株式会社セブン銀行 小さく始めて大きく育てる
クラウドを活用した“スモールスタート基盤”

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写真左より 杉山 翔太氏(株式会社セブン銀行 システム部 ITプラットフォーム室 副調査役)、平鹿 一久氏(同 システム部 ITプラットフォーム室 次長)、小山 敬氏(同 執行役員 システム部長)、紙中 加代子氏(同 システム部 次長)、神野 会沙氏(同 システム部 副調査役)、尾嵜 由香氏(同 システム部 主任調査役)※部署・役職は2018年1月時点

ATMの手数料で収益を上げるという独自のスタイルで成長を遂げているセブン銀行。同社が顧客向けに2017年にリリースした新サービスが、『スマホアプリによるフィリピン向け海外送金サービス』、『振込指示を受けて即座に振込を実行するリアルタイム振込機能』です。両サービスのシステム面での特徴は、クラウドプラットフォーム Microsoft Azure 上に構築されたセブン銀行独自のサービス開発基盤を利用しているところ。「類似の案件をオンプレミス環境で開発する場合に比べ、開発期間とコストを約半分に圧縮することができた」と話すのは、同社執行役員システム部長の小山敬氏。サービス開発基盤をクラウド上に構築した理由、“小さく始めて大きく育てる”新しい基盤への思いなどについてお聞きしました。

金融ビジネスの転換期がやってきた

金融というビジネスが、既存の当社のやり方の延長線上では成り立たなくなってきた。小回りの利く、新しい開発プロジェクトに挑戦する必要があると考えました。

小山 敬氏

セブン銀行がサービス開発基盤について検討し始めたのは、2015年のことでした。以前から、システム開発のスピードアップとコストダウンがシステム部の大きな課題になっており、その解決策の一つとして、サービスを小さく始めて大きく育てる“スモールスタート基盤”の開発プロジェクトが動き出したのです。

「スモールスタート基盤が必要だった理由は大きくふたつありました。ひとつは、ITコストが財務上の大きな負担となっていたこと。今後も新たなサービス展開に向けたシステム開発が見込まれますが、そのためにコストを抑えて開発ができる共通的な基盤の必要性を感じていました。もうひとつが、金融というビジネスが、既存の当社のやり方の延長線上では成り立たなくなってきたこと。世の中全体がすごいスピードでIT化し、デジタルトランスフォーメーションが起こっているなかで、我々もいろいろなことを試さなければなりません。試すには、失敗する可能性も織り込んで、スピーディーに、小さく始められる環境が必要だと思ったのです」(小山氏)

膨大なコストがかかる大規模な開発案件では、事前に立てた綿密な計画通りに開発を進めるため、開発期間中のビジネス変化に柔軟に対応することが難しく、その結果として出来上がったシステムをビジネス部門に押し付ける形になってしまうことが気になっていたとのこと。スモールスタート基盤を構築できれば、ビジネス部門と一緒に意見を出し合い、仕様を追加したり、新しい技術をスピーディーに試したりしながら、革新的なサービスをつくり上げることができると考えました。
また、2016年に英国でオープンAPI※1に関する統一的なフレームワーク(Open Banking Standard)が公表されたことを皮切りに、日本国内でもオープンAPIに向けた金融機関の動きが活発化していたことも、スモールスタート基盤構築の後押しとなりました。2017年の銀行法改正※2に、銀行等に対するオープンAPIへの努力義務が盛り込まれることが決定し、セブン銀行でもスモールスタート基盤の検討と共に、将来的なAPI公開に向けた準備も始まったのです。

Azureを使い、汎用性の高い基盤を作る

ISIDは、当社の業務に詳しいだけでなく、どういう形で新たなサービスを提供していきたいと考えているかについても理解して、現実的で取り組みやすい提案をしてくれました。

尾嵜 由香氏

ハードルの高いところから始めてしまうと、プロジェクトはうまく行きません。ですから、実績を積み重ねながら、社内の新基盤への認知度を上げるという形にするのがよいだろうなと考えました。

平鹿 一久氏

こうして、システム部門とビジネス部門が一丸となった今までにないプロジェクトがスタート。どのような開発基盤を構築し、その基盤上にどのようなサービスを構築するかを並行して検討し、まずは現場でニーズの高いスマホ&インターネットベースの海外送金サービスをスモールスタート基盤上に開発するという方向にまとまりました。そこで、同社のインターネットバンキングシステム(ダイレクト・バンキング・サービス、以下DBS)を構築した実績のあるISIDに声がかかったというわけです。 「他のベンダーにも声をかけたのですが、ISIDが一番、当社について深く理解してくれていると感じました。当社の業務に詳しいだけでなく、どういう形で新たなサービスを提供していきたいと考えているかも理解して、現実的で取り組みやすい提案をしてくださったんですよね」(尾嵜氏)

