株式会社ジンズ LINEを新たなタッチポイントに顧客ロイヤリティを深める

  • 顧客接点改革
濱田 卓男氏(株式会社ジンズ アイウエア事業統括部 CX戦略本部 CXマネジメントグループ セールスプランナー)

旺盛な商品開発力と最新デジタルサービスの提供で、メガネの国内年間販売本数でトップを走る株式会社ジンズ(JINS)。2018年、同社はそれまで開設していたLINE公式アカウントに企業とユーザーの双方向コミュニケーションを可能にするLINE ビジネスコネクト(2019年4月にLINE公式アカウントに機能統合)を導入して自社のデジタルプラットフォームに連動させました。これによりLINEユーザーをターゲットにしたSNSマーケティングへの道が拓かれ、たとえば2019年春には位置情報連動型サービスLINE Beaconを使った来店者限定のキャンペーンを展開。スロット式クーポンの発行によりLINE公式アカウントの登録者が激増し、販売実績を押し上げました。また、既存のデジタルプラットフォームとの連携によりLINEユーザーのIDはJINSの顧客アカウントに紐付けされ、顧客データの属性・行動分析やターゲットを指定したメッセージの同時配信も可能になっています。JINSでこのプロジェクトをリードしてきたCXマネジメントグループの濱田卓男氏は「買い換え頻度が少ないメガネ販売では、お客様のロイヤリティをいかに高め、それを維持できるかが鍵。そのため国内最大のSNSであるLINEを新たなタッチポイントにし、JINS商品のファンとの魅力あるつながりを演出していきたい」と話しています。今回のLINE公式アカウントの本格的な運用開始にあたりスピーディーなサービス開発や自社プラットフォームとの連携に力を振るったのは、ISIDでした。

自然さの裏に緻密な連携

ISIDの提案には、“実現可能”という説得力があった

濱田 卓男氏

LINEのホーム画面にある公式アカウントから“JINS”を選び、トークをタップすると、そこにあるのはいくつものメニュー。商品や店舗の検索から、メガネ購入時の待ち時間確認、AIによる似合い度判定、自身のメガネの度数確認までさまざまなサービスが並んでいます。

これは、JINSが2018年に刷新したLINE公式アカウント。トーク画面上のリッチメニューをタップするだけでLINEユーザーは気軽に情報にアクセスすることができます。

チャットボットによる応答や必要事項の自動入力など、その流れるような自然さ。しかし、その裏側ではJINSアカウントの認証基盤、JINSの人工知能“JINS BRAIN”など独自サービスを支えるバックエンドシステム、さらに統合された顧客DBやメッセージの配信ターゲットを管理するCRMが動いており、それらがLINEプラットフォームに結び合わされています。ユーザーが意識せずただ便利さや楽しさだけを感じるその画面の向こうには、緻密に組み上げられたシステムが静かに稼働しているというのです。

説得力ある提案

システム構成や実装作業はISIDに任せていたので、その分野における心配事はありませんでした

濱田 卓男氏

このデジタル基盤を実装したのはISIDのマーケティングITチーム。今回の刷新プロジェクトを主導したJINS CXマネジメントグループの濱田氏は、ISIDを実装パートナーに選んだ理由として、その提案の実現可能性の高さを挙げています。

「数社にLINE公式アカウント刷新のアイデアを募りましたが、ISIDの提案は具体的な点でどこよりも優れていました」と濱田氏は指摘します。
「どんなアーキテクチャでどんな機能を実現し、どこでコスト削減を行うのかといったことが明確に示されており、概念的なマーケティング施策に終始していた他社とは明らかに異なっていました。そこには、“提案されていることは、すべて実現可能”という説得力があった」。

その提案の骨子は、2015年からISIDが手掛けてきたJINS MEME (各種アプリと結びついたセンサー付きウェアラブルデバイス)等のデジタルサービス・会員サービスの既存インフラを有効活用し、そこにLINEプラットフォームを相乗りさせることでコスト効率と拡張性を高めていくというもの。チャットボットの開発、アマゾンウェブサービス(AWS)上の認証基盤、SalesforceのCRM/マーケティングオートメーション、そしてLINEのプラットフォームとの緊密な連携が、そこには盛り込まれていました。

