株式会社ネットプロテクションズ 後払い決済サービスの与信審査システムを刷新 即時審査とマイクロサービスが生み出す新たな可能性

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写真左より 石川清大氏(株式会社ネットプロテクションズ ビジネスアーキテクトグループ シニア・アーキテクト)、澤田智希氏(同 データサイエンスグループ)

後払い決済サービス「NP後払い」や会員制決済サービス「atone(アトネ)」、BtoB向け決済サービス「NP掛け払い」など、さまざまな決済サービスを展開する株式会社ネットプロテクションズ。2002年に他社に先駆けて後払い決済事業を開始した同社は、2018年実績で年間流通総額2,500億円、年間ユニークユーザー数1,350万人を超え、通販ランキング上位300社の後払い決済サービスで国内シェア約7割を占めます。 2019年、同社は購入者に支払う能力があるのか、不正利用ではないかなどを審査し、サービス利用の可否を判断する与信審査システムを刷新。これにより従来人手を介し最大2時間かかっていた審査が即時で可能となりました。
さらに、この与信審査システムは、1つのアプリケーションをビジネス機能に沿った複数の「小さいサービス」に分割・連携させる「マイクロサービスアーキテクチャ」を採用。これによりメンテナンス性や機能拡張性が高く、ビジネスの変化にも迅速に対応可能な仕組みを構築しました。
このシステムをネットプロテクションズとともに創り上げたのはISIDの金融ソリューション事業部。与信審査プロセスのマイクロサービス化や不正検知のためのAI構築など広範にわたる支援を行い、プロジェクトを成功に導きました。
データサイエンスグループの澤田智希氏はISIDのサービスについて「私たちのビジネスや私たちのお客様のことまで踏み込んで考えてくれたおかげで、納得できる仕組みになりました。これからはこのシステムを育てていく段階。今後もぜひISIDの力を借りていきたいです」と語ります。

後払い決済市場の活性化と即時与信の重要性

後払い決済サービスのパイオニアとして、2002年のサービス開始以来高いシェアを誇ってきたネットプロテクションズ。しかし、この市場に可能性を感じた他社の参入が相次ぎ、同社にとって競合優位性をいかに保っていくかは大きな課題となっていました。
ネットプロテクションズの思想は、疑わしきは罰せず、なるべく多くの人に利用してもらおうというもの。お客様が納得のいく審査をし、サービス利用が不可となった場合にも必ずその理由を説明できるようにするというポリシーがあります。そのため、不正の疑いがある取引の場合、最後は与信審査のプロたちが目視によって確認・判断するというプロセスを踏んでいました。
「与信審査システムの検討を始めた2018年当時、競合他社には、与信の通過率を落としてでも、スピードを重視し即時与信行うところも出てきており、社内にはこのままの与信審査の仕組みではクライアントの乗り換えが進んでしまうのではないかという危機感さえ漂っていました」と、ビジネスアーキテクトグループ シニア・アーキテクトの石川清大氏は語ります。

また、データサイエンスグループの澤田智希氏は、これまで使い続けてきたシステムでは、与信審査時間だけでなく、サービスの機動性にも課題があったといいます。「システム全体が一枚岩の大きなシステムになっており、機能を追加したくても影響範囲が大きく、開発にかかる時間とコストが大きな課題となっていました。」

新たなビジネスを共に創り出すパートナー

ISIDはビジネスの理想も含めて、一緒に検討してくれる存在だと感じていました。

澤田智希氏

開発パートナーを検討する中で、2015年から「NP後払い」のオプションサービスのフロントシステム開発で付き合いのあったISIDが浮上します。
「即時与信は我々としても初めてのチャレンジ。当社のビジネスおよび審査業務に対し十分な知見と実績を持つパートナーから選定することにしました」石川氏は当時のことをそう振り返ります。

さらに、澤田氏はISIDを選んだ理由を次のように話します。
「我々の要件を鵜呑みにするのではなく、ビジネスの在り方も含めて、ゼロから一緒に検討してくれる存在が必要だと感じていました。また、今回の開発では新たな技術の活用も視野に入れており、先端技術への感度の高さもポイントとなりました。そこで選んだのがISIDだったのです」

