古野電気株式会社 経営モニタリングソリューション「EMPHASIGHT」でグローバル経営のガバナンスを強化

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峯川和久氏(古野電気株式会社 IT部部長)

船舶用電子機器の総合メーカーとして、グローバルに事業を展開する古野電気株式会社。1948年に魚群探知機の実用化を世界で初めて成功させて以来、航海機器、通信機器のほか、気象観測システムや地盤変位計測などの開発を手掛けています。拠点は、本社がある兵庫県西宮市をはじめ、支社や販売会社が日本に約30カ所。海外関係会社も米国に2社、欧州に14社、アジアに10社、オセアニアに1社と、世界各地に点在しています。
同社は、グローバル戦略の一環として2013年にSAP ERPを導入し、拠点ごとに分かれていた会計システムを一本化しました。このプロジェクトを率いていたのが、同社IT部 部長の峯川和久氏。各社の経営情報を容易に取得できるようにしましたが、ある時経理部門でのデータの活用が進んでいないことに気づきます。「決算データ分析や不正兆候検知といった経理の複雑なデータ分析業務には、専用のシステムが必要ではないかと考え始めていました。そんなとき、ISID上海から声がかかったんです」
峯川氏は2019年、ISID上海が開発を進めていた財務データ分析システムについてアドバイスを求められ、積極的にそれに応じます。そして完成した経営モニタリングソリューション「EMPHASIGHT(エンファサイト)」は、財務データが3Dで表現され垂直/水平分析がしやすく、峯川氏が実感していた課題を十分に解決するものになりました。「EMPHASIGHT導入後、経理担当はもとより、経営や監査法人など、社内外に多くの良い影響をもたらしています」と語ります。

グローバル拠点のデータを集約し、柔軟にデータを取り出せる仕組みを構築。その先に見えた課題

2013年、古野電気はグローバルガバナンス強化の一環としてSAP ERPを導入し、それまで拠点や部署ごとの部分最適で構築されていたシステムを、SAP ERPでひとつにまとめることに成功しました。このプロジェクトを率いていた峯川氏は、元経理の知見も生かして、同社に様々な変革をもたらしていきます。
まず、財務会計の部分はSAP ERPの標準機能をベースに可能な限りシステムは変更しない方針とし、業務をSAP ERPの仕様に合わせて徹底的に改革していきました。一方、柔軟に変更を加えたい予算や計画の部分は、ISIDが提供するSAPデータ連携ソリューション「BusinessSPECTRE」で管理し、必要なデータを柔軟に取り出せるようにしました。さらにデータ可視化ツールも導入し、ビジュアルなデータ分析も容易に行える環境を作っていきます。「私たちはいつでも誰でもデータにアクセスすることのできる“データの民主化”を強く推進していました。しかし、データを扱う機会が多いはずの経理で可視化ツールの活用がなかなか進まない——複雑な経理のデータ分析を瞬時に行うためには、今の仕組みでは限界があるのかもしれないと考え始めていました」

経理・監査・経営の視点を併せ持つ、理想のシステムを求めて

開発はまさにアジャイルでした。要件定義から始めていたら、多分、今の機能の10分の1もできていなかったと思います。

古野電気株式会社 IT部部長 峯川和久氏

2019年、別件で中国を訪れていた峯川氏に、中国現地法人へのSAP展開支援以来付き合いがあったISID上海の担当者から、「開発中のシステムについて意見を聞かせてほしい」と声がかかりました。
ISID上海は、海外子会社による会計の不正や横領といった事件が頻発する背景を受け、会計データから不正の予兆を検知できるシステムの開発に着手。時間をかけて一般企業・銀行・監査法人等へのヒアリングを行い、財務諸表の垂直分析/水平分析ができるシステムを作りました。さらにもう一歩踏み込んだ機能が欲しいと考え、ITと経理の両方の経歴を持つ峯川氏に意見を求めました。

「私自身、既存のシステムに限界を感じていたこともあり、かなり前のめりで話に入っていったのを覚えています」と、峯川氏。「なんと良いタイミングで、私に話を聞きに来てくれたんだと思いましたね(笑)」同社はパイロットユーザーとして、開発されたばかりのEMPHASIGHTの導入を決定。課題として抱いていた、経理や監査におけるビジュアルなデータ分析の機能開発に協力します。