2017年6月、この提案に沿ってLINE公式アカウントの刷新のプロジェクトは始動します。

挑戦者の姿勢を支える

「システム構成や実装作業はISIDに任せていたので、その分野の心配事はなかった」と話す濱田氏。「むしろ公開後のマーケティング施策をどう展開すべきか、社内調整で奔走しました」と苦笑します。

プロジェクトは円滑に進み、2018年の初め、刷新されたLINE公式アカウントは一般公開されます。LINE、AWS、Saleforceの3つを統合したデジタルプラットフォームは拡張性と柔軟性に富み、誰も手をつけていないことに果敢にチャレンジしていくJINSのマーケティング展開に力をもたらしています。

その一例が、2019年春に実施されたセールスキャンペーン。業界ではまだ導入実績が少なかったLINE Beaconを用いてLINEユーザー向けに来店者限定のスロット式クーポンを発行したところ、1日あたりの友だち登録数が7倍に激増、店舗の売上増加に一定の効果をもたらしました。その効果もあり、2019年12月現在でも、LINE Beacon経由でJINS公式アカウントのお友達は増え続けています。

鍵は顧客ロイヤリティ

今後さらに販売力を高めていくため、最大の課題は「顧客ロイヤリティ」と濱田氏は話します。「JINS商品の価格帯では、買い上げの頻度は平均で約3年に1本ほど。つまり、今日購入したお客様が次に店舗に戻ってくるのは3年後ということになります。そのときまた戻ってきてくれるかどうか、あるいはもっと早く戻ってきてくれるかどうかは、ブランドに対するお客様のロイヤリティにかかっています。今回のプロジェクトはまさにそのためのものだといえます。これからLINE公式アカウントを新たなタッチポイントとして、JINSのファンとの魅力あるつながりを演出していきます」。

この言葉を裏付けるように、JINSは新たなデジタルプラットフォームを活用して次々と新たなサービスを打ち出しています。2019年11月にはユーザーが「メガネをかけたまま」スクリーン上でバーチャルにメガネを試着できる“MEGANE on MEGANE”やアカウントに受診履歴と処方箋情報を登録しておけばコンタクトを自販機で購入できるシステム“Touch & Collect”を発表。プラットフォームの拡張開発に加えて、“Touch & Collect”をLINE公式アカウントで提供していくための情報設計や開発も手掛け、情報登録から商品選択、決済までの流れをシームレスに実現しています。柔軟かつ拡張性の高いデジタルプラットフォームが、こうした新サービスのスピーディーな市場投入を支え、JINSの市場競争力強化につながっています。

しかし、それでも盤石とはいえない、と濱田氏は業界の未来を見据えています。「業種の垣根を越えて、多くの企業がウェアラブルデバイスの市場に本格参入すれば、いまの業界は大きく変わってしまうでしょう」。 「ただ、業界がどんなに変わったとしても」と濱田氏は続けます。「お客様にはいつでもJINSの商品やサービスで喜んでいただきたい。今後もISIDとともに、テクノロジーを駆使してよりよい顧客体験を提供していきたいですね」。

2020年1月更新

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社名
株式会社ジンズ
本社所在地
〒102-0071 東京都千代田区富士見二丁目10番2号 飯田橋グラン・ブルーム30F
創立
1988年7月
設立
2018年5月
資本金
110百万円
売上高
45,232百万円(単体/2018年8月実績)
従業員
2,047名(単体/2018年8月実績)
事業内容
アイウエア及び服飾雑貨の企画、製造、販売及び輸出入
  • 記載情報は取材時(2019年11月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

お問い合わせ

株式会社電通総研 コミュニケーションIT事業部
E-mail:g-marketing-seminar@group.dentsusoken.com

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