試行錯誤を繰り返したシステム設計

ISIDとは次のチャレンジも引き続き一緒にやっていきたいですね。

石川清大氏

ネットプロテクションズとISIDが考えた新たな与信審査システムには二つの特長があります。
一つ目は、購入者属性・支払い意思など、審査に用いる属性情報の収集と判定を、業務機能ごとに整理・分割してマイクロサービス化することで機動力の高い仕組みにすること。二つ目は、特別な知識がなくても機械学習モデルの構築から運用までを行うことができる不正検知の仕組みを構築すること。

先に走り始めたのは不正検知プロジェクトでした。
「新たな不正の手法は日々生まれるため、その不正をどう見破るかはイタチごっこです。一つモデルを作って終わりではなく、定期的に新たな機械学習モデルの開発やデータの学習を自分たちで行えるようになれば不正検知の精度を保つことができるのではと考えました」と澤田氏は語ります。
不正検知の機械学習には複数モデルの構築や容易なデータの再学習等の観点からアマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供する機械学習プラットフォームAmazon SageMakerを採用。取引量の増加や繁忙期を見据え、システム基盤もオンプレミスからクラウド環境へ移行することとし、社内の活用実績のあるAWS上に構築することを決定しました。
2018年10月、両社はPoCを開始します。
しかしAmazon SageMakerはサービスインしたばかりの新しい仕組み。仕様や技術をキャッチアップしながらプロジェクトを進める、難易度の高いものでした。ドキュメントが少なく、実装しても思い通りに動かないこともあり、試行錯誤の連続だったといいます。
「ISIDは、先んじて新しい技術を検証してくれ、提案ベースで柔軟にアイデアをくれたので、幅広く可能性を議論できたのはありがたかったです」(澤田氏)

追って、2019年1月、与信審査システムのマイクロサービス化の検討にも着手します。
「マイクロサービス化するために機能をどのように分割するか整理するところから始めました。熟練者の不正検知の知見やノウハウを機能に落とし込むところが大変苦労しました。私たちのサービスにも詳しいことに加え、与信審査システム構築の実績があるISIDのサポートなしでは成し遂げられませんでした」(石川氏)

図:後払い決済の仕組みと与信審査システムのイメージ

柔軟なアイデアで幅広く可能性を議論

こうして2019年11月、即時審査を実現した与信審査システムがリリースされました。
即時与信が必要不可欠なアパレル通販やテレビショッピングなどへの提案ができるようになり、ビジネスの幅が広がったと石川氏は話します。
「マイクロサービス化したことで、『別の事業でも一部の機能が活用できる』『新しい事業を立ち上げる際にも活用できる』など、事業を横断したシステム構想も描けるようになりました。障害発生時などサービスを切り離して稼働できるようになったことで、継続して一定品質を担保しつつ決済サービスが提供できるところも安心感につながっています。『新たなチャレンジ』と『メンテナンス性の向上』の両面を支える仕組み。思い描いたものが出来上がったと思っています」
「私たちのビジネスや私たちのお客様のことまで踏み込んで考えてくれたおかげで、納得できる仕組みになりました。これからはこのシステムを育てていく段階。今後もぜひISIDの力を借りていきたいです」(澤田氏)

2021年3月更新

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社名
株式会社ネットプロテクションズ
本社所在地
〒102-0083 東京都千代田区麹町4丁目2-6 住友不動産麹町ファーストビル 5階
設立
2000年1月
資本金
1億円
従業員数
310名(2020年4月1日現在)
事業内容
BtoC通販向け決済「NP後払い」の運営
BtoB向け決済「NP掛け払い」の運営
BtoC向け会員制決済「atone(アトネ)」の運営
台湾向け決済「AFTEE(アフティー)」の運営
ポイントプログラムの運営
  • 記載情報は取材時(2020年11月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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