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IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション

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株式会社 電通国際情報サービス

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ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。

すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。

目次

コンサルタントの眼
〜 IFRSプロジェクトで見落としがちなポイント 〜

日本企業でIFRS適用が広まっています。
その数は100社とも言われており今後更なる広がりが予想されます。

現時点では強制適用の予定はありませんが、自社の対応について気にされている経理担当者様も多いのではないでしょうか。

そこでこれからIFRSプロジェクトを始める、あるいは途中段階であるという場合に、IFRSプロジェクトのスケジュールを考える上で、見落としがちな点についてお話したいと思います。

一般的には大まかなスケジュールの流れとしては、以下のような形で説明されることが多いかと思います。

1. 調査分析
2. 会計方針の策定
3. 業務システム対応
4. グループ会社展開
5. 本番(財務諸表作成)

ここで、是非再確認していただきたいポイントが2点あります。

それは、

1)「移行日」及び「比較期」の財務諸表をどのタイミング作成する予定か
2) それらの内容確認や修正のスケジュールは組まれているか

ということです。

財務諸表のひな型を作り、情報を集めて集計すれば、形としては財務諸表が出来上がります。しかし、有価証券報告書として公表するためには、形が整っているだけではなく、数値や内容が正確性を確保した上で、かつ説明に足りる内容になっている必要があります。

これは通常、日本基準で有価証券報告書を作成する上では当然のこととして対応されていると思いますが、IFRSプロジェクトは数多くのタスクがあり、それを期限内にこなさなければならないため、どうしても「to doのつぶしこみ」に注意が向けられ、出来上がったドキュメントの品質のフォローが手薄になることがあります。

また、財務諸表は本表と注記が一体となって構成されるものですので、各々パーツの作成段階では関連性に気づきにくく、全体としてみて初めて気づくことが数多くあります。

例えば、IFRSでは固定資産について、期首>取得>売却>その他>期末といった当期の増減について注記することが求められます。
これをどう作成するか検討するにあたり、増減明細情報はキャッシュフロー計算書を作成する必要から、日本基準でも通常作成されているかと思いますので、これをそのままIFRSの注記にも使えばよいと考えられる方もいらっしゃるかもしれません。

確かにその通りではあるのですが、実際に開示するとなると、そのまま使えるかどうかは検討が必要です。例えば、会社によっては、今まではキャッシュに影響しないとしてその他の増減について多額の金額があるにもかかわらず、内容の確認をしていないような場合もあるかもしれません。
通常、その他とされるものの中には為替影響や個々には説明を要しない細かい事象が含まれるのですが、それが多額にあると読み手にとって疑義を生じさせることとなります。

IFRS財務諸表を公表する直前にこのような状況に気づいたとしても、対応の時間や人的リソースを確保していない場合は、間に合わない可能性もあります。

従いまして、IFRSプロジェクトを計画する上では、作成した財務諸表に対して、個々の項目の内容や他の関連項目との整合性について、十分に確認し、必要であれば追加情報の収集や手直しができるように時間的余裕と人的リソースを確保しておくことが必要となります。

この点を踏まえ、冒頭のIFRSプロジェクトのスケジュールを見直すと、

1. 調査分析
2. 会計方針の策定
3. 業務システム対応
4. グループ会社展開
5a.移行日・比較期財務諸表作成
5b.レビュー/修正
5c.本番年度財務諸表作成

というように「5.本番(財務諸表作成)」を分解して考えると良いかもし
れません。

IFRSプロジェクトのスケジュールを検討する上でご参考になれば幸いです。

◇ 担当:桑原 正博(ISIDビジネスコンサルティング コンサルタント)

<関連情報>

中田雑感              公認会計士 中田清穂
〜 フランス革命のきっかけを作った「情報開示」
(2015.6.29 IASB議長の講演内容から) 〜

こんにちは、公認会計士の中田です。

このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。
よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

2015年6月29日、IASB議長のハンス・フーガーホースト議長は、フランスのパリで開催されたIFRS カンファランスのあいさつで、フランスと会計に係る話の一つとして、以下のような話をしました。

