードウエアを組み合わせて簡単に処理を実行することができます。

「当社では、従来の使用感で解析業務が遂行できるようATLASから実行できるハイブリッド環境に加え、直接Rescale ScaleX Platformをブラウザで立ち上げ、画面上でハードウエアやソフトウエアを選んで自在に解析を実行できる環境も用意しています。ブラウザさえあれば実行できるので、テレワーク下でも場所を選ばず必要なときに必要なだけ最新の計算リソースを使えます」 と大森氏は話します。

「基本料金がない完全従量制。セキュリティは米国政府機関が利用するほど確かというのも採用のポイントになりました。操作もシンプルで、ジョブファイルをアップロードし、必要情報を入力してあとはボタンを押すだけ。面倒がないのでエンジニアにも歓迎されています」。Rescale ScaleX Platformを事前検証したアビームシステムズの浅野早紀氏はその特長についてそう話します。

エンジニアに本来の仕事を

ISIDはインフラ構築、クラウド展開、CAEに実績があるので安心です

ブラザー工業株式会社 IT戦略推進部 IT事業推進グループ 中切將仁氏

2019年9月に始まったATLASとRescale ScaleX Platformの連携システムの構築は12月に完了、翌年3月にそのハイブリッド環境は本稼働しました。導入したRescale ScaleX Platformの評価について中切氏は「開発部隊の行う解析ジョブ数は確実に増えており、概ね好調です。ただ、想定していなかった、より高度な解析ソフトを使いたがるエンジニアもいて、そこはちょっと困っています」と苦笑します。

「プリンター開発では樹脂と金属の組み合わせなど複雑な構造をもつパーツがあり、そうしたパーツの強度解析を通常のマシンで行うとどうしても時間がかかります。しかし、Rescale ScaleX Platformを使えば1ジョブあたり数百コアまでの計算リソースが用意できるので、解析結果をタイムリーに得ることができる。おのずと設計のスピードが向上します」。

さらに中切氏はこう続けます。「エンジニアというのは設計以外の付帯業務もたくさん抱えています。しかも開発期間は年々短くなる一方。だから少しでも余計な負担を減らし設計業務に集中させてやりたいと思っています。Rescale ScaleX Platformの導入で計算の待ち時間を減らし、本来の業務に集中できる環境を作る。目的はそこにあります」。

最後に今回のプロジェクト支援にあたったISIDの評価を尋ねると、中切氏はこう述べました。「今回のプロジェクトが円滑に進んだのもISIDの存在が大きい。インフラ構築、クラウド展開、CAEすべての面で実績があるので、質問に対するレスポンスも早かったですし、大きなトラブルもありませんでした。これからも開発力を高める新しいテクノロジーをどんどん提案してほしいですね」。

2022年4月更新

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社名
ブラザー工業株式会社
本社
〒467-8561 名古屋市瑞穂区苗代町15番1号
設立
1934年1月15日
売上
631,812百万円 (2020年度/連結)
資本金
19,209百万円 (2021年3月31日現在)
従業員
38,741名 (2021年3月31日現在/連結)
事業
プリンティング・アンド・ソリューションズ事業、パーソナル・アンド・ホーム事業、マシナリー事業、ネットワーク・アンド・コンテンツ事業、ドミノ事業
  • 記載情報は取材時(2022年1月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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