IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション
ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。
すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。
目次
前回6/30に引き続き、8/25の企業会計審議会で日本企業へのIFRSの適用について議論がおこなわれました。当日、事務局から提示された「今後の議論・検討の進め方(案)」が金融庁のWebにアップされていますので、どんなことが書かれているか、1段落ずつ見ていきたいと思います。
<第1段落>
企業会計審議会において、今後、国際会計基準について審議するに当たっては、会計基準に関する技術的議論に限定することなく、より広く、会計基準が、非上場企業・中小企業も含めた多様な企業の経済活動や税法・会社法・各種業規制など周辺に存在する制度、金融・資本市場等に与える影響等をよく認識し、これらを整理した上で、体系的な道筋を示しながら、議論・検討を行うことが適切である。
文章が繋がりすぎてわかりづらいので箇条書きすると以下のようになります。
<第2段落>
また、海外における取組みも参考にしつつ、海外視察を通じた国際的状況の的確な把握を行うとともに、学術的検討を含め、広く関係者からの意見を聴取し、丁寧かつ十分に時間をかけて、予断をもたず実態・現実に即して議論・検討を進めていくことが適当であると考えられる。
これも、箇条書きすると以下のようになります。
<第3段落>
国際会計基準を巡る各国の対応は局面に応じて変化してきているところであり、その中で、現在の日本基準がどのような性格を有し、どのような国際的位置づけとなっているのか、我が国企業や金融・資本市場が今後どうあるべきか、そのために会計基準はどのようなものとすることが適当か、といった点について、我が国の国益を踏まえ戦略的思考・グランドデザインを形成することが重要である。
箇条書きすると、以下の点を踏まえたグランドデザインを作成すべきということになります。
<第4段落>
以上のような考え方を踏まえ、現時点で検討が必要であると考えられる主要な項目を列挙すれば以下のとおりである。もちろん、議論の進捗に従い、また、局面の変化に応じて論点が加わることは当然想定される。
以上が、IFRSに関する企業会計審議会での今後の議論・検討の進め方について事務局が提示した案です。書かれている個々の項目は、あるべき論としては特に異論はないかと思いますが、この「進め方案」にはいくつか重大な欠陥があります。それは、
今、企業側が最も早く知りたいのは、IFRSの「適用時期」と「適用対象企業」の2点だと思いますが、それを決める為にここまで風呂敷を広げなければならないものなのでしょうか。また、すべてをゼロリセットして検討し直さなければならないような印象をあたえる書きぶりにも違和感を感じます(もし本当にそうなのであれば、大問題です)。穿った見方をすると、あえて終わりの無い議論(つまり、何年たっても結論が出ない)に持ち込もうとしているかのようにも見えます。
企業にとっては決まらないこと自体がリスクですから、審議結果を待ってから自社のIFRS対応を考えるというスタンスは危険なのではないでしょうか。今後はいい加減、見切りをつけて、任意適用に舵を切る企業も増えてくるのではないかと思います。その判断が結果的に正しかったかどうかを決めるのは国でも金融庁でもなく、マーケットということになるのだと思います。
担当:藤原啓之( ISIDコンサルタント / IFRS Certificate )
こんにちは、公認会計士の中田です。
このコーナーでは、私の著書である『わかった気になるIFRS』の巻末に紹介している『IFRS質問箱』に実際に投稿された質問とその回答を中心に、このメルマガ読者の皆さんからいただいた疑問点や、ISIDのコンサルタントがお客様からいただいたご質問なども交えてご紹介しています。
学習レベルにはバラツキがあり、いろんな部署の方からのご質問があります。これまでみなさんが持たれた疑問と比べることも、意味があるはずです。
また、これまでどこにも公表されていない貴重なQ&Aですので、どうぞご期待ください。
今回は、IFRSは時価会計か?ということについて取り上げます。
IFRSの概念フレームワークでは、資産が購入されるということは、その資産が将来キャッシュフローを生み出す能力を有していることを意味し、さらにその交換価格こそがその将来キャッシュフローと等値のはずである、とする考え方であり、いわば時価主義の理論的根拠の1つとなっていると理解していますが、間違いないでしょうか。
旧フレームワークには、「その交換価格こそがその将来キャッシュフローと等値のはずである」という考え方はどこにも書いていません。
ご質問の内容を適切な理解で表現すると、以下のようになります。
「資産が購入されるということは、その資産が将来キャッシュフローを生み出す能力を有していることを意味し、それは(棚卸資産など)交換によって直接的に生み出される場合と、(製造設備など)使用することによって間接的に生み出される場合があります。したがって交換価値だけが将来キャッシュフローを表すわけではありません。結局、概念フレームワークが時価主義であるという理論は適切ではありません。」
ここで補足ですが、「(製造設備など)使用することによって間接的に生み出される場合」の意味ですが、製造設備などの有形固定資産は、その資産そのものを「売却」することを目的とはしておらず、製品を製造するために「使用」することを保有目的にしています。
実際のキャッシュフローは、その製造設備を「使用」することで生産された製品を売却することで得られるのです。だから、「間接的に生み出される」という表現になるのです。
このポイントは、現在企業会計審議会で、「IFRSは公正価値会計なので、製造業が経済を支えている日本には不適切だ」という論理展開の根拠になっています。
繰り返しますが、このような考えは、従来のフレームワークにおいても重大な誤解であり間違いです。
現在の概念フレームワークでも同様です。
公認会計士 中田清穂氏のホームページ
http://www.knowledge-nw.co.jp/
このコーナーでは読者のみなさまからのご質問を受け付けています。
以下のメールアドレスまでお気軽にお寄せください。
いただいたご質問にはすべてお答えする予定ですが、お答えするのにお時間がかかる場合がありますので、予めご了解ください。
g-ifrs@group.isid.co.jp 『ISID 経理財務メールマガジン』事務局
多様な業種・規模のお客様がSTRAVISで課題解決されています。