峯川氏は、まず決算データで視覚化すべき“視点”を整理したといいます。その“視点”とは、大きく3つ。「経理の目」「監査の目」「経営の目」でした。「経理の目」とは、前期比較、予算比較、他社比較など、様々な比較検証を行い、事業の変化点や隠れた事象を見つけ出す視点です。時には会計上の不備や、不正の発見にも繋がります。「監査の目」は、会社の決算をモニタリングしている監査法人からの視点。決算において、内部統制がきちんと機能しているかを確認する立場です。そして三つ目が、「経営の目」です。「決算で一番大事な視点です。グループ全体を俯瞰して見つつ、海外の小さな子会社の動きも察知し、そこに経営戦略と矛盾する兆候が見えたら早期に手を打たねばなりません。ですから、決算データの見方にも、マクロとミクロ、双方の視点が必要なんです」
ISID上海は、峯川氏との会話の中で生まれたアイデアをすぐにシステムに反映、アジャイル開発で機能を作り上げました。
「話し合いの中から、実現したいことのイメージがどんどん膨らんでいったのが刺激的でした。会話のあとすぐにISID上海が開発し、次々に具現化していったんです。SEの方たちの前向きな姿勢と、実装能力の高さに驚きました」

連結決算情報をビジュアルに管理できる「EMPHASIGHT」

こうしてEMPHASIGHTはより強力な機能を備え、2020年8月に提供開始されました。
EMPHASIGHTはROICやROE 等の財務指標を自由に選択し、ダッシュボードに表示することが可能です。「連結決算を見る上では、パーセンテージや割合で示される指標の大小だけでなく、金額規模との組み合わせで判断すべき。EMPHASIGHTは、このバランスをビジュアル化できるのです」と峯川氏は語ります。
また、不正売上計上、引当金不正計上といった日本の監査法人が不正調査で利用する分析手法を40種類以上テンプレート化し、これらの分析手法に基づいたリスクの兆候が一目でわかるため、これまで経験的に調査していたリスク分析と比較し、より効率的に調査を行うことができます。

「会計の世界を紐解くと、たいていの帳票は縦軸に勘定科目が並び、横軸には会社別、年度別、月別といった項目が並びます。でも実際には会社別かつ年度別に見る必要もあるので、3Dのようなイメージで捉える必要があります」EMPHASIGHTは、この概念をビジュアルで表現するために、3Dのデータをいろいろな角度から見ることができる仕組みを実現しています。
「気になる数字があれば、その箇所にコメントを付けたり、資料を添付したりすることもできます。経理は年度比較の機会が多いので、分析結果をシステムに残すことにより、次期決算でさらに分析を深めることができるはずです」

社内外に様々な好影響を生み出すシステム

効率的な企業経営を推進するために、EMPHASIGHTが日本企業のデファクトスタンダードの一つになればいいですね。今後はより使いやすく、多くのデバイスへの対応を期待しています。

古野電気株式会社 IT部部長 峯川和久氏

「EMPHASIGHTを導入し、社内外から好評を得ています」と、峯川氏は語ります。
経理部は、データがビジュアル化されたことで全子会社の状況把握や認識合わせがしやすいため、決算時のヒアリングが効率的になったと言います。また経理部の若手からは「データの羅列だけでは覚えにくかった経理の着眼点が把握しやすくなった」、経営層からは「会議の場でより深い分析ができるようになった」という声があるほか、社外の監査法人からは「論点のすり合わせがスピーディーになった」という報告もあがっています。
監査法人にとっての効果はこれから出てくるはずだと峯川氏は語ります。「従来、監査法人は決算レビューをするために、財務諸表を過去資料と照らし合わせながら分析していました。ところが、EMPHASIGHTであれば、画面を見るだけで論点が一目瞭然なんです。コメントや添付資料がシステムに蓄積されるので、年度を追うごとに使いやすくなっていくはずです」

EMPHASIGHTの今後について、峯川氏は以下のように語ります。
「経理という部署は、機微な情報を扱うがゆえに他社交流が極めて少ない。しかし同じ法律のもとに業務を遂行する経理こそ、他社交流によってナレッジを深めていけるはずです。私たちがEMPHASIGHTを使う中で感じた課題を開発元に伝えることで、それが機能として反映される。つまり、EMPHASIGHTを介して、自社の知見を反映し、他社の知見を享受できる。間接的ではあっても、こうしたナレッジ共有により、日本企業が強くなっていくことを願っています」

2021年5月更新

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社名
古野電気株式会社
本社所在地
〒662-8580 兵庫県西宮市芦原町9-52
設立
1951年(昭和26年)5月23日
資本金
7,534 百万円
連結従業員数
2,978 名(単独 1,722 名)
事業内容
センシング技術、情報処理技術をコアに、舶用電子機器をはじめ、ヘルスケアや通信・GNSSソリューション、防災、監視ソリューションなどの産業用電子機器の製造販売
  • 記載情報は取材時(2021年2月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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