1777 年 国王ルイ16世は、スイス人の銀行家ジャック・ネッケルを財務大臣に任命。
1781 年 ネッケル財務大臣は、国家財政の財務報告書を公表。
      1年で100,000 部以上が販売され、当時としては膨大な部数だった。

ネッケル財務大臣が国家財政の財務報告書を公表した目的は、
(1) 国家財政の「透明性」を高めて、
(2) フランス国家の国際的な「信用度」を向上させ、
(3) 徴税システムを改革して国の「財源を強化する」こと
でした。

この財務報告書で、
A. 王室の維持コストが軍事支出の半分を上回り、
B. 王室の維持コストが道路や橋に対する支出のほぼ 7 倍もあったことが明らかになりました。

そして、彼の目的とは裏腹に、絶対王政の浪費ぶりを暴露することになり、フランス革命のきっかけの 1 つとなったという話です。

ハンス・フーガーホースト議長は、財務報告の透明性を高めることで、信用度を高め、将来の資金調達をより効率的、かつ有利に行うというネッケル財務大臣の精神が、IASBの業務に生き続けていると考えたいと話しました。

これはちょっと微妙な話だなと、私は感じました。

ネッケル財務大臣の考え方は、とても高邁で清潔な考えであり、その考えを実現させた行動力もただならないものだと感じます。

しかし、「透明性」には、重要でかつ全く異なる2面性があります。

一つは、情報の信用度が向上するという面です。
情報が透明であれば、何の脚色もなく、「ありのまま」である情報だということで、情報自体に疑義を感じることはなくなるでしょう。したがって、「ありのまま」の状態をさらけ出す情報は、信用できるということです。

他の面は、意思決定に影響を及ぼすリスクが発現するという面です。
情報が「透明になる」ということは、それまでよく見えなかったり、よくわからなかったことが、とてもよく見える、よくわかるようになるということですね。それまでよくわからなかったから、「とりあえず」今まで通りでいいだろう、としてきたかもしれません。
しかし、その「よくわからなかった状況がよくわかるようになる」と、今までとは異なる意思決定を行うようになるかもしれません。

ネッケル財務大臣が財務報告書を公表するまでは、重税に苦しむ市民をしり目に、王室は富を欲しいままにしているということは、なんとなく感じられても、きちんとした根拠はありません。
根拠もなく王政に反抗したところで、一部の動きにしかならず、結果が伴わないでしょう。しかし、国王が任命した財務大臣が情報を公表したとなると、これに勝る「根拠」はないでしょう。
「どうも王室は贅沢をしているらしい」という憶測から、「王室の維持コストは軍事費より多く、社会インフラ整備コストの7倍もかかっている」という、具体的に「よくわかる情報」になるのです。

ということは、透明性の低い情報からは、意思決定の変化が起きにくく、透明性の高い情報からは、意思決定の変化が起きやすいと言えるのかもしれません。

今回のお話は、実際に企業情報の開示に関連するみなさんからしてみれば、「微妙な」話ではないでしょうか。

財務情報の「透明性」を高めれば、みなさんの企業の信用度が高まり、将来の資金調達が容易になるという効果が期待できるかもしれません。

しかし、皆さんの企業活動の実態が、これまでの「透明性の低い」情報に基づいて投資家が抱いていたイメージよりも低いレベルのものであることが、新たな「透明性の高い」情報によってもたらされたら、「情報の信用度」は高まるけれど、将来の資金調達はままならなくなるでしょう。

ハンス・フーガーホースト議長は、情報の透明性を高めることの意味を強調するために、ジャック・ネッケルの精神を引き合いに出したのでしょう。

しかし、私はそのことよりも、ジャック・ネッケルは、順番を間違えたように感じました。まずは、王室維持費を削減し、公表しても市民の反発が起きないレベルになってから、財務報告書を公表するべきではなかったか、と思うのです。

そうはいうものの、王室維持費を実態より少なくした財務報告書を作成するよりは、はるかにりっぱなことだということは、最後にきちんと言っておきたいところです。

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