新しいサービスを、スピード感を持って始めたいと考える同社にISIDが提案したのが、クラウドを活用したスモールスタート基盤を構築すること。さらにその基盤上に外部から呼び出し可能なAPIを搭載し、DBSや勘定系システム等の基幹システムとの柔軟な連携を可能にすることでした。クラウドの選定においては、セブン銀行とISIDが二人三脚で検討し、スモールスタートにおけるサービスの充実度、FISCの安全対策基準に準拠している点、国内に本番環境のデータセンターがあることなどを評価してさまざまなクラウドサービスの中から Microsoft Azure の採用を決定しました。

サービスの開発においてクラウドやAPIを活用することは、同社として初めての取り組みでした。これまでも、お客さまへ便利なサービスを提供するために必要な技術を積極的に取り入れてきた同社ですが、それでも社内にはクラウドに対する漠然とした不安感のようなものが根強く残っていたそうです。そこで、同社のインフラ全般を担当する平鹿一久氏が考えたのが、クラウド上にお客さまのデータを持たないという打開策でした。 「ハードルの高いところから始めてしまうと、プロジェクトはうまくいきません。ですから、例えば難しい技術要件についてはDBSなど実績のある社内のシステムに任せるなどしてセキュリティ上のハードルを下げて、実績を積み重ねながら、社内の新基盤への認知度を上げるという形にするのがよいだろうなと考えました」(平鹿氏)

開発期間、コストともに大幅な削減に成功

将来的にスモールスタート基盤が有効活用されるよう、積極的にガイドライン作りや運用管理の整備に取り組んでくれたのが嬉しかった。

杉山 翔太氏

本格的な開発がスタートしたのが2016年10月。既存の社内システムに手を入れることなく、DBSの顧客情報管理機能やシステム監視機能を活用することで基盤の構築期間を短縮しつつ、高いセキュリティレベルを担保した堅牢な環境を実現しました。さらに海外送金サービスも Microsoft Azure のPaaS機能や新たに開発したスモールスタート基盤のAPIを活用することでスピーディーに開発でき、従来の類似サービスの開発案件に比べ、開発期間とコストを約半分に削減できました。

「ビジネス部門と一緒に新規サービス開発を手掛けることで、我々もいままで以上にビジネスへの関心が強くなりました。常に『今日はどのぐらい手数料収益が出ているかな?』『どのぐらいの件数が動いているのかな?』といったところに注目するようになり、システム部門とビジネス部門の垣根がなくなってきたと感じています。会社や開発のカルチャーが変わるきっかけになっていると思います」(小山氏) 「今回開発したシステムで、APIマネージメント機能を導入した。今後オープンAPIを展開する上で基礎となる機能を用意できたことは有意義だったと思っています」(平鹿氏)

「ISIDのメンバーは我々と同じ立場でセブン銀行のサービスについて考え、将来的にスモールスタート基盤が有効活用されるよう、積極的にガイドライン作りや運用管理の整備に取り組んでくれました。ISIDが『セブン銀行の口座サービスをよりよくするため、我々もがんばります!』と言ってくださったことはとても嬉しかったです」(杉山氏)

同社のスモールスタート基盤は、まだ動き出したばかり。今後これによってどのようなサービスが生まれるのか、同社の動向から目が離せません。

  • *1 API : Application Programming Interfaceの略。プログラムからソフトウェアの機能やデータを呼び出して利用するための仕組み。外部からシステムに接続し、その機能を利用することができる。銀行におけるオープンAPIは、あらかじめ契約を結んだ外部従業者に自社のシステムへの接続仕様を公開する仕組み。これにより、新しい様々な金融サービスを展開しやすくなることが期待されている。
  • *2 2017年5月に「銀行法等の一部を改正する法律」が成立。銀行等に対して、オープンAPIに対応できる体制の整備などを通じて、電子決済等代行業者(中間的業者:顧客と銀行等の間のサービス提供業者)とのオープン・イノベーションに取り組むことを促すものとなっている。

2018年5月更新

セブン銀行 会社概要

  • 社名株式会社セブン銀行
  • 東京本店東京都千代田区丸の内1-6-1
  • 設立2001年4月10日
  • 資本金30,572百万円
  • 売上高1,216億円8百万円(2017年3月期/連結)
  • 従業員数466名(2017年9月末現在)
  • * 記載情報は取材時(2018年1月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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