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IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション

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ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。

すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。

目次

コンサルタントの眼
〜 「IFRS任意適用の実務上のポイント」 〜

5月10日に武田薬品工業株式会社、5月13日に小野薬品工業株式会社が、ともに2014年3月期決算からIFRSを任意適用することを公表しました。

これで日本におけるIFRS任意適用会社は準備会社を含めて20社となりました。今年3月に経団連が発表した「国際会計基準(IFRS)への当面の対応について」において、IFRSの任意適用企業推計(検討含む)で約60社と記されていることからも今後さらなる増加が予測されます。

ただ、現実としてこのメルマガを読まれている多くの方の会社ではIFRS適用による作業負荷増大の懸念から、強制適用が決定されるまで様子を見る姿勢か、もしくは監査法人等の行なっている影響度調査を実施したところまでで検討が止まっている状態ではないでしょうか。

そこで、今回は筆者が連結会計システムにおけるIFRS対応を支援させていただいた事例をもとに、IFRS適用の実務を一部ですが紹介させていただきます。


IFRSを任意適用する方法としてスタンダードなのは、一度日本基準の決算を確定し、その後に組替仕訳を通じてIFRSの数値を作成していく方法です。
会計基準のコンバージェンスが進んだとはいえ、IFRSと日本基準の間にはまだ多くの基準差異が残っています。組替の負荷を軽減させるため、この基準差異による影響をいかに小さくするかが実務上のポイントといえます。

1.退職給付引当金

今年度より適用される改正退職引当金基準においては、退職給付見込額について従来の期間定額基準に加えて給与算定式基準を選択できるようになりました。しかしIFRSでは原則として給与算定式基準としているため、日本基準で期間定額基準を採用している会社の場合、基準差が生じ組替が必要となってしまいます。
この対応策として、日本基準から給与算定式方式を選択採用することによって調整を不要とすることが可能です。

2.減価償却

IFRSでは減価償却方法・耐用年数について、将来の経済的便益が消費されるパターンを反映するものでなければならず、日本基準で行われているような税法を根拠とした減価償却方法は認められません。このため、IFRSと差異が生じ、組替が必要となってしまいます。

この対応策は、日本基準の段階でIFRSの求める経済的便益の消費パターンにより近い減価償却方法を採用することです。一般的には、定率法から定額法に変更するケースが多いですが、IFRSは必ずしも定率法を否定するものではありませんので、購入当初に経済的便益の消費が大きい設備等については採用が可能です。
また、近年減価償却方法の変更事例が増加傾向にあるのは、IFRS適用準備目的だけではなく、企業のグローバル化によって国際的調和の観点から見直されている例も少なくありません。


他にも大きなテーマとして連結の範囲、決算期の統一等がありますが、基本は「日本基準の段階で可及的に会計方針をIFRSへ近づけ、その差異調整を少なくする」というものです。
会計方針の変更は運用とともにシステム対応も時間のかかる作業であるため、将来IFRS適用の可能性がある会社は先行して検討を進めておくのが良策といえるでしょう。

◇ 担当:寺村 航(ISIDコンサルタント)

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中田雑感              公認会計士 中田清穂
〜 利益概念をめぐるすれ違い 〜

こんにちは、公認会計士の中田です。

このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。
よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

利益概念をめぐるすれ違い

利益の考え方については、日本とIFRSでは大きな隔たりがあります。

日本の会計の歴史では、「当期純利益」は企業の業績を示す重要な指標とされてきました。そして、利益は、実現主義によって認識された収益から、発生主義によって認識された費用を引くことによって測定されるという考え方を基本にしています。
つまり、「期間損益」を適切に把握するために、「費用収益対応の原則」に従った測定が要求されてきたと言えます。

しかし、IFRSには、「費用収益対応の原則」はなく、利益は、資産の変動と負債の変動の差額から計算されるという程度の捉え方しかありません。
収益と費用を認識して利益を計算するという考え方ではないのです。

今、日本はIFRSへのコンバージェンスを進めています。それは、表面的な歩み寄りであり、根本概念を合わせるまでには至っていません。

そしてこの姿勢は当面変わりそうにありません。

例えば、今年1月11日に公表された公開草案「包括利益の表示に関する会計基準(案)」では、「少数株主損益調整前当期純利益」を「当期純利益」として表示することとしています。
もちろん、この変更はIFRSへのコンバージェンスとして、IFRSでの利益の表示方法に合わせる措置です。

しかし、重要なのはこの「当期純利益」には何が含まれるべきかということです。

「季刊 会計基準」(第40号)では、"座談会「IASBアジェンダ・コンサルテーションに関するフィードバック・ステートメントの公表を受けて」"という記事の中で、ASBJ委員長の西川氏が以下のような発言をしています。

概念フレームワーク・プロジェクトの進め方に関する部分で、「我々は、(中略)当期純利益の定義をきちんと議論すべきであると主張しているわけですが、IASBサイドとしては、表示のチャプターで議論するとしており、この点が気になります。抜本的な議論になるかどうかということについて懸念を持っており・・・(後略)」

すなわち、日本としては、IFRSの基準を作成し改訂する際に、必ず考慮に入れられる概念フレームワークが見直されている絶好の機会を活かして、日本企業にとって非常に重要な意味を持つ「期間損益」としての「当期純利益」のもつ意味をきちんとした定義として確立させようということです。
概念フレームワークが正式に見直されているこの機会を逃すと、当分、日本企業になじみのない「資産・負債アプローチ」に基づく、差額としてしかとらえられない利益の考え方につきあわされ続けることになることになるでしょう。

しかし、西川氏の発言内容からすると、IASBは「当期純利益」の定義を確立する意思はさらさらなさそうです。
利益は単なる期首の資産・負債と期末の資産・負債の差額でしかなく、問題はどのように表示するかだということでしかないのです。

この認識のずれは非常に重要でありながら非常に大きく、日本の意思を反映させることは至難のわざだと感じます。

ここにも、日本のIASBに対する発言力の問題がからんでいると感じます。

財務報告において非常に関心の高い「当期純利益」の取扱いについて、IFRSの強制適用もしていない、任意適用も数社どまりの国の考え方を、IASBが取りあげないのは当然のことだと思います。

金融庁がいつまでたっても強制適用を決めない、上場企業の任意適用もなかなか広がらない、という現状においても、西川委員長はなんとか日本の会計制度の考え方をIFRSに反映させようと「孤軍奮闘」している姿に、涙を禁じえません。

メルマガ事務局より

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g-ifrs@group.isid.co.jp 『ISID 経理財務メールマガジン』 事務局

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